踊り子
笠井 野里
預言者ヨルバーネ
ハドリアという国の王城では、王ヘロウデの誕生祭が行なわれていた。城下町も城も白と赤の灯りが
しかし、そんな城にも一つ、石のように澄みきった
その男はヨルバーネという名で、ヘロウデによって捕らえられ、王城の地下にある独房に閉じ込められた
このような形で名を連ねていったヨルバーネは、王ヘロウデによって保護され、重宝されるようになったのだ。元々、王ヘロウデは国教改革を断行しようと画策していたため、ヨルバーネの登場は、金権と世俗に支配された国教会を非難するのにうってつけだった。
ヨルバーネは、国教改革の指導者として王国内で権力を得た。
しかし王は次第にヨルバーネを疎んじるようになった。彼の急進的改革は王政をぐらつかせる危険があった。彼の思想が貴族ウケをしないのもまた当然だった。
そんな緊張状態のとき、ヨルバーネは王ヘロウデが死んだ兄弟の妻と結婚していることを非難した。これを王は侮辱と取って、彼を罪人とし、地下牢へ閉じ込めた。国内はカリスマの唐突な
そうして半年が経ち、このヘロウデの誕生祭が開かれている。ヨルバーネがいる地下牢の天井からは、かすかに騒ぎの音が漏れていた。彼は半年前の自分の権力を懐かしんだ。その権力の座の空想はすぐに、彼の空腹によってかき消された。彼の頭の中には、今上で食べられているだろう料理のことばかりが浮かんだ。腹の音が静かな部屋に響くと、髭の生えた背の低い中年の看守が低い声で言った。
「パンとワインを生み出したんじゃなかったか?」
地下牢の
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