覚悟の道

雅が発見されて5日

そろそろ王族に知られてもおかしくない。

シキは前世を思い出す。


コンビニで品だしをしている最中、以前、理乃さんに言われたことを思い出した。

『店長は異世界ファンタジーの英雄のようですよ。』

ぽっちゃり体型だけど、ほんわかしていて花が咲いてるような笑顔で言われて、俺は頬が赤くなった。


そのことを理乃さんに尋ねる。

「理乃さん、異世界ものに転生される主人公は世界を変えたり、救ったりする英雄が多いですよね?俺じゃ英雄って柄じゃないですよ。」

俺は思わず苦笑した。


『そうね。でも、きっとその世界でも、店長は周囲の人を気にかけながら自分らしく生きていけると思うんです。』


周囲の人を気にかけながらね。

タラが桜マートに入ってきた。

今日は天気が曇り空でどんよりしている。

今にも雨が降りそうだ。


「シキ、鴉紋様は体調が優れないそうだ。午後は休ませて欲しいと」


「今日は客足が少ないし、俺がシフトに入っとく。鴉紋にゆっくり休むように伝えてくれよ」

俺は口角をあげる。

タラは目を見開いたあとフっと笑う。


「ああ、伝えておこう」


◇◇◇


桜マートから出たタラ

「本当にいいのですか?鴉紋様」

鴉紋はどんよりとした曇り空を見上げる。


「きっと、こうしないと雅ちゃんを止められないから。」

雅ちゃんが兄さんの為に動いてるなら、僕はもう一度、四季族が笑顔で過ごせるようにしたい。

覚悟を決めた鴉紋の瞳。

タラは見届けることしかできなかった。


◇◇◇

雅は両手をかざして、夏の族の力を解放して部屋に張られた結界を解く。

雅は春の王の居城を抜け出す。


地下迷宮を走ってる雅

(春の族と王族の塔を繋ぐ地下迷宮から、外へ出る道がある。)


「この先へは行かせないよ。雅ちゃん」

正面から姿を表したのは鴉紋だった。

「鴉紋ちゃん...」


いつもの穏やかな表情とは違う。この顔は。

キサラー...


「鴉紋ちゃんに覚悟があるように、私にも私の道があるのよ。気づかいは無用です。」


雅と鴉紋はそれぞれ力を放出させる。

タラは柱から、二人の戦闘を見守っていた。


◇◇◇

同時刻

春の族の王.紫音は王族の会議に参加している。

定期的な事務報告だ。

すると、二つの強大な気の流れを感じる。

他の王も同じだったらしく、目を見開いている。


「この波動は」

雪が呟く。紅葉がニヤリと笑う。

「見つけたね。夏の姫。もう一つは」

紅葉はチラリと王であるキサラを見る。


キサラは表情を変えずに、窓の見える位置に座っている。

紫音は内心で驚きを隠せないでいた。


(雅...鴉紋..?)








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る