第6話 整理
取り合えず、衣と住はソメノさんの好意に甘えることとした。
耕さんとソメノさん、そして所長さんを交え、記憶喪失という事を伏せ、俺のバックボーンを設定してくれた。
先ずは、俺の出身はセン〇クリス〇ファー・ネービ〇とした。
ソメノさんの両親が昔住んでいたこととし、その地でお世話した俺が日本に来ているという設定に。
近所の住民から不審者と思われてはいけないので、旅券(パスポート)を紛失し、一時的に滞在許可を得ている事、旅券の再交付には時間がかかることとしている。
日中はソメノさんのアパートの管理を行う。朝3時に耕さん達とコンビニを回り消費期限切れの食品を回収し、4時にクロウ達に与えつつ、俺達も食事をする。
生活に必要なものは、しま○らやワー〇マンといった店で数着分、アパートを管理する給料から前借りして購入。衣類を洗う魔道具も購入し、生活用をも整えた。
驚いたことに、この日本と言う国には、一部屋に一個トイレも風呂もついている。
風呂なぞ入ったことがないため、耕さんたちに銭湯という場所に連れて行ってもらい、風呂の入り方を教えてもらった。
朝食以外の食事は自炊するのだが、この国には一つの店で何でも買えるスーパーやコンビニというものがあり、耕さん曰く「コンビニは単価が高いから、夕方にスーパーに行き、赤いシールが貼ってあるのを買うと良いぞ。」と教えてくれた。
空いている部屋に耕さん達が住んではいけないか、とソメノさんに聞いたが、これまでも再三提案してきたが、辞退されているとの事で、これ以上は聞けないという事になっている。
まぁ、人それぞれ事情があるから、仕方がないんだろう…。
大まかな設定が決まった頃には、もう夕刻をむかえていた。
耕さん達と明朝3時にコンビニで待ち合わせることとし、今日は解散することとした。
ソメノさんも、アパートに来て話したそうだったが、所長から釘を刺され大人しく砦に帰ることとなった。
そして、今、俺は一人アパートの部屋に居る。
コンビニに挨拶した時に購入したお弁当と水を机に置き、ため息をつく。
こんな金属をふんだんに使い、紙や絵画の技術、そして魔道具をふんだんに使用できる国はネービの周辺にも無いはずだ。
こんな国がネービを攻めてきたら、ひとたまりもない…。
勇者はこんな凄い国から来るんだと、今更ながら勇者の存在に驚く。
魔道具の種類もそうだ…。
この部屋にもたくさんの魔道具が並んでいるが、この国の民は貴族ばかりなのか?と思う。
ボタンを押すと翼が回転し風を送り出す魔道具は、ネービで売り出せば売れると実感している。ただ、金属やそれに近い素材がふんだんに使われているので、その素材をどう集めるのかが問題だな。
それと、この“時”を刻む魔道具は素晴らしい!
行動を起こしたい時間にベルが鳴るよう設定ができるし、耳を覆いたくなるような音が鳴るので目が覚めること間違いない。
便利な魔道具、鉱物をふんだんに使った文化、どれをとっても申し分のない世界のように感じるが、クロウからはそのような感じは受けていない。
明日にでもじっくりと話す必要があるな…。
ベッドに横になる。
昨日からの時間の進み方が異様に早い。
ついていくだけで手一杯だな…。
そんな事を思いながら、深い眠りについていった。
・
・
・
ピピピピピー!
「だぁ~!何だ!
