【掌編小説】自分と正体

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 昔の私なら、今のこの世界では絶対に生きられなかった。

 嘘をつかないと、この世界の中では生きられない。


 全てが偽りで出来ているから、私も偽りでなくてはいけない。


 いつから真実は偽りに変わってしまった?

 いつから偽りを真実と呼ぶようになった?


 何が真実で、何が偽り?

 分からない。

 何にも、何一つ分からない。

 この世界のことは……。


 ただ、ただね、一つだけ分かることは。

 私は、―――最低最悪の人間ということ。


 真実は真実で、偽りは偽りと区別がつく世界が来れば良いのに。


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