俺だけ開ける聖域《ワークショップ》!~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信をしてしまい、ダンジョンの英雄としてバズっただけではなく、追放されたパーティにざまあして人生大逆転!~
第17話『これって勘違いしてもいいやつですか』
第17話『これって勘違いしてもいいやつですか』
「あーあー、テストテスト」
早速、配信を開始した
なるほど、俺もマイク音量のテストをしていたけど間違ってはいなかったようだ。
俺も配信をつけるか。
「んっんん」
同じことを言うのはちょっと恥ずかしかったため、咳払いで音量チェックをし――正常を確認。
視線を左に移して音量を確認できるというのは、本当に便利で助かる。
登録者数を確認してみると100人になっている。
配信者界隈のことをそこまで知らないからなんとも言えないけど、超初心者でなんの知名度もないにもかかわらずここまで登録者数が増えたのは奇跡に近いんだと思う。
だって、何十人って人を前にしたことがないし、それより多いっていうんだから想像すらできない。
もしかして俺って、人生の運をここ数日で全て使い果たしちゃったんじゃないか。
「あ! 一旦ミューするね!」
急に春菜がそう切り出したかと思ったら、
その行動の意味が理解できなかったが、次にグイグイッと引っ張られたことから肩を傾けると「同じことをして」と耳元でヒソヒソと囁かれる。
女性にそんなことをされたのは初めてであり、優しい声かつ吐息が耳に掛かりゾクゾクッと震えた。
「一旦ミュートします」
視線を左に移してマイクのところに触れると、そこに射線が入ってミュートできたことを確認。
「こっちもマイクミュートしたけど、なにかあったの?」
「そこまで意識しないって人は居るけど、基本的にインターネットで活動する場合は別名だったりするじゃない? だから、配信中は一心くんをなんて呼ぼうかなって」
「あー。なら、活動名として【シン】って設定したからそれかな」
「はいはーい。それじゃあ私は【ハルナ】でよろしくっ」
「私は【マキ】」
「でもこうして改めて確認すると、なんだかおかしいよね~。私と真紀はそのまんまだし、一心くんだってほとんどそのままだよね」
「たしかに」
「それじゃあミュートを解除するね~。シンくんもお願い」
軽く返事をし、ミュート解除。
ハルナが言っている通り、なんのために別名で活動しているのかいまいちわからないな。
「え~、それじゃみんな! 配信が始まってそうそうなんだけど、新しくパーティに加わったメンバーを紹介するねっ。じゃじゃ~ん」
これじゃあまるでお披露目会じゃないか。
視聴者が目の前に居るわけじゃないから、焦ったり緊張することはないけど……心の準備はしたかったから事前に一言でもあったらよかったのに。
「え、えーっ。皆さん始めまして、新メンバーのシンです。よろしくお願いします」
「少しだけややこしいんだけど、メンバーになったというよりリーダーになった、という感じ」
「そうそう。これからシンくんが、私達のパーティリーダーになるからよろしくっ」
……。
つい視線を右に移してコメント欄を確認。
だけど、自分の配信じゃないからどんな反応があるのか確認できないんだった。
なんともむず痒い。
わざわざどれぐらいの人が視聴しているのかを確認するのは変だし、どんなコメントが寄せられているのかを配信中に配信主へ確認するのも変な話だ。
こっちの視聴者数はまだ0人。
くっ……。
「おお~凄い! みんなよくわかってるねぇ。そうそう、あの時のあの人! 私達にとっての救世主であり英雄その人!」
「嘘偽りのない事実。だから私達はシンくんをリーダーにして、パーティを組んでいるってこと」
「みんな理解力が高すぎ~。そんでもって、それを証明するために今から戦闘するよ~」
そう言い終えると、ハルナは前へ走り出した。
突っ走る感じだったら止めに入るけど、あれはモンスターを引き連れてくる――釣り。
さっきのハルナが視聴者に言っていた内容から察するに、モンスターの攻撃を【
まさかいきなり見せ場を作られるとは思ってもみなかったが……少しだけ緊張してきて心臓の鼓動が速くなってしまう。
しかも今度はまじまじと視聴者に見られるだけじゃなく、俺も配信をつけているんだ。
つい、チラッと視聴者数を確認すると、いつの間にか10人の人が。
「大丈夫。石モグラの移動はゆっくりだし、攻撃パターンは頭突きの1つだけ。近づいてくるまで待って、スキルを使えば何も問題なし」
「了解」
