ネコシックレコード

おじさん(物書きの)

ぱーとなー

 猫の視線というものを気にしたことがあるだろうか?

 視線を感じて振り向いたら猫がいた、とか。無邪気に遊んでいたはずの猫の、ふとした瞬間に見せる見透かすような目、とか。寝ている猫が耳をぴくぴくさせて聞き耳を立てていた、とか。

 誰もが少なからず経験したことがあるんじゃないだろうか。

 実のところ、猫という生き物は地球の在来種ではない。異世界の、つまり我々が送り込んだ、超近距離型の観察者なのだ。

 驚くのは無理もない。だが考えてもみてほしい、愛らしく、誰に疑われることもない、これほど観察者に向いた生物がいるだろうか。

 ここまで聞くと恐ろしいと思うこともあるだろう、だが、我々はあくまでも観測者。偵察をしてその星を食い物にするようなことはないので安心してほしい。

 なぜこんなことを話すのか不思議に思っていることだろう。実は近々、地球の観察期間が終わるのだ。地球人類の知的水準があまりにも低いのがその理由の一つ。言葉を得てからの成長は素晴らしかったが、その後のくだらない争いによる成長率の低迷、いや、知的レベルでは退化したと言っていいだろう。つまり、観測するに値しない星になったということだ。

 おそらく、次の猫の集会で送られてくるデータが最後になるだろう。


 月に一度の猫の集会で集められる膨大なデータ。ネコシックレコードに書き込まれたそれらを整理するのが私の仕事。家に帰れるのはいつも夜中。しかも地球なんてつまらない星の担当になってからはストレスが溜まる一方だ。そんな私を癒してくれるのが愛犬のまん丸。仕事場ではしっぽを振って大人しくしているし、私についてまわってどこに行くにも一緒。なんて可愛いんだろう。

 そういえば最近、犬という生物がこの星において外来種であると判明したらしい。

 まさか、ね?

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