第19話 なんでズボンにテント張ってるの?
授業開始から十分ほど経過した頃、ようやく僕のアソコは落ち着いてきた。だが、
「ねえねえムーちゃん」
それを見越していたかのようなタイミングで、後ろから純恋がつんつんと僕の背中を突いてくる。
「な、なんだよ……」
本当は無視したがったのだが、そのせいでくすぐられるのは勘弁だったので、僕は彼女の方に振り返った。
「もう大丈夫そう? どうしても辛かったらわたしが手伝ってあげるけど?」
「な、なんの話だよ! 大丈夫に決まってるだろ!」
少し語気が強くなりながら、僕は言葉を返す。
「そう? 強がらなくてもいいのに。まあ、いいや。それより、お願いがあるんだけど」
「お願い? 今は授業中だぞ」
「そんな変なお願いじゃないって。ちょっと今、消しゴム落としちゃって。ムーちゃんの椅子の下に落ちたから、拾ってくれないかな?」
「な、なんだよ。そんなことか。まあ、それくらいなら……」
「ありがとっ。そこで『自分で拾えよ』とか言わずに拾ってくれる優しいとこ、好きだよ」
「どうせ拾わなかったら『こちょこちょの刑』とか言ってくすぐってくるだろ……」
「お、わたしのことわかってるね。流石ムーちゃん!」
「やっぱりな……」
そんなことだろうと思ってたよ。
僕は渋々、純恋の消しゴムを拾おうと椅子の下を覗き込む。しかし、覗いただけでは消しゴムの場所がわからなかったため、仕方なく席を立ち、四つん這いになって消しゴムを探す。
「んー、椅子の下にはないぞ」
「え、ホントに? 確かにそこら辺に落ちていったはずなんだけど……。わたしの机の方も探してくれる?」
「ったく、面倒だな……」
そう思いつつも、ここまでして消しゴムを拾わないという選択は取りにくい。僕は四つん這いの状態のまま、純恋の机の下に潜り込む。消しゴムを探すが、見当たらない。
「おい、ないぞ」
僕は少し苛立ちを見せながら声を上げ、純恋の方を見ると――、
「ぶっ!?」
そこには、椅子に座りながら足を大きく広げ、スカートをひらひらとたくし上げている彼女の姿があった。
「お、おい……!」
「んー、どうかしたー?」
そんなことをしているせいで、僕は彼女のスカートの中をはっきりと視界に入れてしまった。そこには、夢のような景色が広がっている。
(黒のレース! しかもTバック!?)
普段着の下着にしては気合が入り過ぎているそれに、僕は度肝を抜かれ、思わず凝視してしまった。
「ふふ、どうしたの? ちゃんと消しゴム探してる?」
「さ、探してるって……!」
もう僕は消しゴムとかどうでも良くなっていた。消しゴムを探すふりをしながら、チラチラと彼女の下着に視線を向ける。
「な、ないなー。全然ないなー」
実際、純恋の机の下には消しゴムはないようだ。本来なら、さっさとこの机の下を抜けて他の場所を探しに行くべきなのだが、僕は必要以上に念入りに、彼女の机の下を探索し続けていた。
(しまった……。こんなことしてるから、また血流が……!)
