第14話1月7日『アウトなラーメンと爆発オチ』



 いや突然そんなこと言われてもね、入るしかないだろ騎士団!

 ってなわけで入団することにした、のだが。


「俺はてっきり入団式みたいなやつで剣を肩にトントンされたりしてチヤホヤされてウハウハする気でいたんだけど」


「ホクサイ騎士団に入ったんだ。すごいじゃん!」


 寝起きの頭をユキノブの声が驚かせる。


 1月7日お昼過ぎ。最近は異世界に行ったり来たりしていて時差ボケが酷く生活習慣ブレイキング中だ。そのため今さっき起きたところ。朝なんてない、昼が朝だ。


「味噌ラーメンだぜえ!」


 声の主は歌川さん。ドンとテーブルに置かれたラーメンを見ると眠気が吹っ飛んだ。


「「いただきます」」


 安定のうまさである。もうこれしか食べたくない。


「ほんとクセになるうまさだよなぁ…」


「わかる!このラーメンクセになるんだよねホクサイ!」


 クセになるラーメン。抜け出せないラーメン。昨日もここのラーメン食べてるし。流石に体に悪いかもだから明日は控えておこうかな。


「嬉しいぜ!クセの秘密はな、中毒性のある謎の粉を入れてるからだぜ!」


「…おいそれだいじょばないやつだろ」


「――――」


 歌川さんの気分の良い声に流されそうになるが、改めて聞くとかなりやばいだろ。なんだよ『中毒性のある謎の粉』って!


 俺とユキノブは自分の味噌ラーメンを啜るのをやめなかったが、表情のみ曇った。というか真顔だった。


「まあ美味しいから良いよね!ホクサイ」


「うん、何かあったら、訴えよう。」


「何かあってからじゃ遅いぜぇ!」


「あんた何が言いてぇんだ!」



◇◆◇◆◇



 スイカバーを食べるぽっぽを膝に乗せて俺の部屋でゲームをしているセイコさん。

 スイカバーは夏限定のはずなのだが、なぜか歌川さんから退店時に箱でもらった。それを持ち帰りみんなで食べているわけである。


 にしても――――、


「なんで人の部屋でコンボ練習してんすか」


「なんとなく。スイカにスイ寄せられてね」


「上手くないよ!」


 トレモで練習中のセイコさんは放っておくとして――――、


 平和だ。実に平和である。


 最近異常なほど予想外に悩まされていたのでこういうのは久しぶりな気がする。


 あれ、


 俺はいつも何をしていたんだっけか。


 ユキノブは大学の冬休みが終了したら会える機会はかなり減るだろう。

 セイコさんとぽっぽはいつも通りだとして、騎士団とやらの活動も今のところ一切ない。


 何をしようか。


 俺は少し将来の不安を危惧し始めた。



◇◆◇◆◇



 俺が将来を危惧するとでも思ったら大間違いだ。


 シリアス展開?そんなもの俺にはない。あくまで日常系だ!


 自宅系日常系アニメで学校が出てきた瞬間、俺は切るぞ。働くなんてもってのほかさ!HAHAHA!


 俺はぽっぽを抱っこしてベットでゴロゴロすることにした。

 セイコさんは俺のオンラインの戦闘力をぐんぐんと伸ばしている。変わった人だなぁ。


 日常に飽きることなんてない。俺は俺の日常が好きでニートをやっているのだ。

 そう簡単に奪われてたまるものかー!わっはっは!うっひゃあああ!


「だよなーぽっぽ!」


「うん。たぶんそう…。――――?」


 いつも通りの適当な返事――――とはまた違う声色。


 あれ、どうしたのだろう。


「どうしたんだ?もしかしてぽっぽは非日常を探し求めているタイプ?」


「――――ホクサイうるさい。――何か聞こえる。ていうかなんか来てる。気がする」


「来てる?何がさ。そりゃまぁ俺たちはかなり奇天烈かもしれないけど…」


 ボカーン!


 っていう感じの爆音が鳴り響いた。轟いた。


 爆心地はかなり近い。


 音のする方向から考えると――――、


「――あれ、うちで何かあったか」


「多分そうですね」


 隣のアパートで起きた爆発であろう。つまりセイコさんの魔法陣だかなんだかが変に作用したという感じかな。


「大家さんに怒られますよー」


「大丈夫よ、バレなきゃイカサマじゃないらしいし」


「そっかー、なんだ安心だね」


 俺たちは意味不明な事態に対しての適応能力がありえないくらい鍛えられていたらしい。爆発なんて何も怖くないぜ。


「――やばいホクサイ。逃げなきゃ」


 やけに神妙な面持ちでぽっぽが言う。


 逃げるだって?


「逃げるって何からさ。まさか悪いもんが地球を侵略しにきたわけじゃないんだろう?」


「そのまさかだよホクサイ」


 えっと待て待て。


「早く逃げるよホクサイ」


「――俺の…」


 果たして。


「俺の日常系ラブコメは何処に…」


 なんて呟いている間に二度目の爆発が轟いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る