春の章 課せられた罰①

俺は兵士を連れて牢のある場所まで走る。

途中でタラを引き連れた紫音と合流した。


「紫音!」

「シキ、タラから事情は聞いたよ。だからダッシュで来た訳さ。春の牢にいたと聞いた瞬間に部屋を飛び出したよ。」

春の王の証の緑の羽織。背中には桜と陰陽のマークの宝玉を身に付けている。

「あの、俺はどうなるんでしょう。命令された仕事な訳で」

弱音を吐く兵士の言葉を無視して先に進む。



その兵士が担当する春の牢に到着して、先へと足を進める。

周囲には赤い眼に黒髪の人間も収容されている。

《助けてくれ!》《お前も暦族だろう。何でそいつらといる》

悲痛の叫び声が聞こえて俺は胸のあたりをぎゅっと抑える。

背後から肩をポンとされた。

「シキはここで待ってろ」

「そうだね。シキはここまでで」

二人は俺が地下牢に幽閉されていたことを知っている。

その気遣いに感謝しつつ俺は首を振る。

「大丈夫だ。」


「ここです。」

兵士が灯りを灯すと鉄格子の向こうには、金髪碧眼。8年前と違うのは宝玉をつけてない。

髪を肩のあたりまで伸ばしている。

ピンクのワンピースを着ている。


「雅!」


その顔を見た瞬間、雅は目をキョトンとしたあとふっと微笑む。

「初めて会った時と逆になったわね。シキ...」


「夏の姫!なぜ貴女がこんなところに、」

タラが声をあげる。

紫音と雅は一瞬、見つめあったあとに兵士につげる。

「君、彼女をすぐに解放してあげなさい」

春の王の命令に兵士は了解しました口にして、鍵を施錠する。


「タラ、夏の姫が春の牢にいたことは他族には伏せろ。特に王族には」

「ハッ」

タラは裏工作に走る。


「シキは鴉紋に春の族の衣を買ってきてくるように頼んでくれ。お代は僕が払うよ。」

ウィンクをする。

その指示に桜マートには衣を売ってものを買う意味だと知って、シキは二ッと微笑む。


「ああ」


解放された雅はペコリと頭を下げる。

「貴女には昔から迷惑ばかりかけますね。紫音さん」

その雅の顔が姉の日向と重なる。


僕は心臓がぎゅうと痛む心を静める。

「春の装束に着替えて、僕の執務室に来てもらいますよ。夏の姫」


あえて通称で通すことが僕に課せられた罰だから。


◇◇◇



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