底辺ダンジョン配信者、戦う
アリサを助ける方法は無いのか? どんなに頭を巡らせて考えても何も思い浮かばない。なんの役にも立つことが出来ない自分に腹が立ってうつむくことしか出来ない。その時ふと見覚えのある文字列が視界に入る。
・おっ、配信始まってる
・死んだかと思った
・配信始まってることに気づいてなくね?
・急に画面暗くなったけどなんかあったの?
・銀髪美少女キタコレ
・なんかアリサっぽくね?
・ダンジョンでデートとか炎上しろ!!!
電磁波のダメージから回復したのか! 同接も70人に増えているし、これはチャンスかもしれない。
「おまえら、助けてくれ! 今、神木ダンジョンでレベル40くらいのキュクロプスに襲われてるんだ。アリサが一緒にいるのは今はスルーしてくれ、キュクロプスはアリサの事を狙ってて逃げられない、どうすればいい!!」
・急になんだ
・ガチでアリサなの!?
・普通に戦えばいいのでは?
・アリサって戦ってる所見たことないけど戦力になるの
・おまいら助けに行けるか?
・みんな触れないけどレベル40のキュクロプスとかどっから湧いたんだよw
・装備と所持品、何が出来るか言え
「俺が持ってるのはマチェットとモンスターのドロップアイテムくらいだ。『ゴブリンの牙』『コボルドの剛毛』『シャドウモスの鱗粉』、これで全部だ! 俺はちょっと剣術が出来るだけで初心者に毛が生えたくらいの実力しかない!」
・うーん、絶望w
・見事に低レアアイテムだけだな
・初見ダンジョンに潜るのになんでそんな軽装備なんだよw
・多分そのマチェットじゃダメージあんまり入らないと思うよ
・レアスキルを持っていれば別だけどアリサの方はどうなの?
・レベル差20越えは流石に無謀
アリサの所持品は「レイピア」「小型ポーション」「携行食料」「神木ダンジョンの手書き地図」「スライムの粘液」。スキルは「剣術:初級」と「投擲:初級」、こちらも大して戦力になりそうにない、かなりマズイな。
・最悪デスループだな
デスループは無理だ、アリサも言っていたがあのオーディールがアリサの蘇生契約を忘れているなんて事はありえない。魔力で感知される以上逃走も絶望的、だったら倒すしかない。
「アリサ、お前は仲間に裏切られてもう諦めちまってるかもしれないけど俺はまだ諦めないぞ。ここには俺と、お前と、70人のリスナーがいるんだキュクロプスくらい何とかしてみせる。だから、生きてここを出よう!」
何の根拠もない、本当に無責任な発言だったがアリサはわずかに口元を緩めたように見えた。とにかく、あの化け物を迎え撃つ準備が必要だ。しばらくコメント欄と話していると、ひとつのコメントが目に入った。
「これなら……いけるかもしれない!」
***
キュクロプスは苛立っていた。確実に殺せたと思っていたのに逃げられてしまったのが非常に腹立たしかった。ダンジョンのモンスターどもが無謀にも攻撃してきたせいで思ったより時間がかかったのも腹立たしい。次はないだろう、奴らの頭上を陣取っている以上いずれは袋小路だ。巨大な眼球はターゲットの魔力の色をみる事が出来る、今もキュクロプスの瞳には壁に寄りかかるようにして立っている女の輪郭が視界に映っている。
(……あいつは、女と一緒にいた男か)
通り過ぎた小部屋から、さっき女をかばった男が上の階層への階段を駆け上がっていった。逃げたか、俺のターゲットはあの女だから、邪魔しないのなら追う理由もない。ほんの少しの違和感を感じつつも女がいる小部屋に向かう。
女はもう諦めたのか壁を背にしてじっとしている。今度こそ仕留めてやると小部屋に踏み込むと、女は突然ガラス瓶を顔めがけてなげつけてきた。
「———ガァッッッ!!!ムゥゥゥアア!!」
クソっ! 何も見えない! ガラス瓶を手で払うと中から煙幕のように黒い煙が顔にまとわりついて視界が閉ざされた。手で払おうとしても粘りつくように視界に入ってきて取れそうにない。
(無駄な足掻きをしやがって、暗闇の中でもお前の魔力は‘‘視えて‘‘いるぞ)
一歩一歩確実に女の首をねじ切ってやろうとキュクロプスは進んでいく。あと一歩で首に手が届くと思った瞬間、首に強烈な激痛が走る
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