ムクムクと僕の下半身が盛り上がっているのを感じる。
(愛純、本当にごめん……)
そう思いつつも純恋の下着を凝視し続けているあたり、僕は本当に最低な人間だと思う。
「ねえ、ホントにちゃんと探してる? ちゃんと探してたら、もうとっくに見つけていてもおかしくないはずなんだけど?」
僕は彼女のその言い方に、違和感を覚えた。
「もうとっくに見つけていてもおかしくない? まるで、落とした場所を知っているみたいに言うんだな?」
「ん? なんのことかな?」
「………………(まあ、そんなことどうでもいいか!)」
僕は自分の欲望に任せて、やっぱり彼女の下着を見続けていた。
「ほら、もっとちゃんと見て。ムーちゃんがずっと熱い視線を送り続けているそこに、探し物はあるはずだよ?」
「は……?」
いやいやまさか、Tバックの中に消しゴムが? そんなことあるか? なんて思いつつ、一応純恋のTバックを念入りに観察してみるが、そこに消しゴムはない。
「もう、違うよ。もっと手前に目を向けてよ」
僕は言われるがまま、Tバックの手前……、つまり太もものあたりに視線を向けると、そこにちょこんと消しゴムが落ちていた。いや、落ちていたというより、置いてあったという表現の方がしっくりくるだろうか。
「あ、あった! 消しゴムあった!」
「やっと見つけた? もう、スカートの中ばっかり見てるから、目の前にある物に気づかないんだよ? むっつりスケベなムーちゃん♡」
からかうような声で、純恋がそう囁いてくる。
「……って、やっぱり純恋、消しゴムの場所知ってたんじゃねえか! しかも、その場所なら自分で拾えるだろ‼」
消しゴムを見て理性を取り戻した僕は、冷静にそうツッコむ。
「ふふ。でも、良い物見れて良かったでしょ?」
「はあ? なんの話してるのかわからん」
「この期に及んで素直じゃないなぁ。バレバレなのに」
あくまで何も知らない見てないという主張を、僕は崩さない。
無事消しゴムが見つかったので、僕が自分の席に戻ろうとすると、
「え、何してるの? ちゃんとわたしの消しゴム拾ってよ」
「は? 拾ってって、椅子に落ちてるんだから自分で拾えるだろ」
「こちょこちょの刑」
どうやら、どうしても僕に消しゴムを拾わせたいらしい。
「……わかったよ。拾えばいいんだろ」
「よろしくっ♪」
僕は彼女の椅子に右手を伸ばし、消しゴムを手に取る。それとほぼ同時に――、
「えいっ!」
「は!?」
純恋は突然足を閉じ、太ももで僕の右手を挟んできた。
「おい、抜けないって!」
「ん? ナニが抜けないのかな? 辛いなら抜いていいんだよ?」
「右手! 右手が抜けないの‼」
僕が必死に訴えると、純恋はくすくすと笑いながら足を開いて、僕の右手を解放してくれた。
「ふふ、ごめんね。焦ってるムーちゃんが見たくて」
「ったく、今は授業中だって言ってるだろ。ほら、消しゴム」
僕は自分の席に座り直し、拾った消しゴムを彼女の机に置いた。
「ありがと。今夜はこの出来事をオカズにお楽しみですね?」
「何言ってるんだ? オカズってなに? 僕は消しゴムを拾っただけなんだけど?」
「わたし、今日はこれのために黒のTバック穿いてきたんだよ?」
「~~~~~~っ!?」
突然の大胆な発言に、僕は不覚にも顔を熱くして照れてしまった。さらに、
「ねえ、鼻血出てるけど、大丈夫?」
「だ、大丈夫じゃない……」
僕はティッシュを取り出して鼻を押さえ、流れ出る血を止めようとする。
「その鼻血は偶然かな? あ、でも、ズボンはテント張ってるし、必然かな? んふふ、なーんで消しゴム拾っただけでズボンにテント張ったり、鼻血が出たりするのかなー?」
「う、うるさい!」
黙ってろという意味を込めて、僕は彼女に叫んだ。
「このこと、あすみんに言ったらどうなるのかなー?」
「あすみんって誰だよ……」
初めて聞く呼び名に、僕は訊き返す。
「愛純さんのことだよ。愛純、だからあすみん。今考えたの。それで、このことあすみんに言ったらどうなるかな? あすみん、秘密があると不安になるとか言ってたし、このことも教えてあげた方がいいのかなー? ムーちゃんがわたしの椅子に落ちた消しゴム拾ってくれて、拾った後偶然にも鼻血を出して、ズボンにテント張ってたって」
「ぜ、絶対そんなこと愛純に言うなよ!?」
「え、なんで? 秘密はよくないよ~?」
「絶対に話すな‼ 話す必要があれば僕が話すから‼ お前が話すと誤解を生む‼」
「果たしてそれは誤解なのかな~?」
僕の股間を見ながら、純恋がニヤニヤと笑う。僕はそれを無視して、前を向いて授業に集中……しようとする。
授業中、僕はずっとムラムラして堪らなかった。
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