あ、時計ってやつか。」
時計という魔道具の機能の一つ、“アラーム”というやつだったな。
流石にこの音なら、誰でも起きるよ…。
服をあわてて着替え、耕さんに教えてもらったコンビニまで行く。
「おう!いさくさん、こっちだ!」
「すみません。遅れました。」
「いいや。遅れてないぞ。寧ろ2分早い。」
「それは良いことですか?」
「まぁ、遅れるよりはいいが、代替5分くらい前に来てれば問題はないからな。」
「分かりました。」
「それじゃ、店長さんと話をするか。」
コンビニの横の扉を開け、店長さんを呼ぶ。
「お、耕さん久しぶりだね。」
「2週間ぶりだな。で、今日から食材を分けてもらうんだけど、話は通ってる?」
「あぁ、聞いてるよ。そこに置いてある袋の中だよ。
「悪いね。これからも世話になるといけなから、こいつの顔だけ覚えていってくれ。
いさく、って言うんだ。勿論生まれは外国だ。」
「詮索はしないが、こんな日本まで来て難儀だったんだな。
それじゃ、この袋ごと持って行き、明日にまたこの大袋を使おう。
リヤカーとかはあるのかい?」
「あぁ、持ってきてるよ。」
お弁当やサラダ、おにぎりなどが20個ほど入った透明な袋をもらい、店の前に止めてあったリヤカーに入れる。
「よし、あと4軒回るぞ。」
「分かりました。」
このリヤカーというものは画期的だな。
車輪もスムーズに動き、何よりも軽い。
その後4軒のコンビニを回り、リヤカーの半分程度まで集まった。
公園に到着した。
あ、すえさん達も居る。
「おはよう、耕さん、いさくさん。」
「みんな、おはよう。それじゃ、これから作業を始めるぞ。」
耕さん、すえさん達総勢5名プラス俺が、カラス達が食べやすいようにパッケージを外す作業を始める。
パーケージを取った食材をリヤカーに積んであった緑色の大きな皿に入れていく。
「耕さんや、すえさん達も持って行ってくださいね。」
「あぁ。ありがたくいただくよ。
それと、カラスはグルメだって聞いてるが、ご飯はご飯、おかずはおかずに分けた方がいいか?」
「そうですね。できればそうしていただけると、クロウ達も喜ぶと言ってます。」
「そりゃすごいな。カラスも俺達と同じなんだな。」
皆が感心している。
クロウは俺の肩に止まっている状態ではあるが、群れの数を確認している。
「よし、イサーク。全羽揃ったぞ。」
「こっちも、これで終了っと。
それじゃ、食べてくれ。あ、鳴かないようにね。」
「分かった。それじゃ、皆食事をいただこうか。」
カラスが一斉に公園に下りてくる。
そして、ご飯を食べ始めた。
*
*
*
「では、これからこの区の監視に行って来る。皆、出発してくれ。
問題があれば、連絡するように!」
クロウの掛け声に、順番にカラスが出発し始める。
「うひゃ、耕さん、本当にできたんだな。」
「あぁ、凄いな…。まさしくカラスと人間との共存だな。」
耕さんたちは、続々と飛び去って行くカラス達に見とれている、
「まぁ、これでゴミ問題は解決されたんだが…。」
「耕さん、何か問題がありますか?」
「この残り物…、どうする?」
緑色のトレーに入った食材は、まだ半分はある。
これをゴミに出す作業があるようだが…。
周りを見渡すと、小さな動物が居る…。
もしかするとあいつらもテイムできるかもしれない。
「耕さん、あの動物をテイムしてもいいだろうか?」
「あの動物って? え、あんた猫とネズミだぞ。
あいつらテイムしても喧嘩するんじゃねぇか。」
「耕さん、そりゃ違うぞ。
なんて番組だっけ?
そうそう、ト〇とジ〇リーってアニメがあったじゃないか。
それにすりゃいいんだよ。」
なんだ?そのト〇とジ〇リーってのは?
まぁ、そんな事はさておいて、テイムできるかやってみることにした。
先ずは大きい方だ。
あの黒い奴がボスだな。
「効けよ!テイム!」
効いたのか?
黒い奴がノソノソとやって来た。
「あんたか?あのカラスを手なずけたのは?」
ん?黒い奴がしゃべった?
「あぁ。こうやって一日一回、この時間に食事をあげることで、この区のゴミを漁らないって約束をした。それに、漁っている奴らを見つけたら攻撃するようにも。」
「おいおい、ちょっと待ってくれ。
俺達もあのゴミ袋は、唯一食事ができる場所なんだぞ。
それをカラスどものせいで行けなくなるのかよ。」
「だったら、この食事で手を打たないか?
毎日、この時間に食事を持ってくる。この食事でゴミを漁らないって事にしてほしいんだが…。」
「え?毎日か?週2回じゃないのか?」
「あぁ。毎日だ。」
「よし!その話乗るぜ。」
黒い奴が俄然乗り気になって、しゃべり始めた。
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