そんな初めて誰かからの的確なアドバイスに、普段は使わないような言葉が出てしまう。
ここまでお膳立てされていて失敗するわけにはいかないな。
「1体、来るよー」
すぐに戻ってきたハルナは、俺の後ろ側まで通過していく。
たぶん視聴者に全体を把握してもらおう、という意味があるんだろう。
それも相まって、少しだけ不安が増してしまう。
つまりは今、俺は初めて期待してもらっている。
今までほとんど誰かの役に立ったことがなかった俺が。
「大丈夫」
ゆっくりと歩いてくる石モグラに集中していたあまり、隣に居てくれるマキの存在を忘れてしまっていた。
そうだ。
今の俺は1人じゃない。
「今」
「【
瞬時に展開される半円状の薄い光を放つ結界。
石モグラは目の前に障壁となっている結界に気付いたようで、アドバイス通りに頭突きを繰り出した。
結果、結界はたったの1撃で光の破片となって粉々に宙へ消えていく。
「ハルナ、いくよ」
「よしキターっ」
その後すぐ、マキとハルナが石モグラに斬りかかっていき、すぐに討伐することができた。
「いやはや、これでみんな信じてくれたよね。というか、疑いようのない事実を提示したから信じてよね!」
「ここまで見せたのに、まだシンくんが加入したことに文句を言いたいなら、もう二度と配信を観に来ないでください」
「そうそう。私達がそう決めたんで、そこんところよろしくっ」
本当に言ってしまった。
一瞬のためらいもなく、あっさりと。
俺を、仲間だって。
俺のために。
感謝の言葉を伝えたいが、すぐに言葉を発しようとすれば涙が溢れてしまいそうだ。
ならば、と自分の配信にある空虚なコメント欄でも見て落ちつこうと思ったが。
[マジかよ今の]
[初見。今のカッコよ]
[わーお。これじゃあ文句の1つも出てこないわな。あっぱれ]
[スキルっていうの、初めて聞いたし見たけどすっご。よっ! リーダー様!]
[胸が熱くなった。俺には絶対無理だけど、一瞬だけでも探索者になりたいって思っちまった]
なんてコメントが流れ始めている。
こんな、今まで誰の役にも立ててなかった俺が、初めて誰かに認められた。
そんな事実が今、目の前で起きている。
名前を知っている、ハルナと真紀。
名前を誰も知らない視聴者。
みんなが、俺という人間を認めてくれている。
ああダメだ。
これ以上のなにかが起きたら、俺は完全に不特定多数の人間の前でカッコ悪く泣いてしまう。
「前に襲われた熊の時もそうだったけど、今の石モグラも結界に頭突きをして怯んでたよね」
「うん。あれがあったから、石モグラが完全な無防備状態になって簡単に止めを刺せた」
「防御と攻撃をほぼ同時にできるってすごーい!」
「まるで、パリィやカウンターみたい」
「それ言えてるっ」
今にも泣き出しそうな俺の心情を察しているのか、無邪気に気づいていないのかわからないけど、その明るいノリが今はとてもありがたい。
「ちなみに、俺は全くと言っていいほど戦闘ができない。っていうのも、ちゃんと言っておいた方がいいんじゃないか」
と、そのノリの乗じて自虐ネタを入れてみる。
こういうのは後から発覚するより、先手を打っておいた方が傷は浅く済むからな。
たぶん。
「みんな、そうだよねぇ」
「視聴者は、メンバー全員が駆け出しなんだからみんなで強くなっていけばいい。だってさ」
「わかってるぅ~」
「ちなみに、シンくんはレベル5。少しだけレベルが高いけど、それは前にパーティを組んでいたから。その時は支援系をやっていたから、戦闘経験がないんだって」
「いやぁ~、マキが要約してくれるから本当に助かるぅ~」
「ハルナも少しはやらないとダメだよ」
「今度頑張ってみる」
「ふっ」
「マキ! 今、鼻で笑ったでしょ!」
「そうかも、ね」
「ムキー!」
「ぷふっ」
「シンくんまで笑わないでー!」
こんな、みんなで分け隔てなく話したのなんていつぶりだろうか。
[wwwwwwwwww]
[草]
[今日も今日とて安定のボケとツッコミで安心した]
[こんな2人だけど、どうかよろしくお願いします!]
[俺達も随分とこの雰囲気に馴染んでしまったな]
なんて、視聴者までも普通に接してくれる。
しかも視聴者数が30人になっているじゃないか。
こんなの、2人と一緒に居るだけで俺も知名度が上がったって勘違いしちゃいそうだ。
「と、いう感じでやっていくからよろしくねー」
「よろしく」
「よろしくお願いします!」
嬉しくなってしまい、つい元気よく挨拶をしてしまった。
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