第2話 辺境 人間界
新人悪魔であるオレ、レオナルド・ナルシズ・ルシファー君は、辺境である人間界の日本ってトコに放り込まれた。
時、夏の真っ盛り。
お日様が高く上る正午あたりから夕方にかけての、マッタリとした疲労感伴う暑さ。
たまんねぇな。
金がねぇ訳でもないのに、安アパートにぶち込まれたオレ。
壁は薄いし、気密性は低いし、体感的には外と変わらねぇなコレって感じの部屋だ。
オレはエアコンをガンガンにかけてるし、地獄の暑さに慣れているから平気だけどさ。
「レオさんには、日本の夏ってキツイんじゃないですか? 目が死んでますよ」
「いや……そんなこと、ないっス」
オレの目が死んでいるのはデフォルトです。
黒髪黒目のオレは日本人って事にしても不都合はないが、こちらの常識をあまりに知らないから外国人って事にした。
出身国を聞かれてもテキトーにもにょもにょと誤魔化す。
いかんせん、人間界なんていう辺境地へ送られたのだ。
知識が無いのだ、知識が。
そもそもオレ、100歳程度のヒヨッコですし?
知識がないのは恥ではないのよ。
不都合は曖昧な笑顔で誤魔化すっ!
「コレ、田舎から送って来たスイカなんですけど。よろしかったら、食べてください」
そう言いながら丸い緑色の玉を差し出してくる女子。
アパートの隣に住んでる日向まひる、という美少女だ。
恥ずかしげに顔を傾ければ、肩口あたりでパッツンと切られたサラサラツヤツヤなストレートの黒髪が揺れる。
丸い顔は顎の辺りでツンと尖り、大きな目の端はちょっと垂れている。
細い体に黒いワンピースをストンと着ていて、細い手足が目立つ。
あと胸。
胸だけ異様にデカいのって、人間のデフォルトか?
美少女、といっても、成人はしてるだろう。
人間の年齢は、よく分からない。
オレは100歳越えているから、大体の人間は年下だ。
「はぁ、どうも……」
とか言いながら、緑の玉に更に濃い緑がシマシマになって染みついているスイカとやらを受け取った。
ご近所付き合い大切。
オレは笑顔を作ってみた。
美少女の頬がポッと赤く染まる。
人間って言うヤツは、赤くなったり青くなったり忙しい。
オレ、悪魔だから、いつも割と真っ黒なんだけど。
あっ、精神状態のことね。
外見的には真っ白に真っ黒という見事なツートンだよ。
人間が赤くなった時は、何のサインだったかなぁ?
……忘れた。
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