第8話鼠月虎日『イケ好かないイケメンに意見を述べたらイケません』
「一つ聞きたいことがある」
「なんだいホクサイ」
「なんでメラゾーマ出た?」
「しるか、ぽっぽに聞いてくれ」
セイコさんは呆れている。俺悪いか?
壊れた壁は石製のレンガが積み上げてできたもの。おそらく手作業。心が痛い。あと二人からの視線も痛い。俺はイタい子。
「ホクサイさ、ずっとニートしててストレス溜まってるのはわかるけどさ、これはダメだよホクサイ」
「ごめんなさい。…これからどうなるんだろ」
「心配ない、衛兵が来たよほら」
セイコさんの指さす方を見ると腰に剣を装備した男がこちらに歩いてきた。髪の毛は黒ではなく深緑。
俺は斬られるのだろうか。異世界は中世ヨーロッパ風ではなくRPGの乾燥した地域の街という感じ。何が言いたいかというと兵士が平民を普通に斬ってそうだということ。スパルタ的な?
こんなとき人はどうするか。
逃げる?おそらくすぐに追いつかれるだろう。かといって何もしないわけではない。日本人ならわかるだろう。
ユニークスキルJAPANESEDOGEZAを発動しターンエンド。
マジで許してほしい。まだ死にたくない!
「立て、黒髪の魔術師よ」
男の声。めっちゃイケボ。さすが異世界羨ましい妬ましい。
ところで、黒髪の魔術師とは。さっきここにいた俺含め三人は全員黒髪。魔法を使ったのは――――。
俺か!黒髪の魔術師。なにか勘違いされてる気がする。魔法は謎に発動したけど俺は魔術師じゃない。ニートだ。
とりあえず立ち上がる。
目に入ったのは先ほど見た深緑の髪を後ろで結んだイケメン。
「これをやったのはお前か?」
「はい。でもわざとじゃなくて。叫んだらやっちゃったーみたいな?悪気はなかった。それと俺は魔術師じゃなくてニートだから実質無実。攻めるなら俺じゃなくて俺を落とした芸大に言ってくれ!」
「意味がわからん」
俺もわかんねぇよ!
しばらく男は悩むそぶりを見せたがため息をつき――――。
「取り調べだ。ついてこい」
俺は連行された。
◇◆◇◆◇
そこは二つの椅子と机以外何もない部屋。
座っているのはもちろん俺とさっきの男。
「名前は?」
「葛飾北斎」
「出身は?」
「ジャッポン」
「知らんな」
「日本」
「知らない。職は?」
「ニート」
「ニートは職ではない。先ほどからどうしてニートを誇る?」
「誇ってない」
「そうか、では次」
なんかムカつくやつだ。イケメンだからだろうか…、イケメンだからのようだ。
「あの呪文はなんだ?」
呪文?まぁ呪文だよな。
「故郷で一番有名なゲームに出てくる魔法の名前。ノリで叫んだ」
「そうか。なるほど――――」
それは先ほどまでの低い声と変わっていた。そしてゆっくりとこちらを向いて――――、
「お前は『魔法』ではなく『天賦』を使ったな」
そう言った。
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