掌編・短編集
シオン
結愛×楓悟
ノベルスキーにおいて
#1ヶ月間同じカプて小説を書く
と題して書いていた小説の7月分のまとめ
・火乃森楓悟(ひのもりふうご)
男子高校生。二年。
一人称「俺」二人称「君」
スキンシップが多め。
カッコイイ系
誕生日7月21日
・七瀬結愛(ななせゆあ)
女子高校生。二年。
一人称「ボク」二人称「キミ」
スキンシップ多め。
可愛い系。
誕生日7月28日
そんな二人の付き合ってるように見える、実は両片思いの話。
7月4日「昼休み」
「やぁ、楓悟クン。気分はどう?」
夏の日差しが窓から差し込む正午に君はそんなことを言いながら俺の教室に入ってきた。
「……元気だな、相変わらず」
「そういうキミは元気なさそうだね。どうしたの?」
俺の机の前にパイプ椅子を置き、持ってきていたバックから弁当箱を取り出しながら君は言った。
「そう大した事じゃない。暑いから気分がいまいち乗らないだけだ」
「……クーラーついてないね」
「壊れたらしい」
よりによって連日30度を超えるこんな時に壊れるクーラーが憎たらしい。加えて窓ぎわ1番前だから日差しが容赦なく入ってくる。
「ボクの教室に来る? ボクの教室は冷凍庫並に涼しいし」
「そんなに涼しかったら午後に生きてられる確証がない」
それはまぁ、確かにと頷いて君は弁当を食べ始める。オムライスがギチギチに詰められていた。
「美味そうだな」
「美味しいよ〜! キミもひと口食べる?」
「もらう」
「りょーい」
そう言って君はスプーンを差し出す。素直に俺が口を開けると、オムライスが口の中に運ばれた。
ふわふわの卵とチキンライスの相性が抜群で美味しい。とても弁当箱に入っているクオリティーではない。
「料理上手だな」
「ふふ〜ん。まぁ、キミには敵わないけどね」
「そうか?」
「そうだよぉ! だって見せてみて?」
そんなに対したクオリティーではないがなぁ。と思いつつ、弁当箱を取り出す。
今日はハンバーグとミニナポリタン、それからプチトマトだ。
「ほら、微妙だろ?」
「いや、こんなミニミニハンバーグまで手作りしちゃうのは絶対おかしいから。1個ちょうだい?」
「君のはこっち」
もうひとつタッパーを取り出して渡す。こっちにはハンバーグと卵焼きを入れた。
「あ、卵焼きだ〜!! いいの!?」
「君の為に作ってんだからいいに決まってるだろ」
そう言ってから、なんだか付き合ってるみたいな文言だな、と気づいてしまった。
が、君は特に気づかずにタッパーを開けて食べ始める。
……付き合ってるだろとか周りから言われてるだけで君は別に俺のこと友達としか思ってないんだろうな。だから俺は君に思いを伝える気はないんだ。
「ん〜! 美味しい! 楓悟クンも食べなよ! じゃないと貰っちゃうよ〜?」
「食いしん坊か、君は」
そう言いながら俺は箸を持って弁当を食べ始めた。
7月5日「帰り道」
「そういえばほら、忘れ物」
帰り道、キミはボクの手にシャーペンを握らせてきた。
「ああ、そういえばキミに貸したっけ。お礼のお菓子はないの?」
「がめついな」
ボクが借りた時にはお菓子をあげてるというのにキミはくれずに、催促したら『がめつい』呼ばわりとは、この世は無慈悲だねぇ。
とはいえ、ボクが善意であげてるだけだから、今回は妥協しよう。
「なにニコニコしてるんだ?」
「いやいや、キミと帰れて幸せだなぁ、なんて」
とっさに言った言い訳だが、嘘ではない。付き合ってる風、として皆から見られてるからこういう行動をしてもとやかく言われないというのは、キミに恋してるボクにとってはとても都合がいい。
「……っへ〜」
キミは一瞬動揺を見せたあとに興味無さそうな返事をした。
「なあに? キミはボクと帰れることに対して幸せだと思わないの?」
「なんだかんだ2年間毎日一緒に帰ってるからあんまり有難みはないな」
「つまりキミはボクがいないと帰れない、という訳だね?」
「どういう過大解釈だよ」
だがしかし、思い返して見れば本当にそうだなぁと思う。キミに会いたいから毎日休まなかったし、体調も万全にしたおかげで無遅刻無欠席を貫いている。中学時代の週1登校してればいい方だったボクが見たら驚くだろう。
「暑いな」
「アイスでも食べる? 違う味のアイス買って食べさせ合いっこでもする?」
「いやパキってして分けられるやつ。今それしか食べたくない」
おお。2人で食べるしかないあのアイスだね〜。うんうん、確かに美味しい。
「なるほど。じゃあキミの奢りで」
「仕方ない。次は君が奢ってくれよ」
あ、次もアイス食べるんだ。えへへ、今日は良い1日になったな。
太陽がギラつく暑い夏の日。手を繋いでボクたちはコンビニへと向かった。
7月6日「ひとりぼっち」
今日は君に会えない日だ。
朝は一緒だったし、帰りももちろん一緒なはずだけど。今日は昼の時間に会えない。なぜなら今日は委員会の集まりがあるから。
君は学級委員長だから委員会の集まりには行かなきゃいけない。
「凄いな、君は」
俺はため息をつく。
委員会に所属している君と違って俺は委員会はおろか係の仕事すらもう1人のやつに任せている。
とはいえ、彼女がいないと暇だな。
飯は食べ終えた。昼休みは後25分はある。午後の時間割に小テストもなく、やらなきゃいけないこともない。
つまり、時間を完全に持て余している。
あてもなく携帯を開くが電池が20%であることに気づいてそっと閉じる。
することが完全に塞がれた。
結愛が居ればくだらない冗談を言い合ったり、他愛のない世間話をしているだけであっという間に時間が過ぎていくというのに、独りだとこうも時間の進みは遅いのか。
早く終わらないかな、昼休み。
そんなことを思っても暇なものは暇なので仕方なく単語帳を取り出し英単語を頭に叩き込むことにした。
明日の昼休みは君に会えると、少し胸を高鳴らせた。
7月7日「七夕」
「今日は七夕なんだったか?」
「曇り空だね〜」
昼頃は晴れていたのに夜に近づくにつれ、どんどん曇ってきている。
「え、だから何?」
キミは意味がわからないという顔でボクを見た。
「え、ダメじゃん。晴れた方がいいじゃん」
「なんで?」
「え?」
「は?」
いやいや話が通じてない。どういうこと?
「織姫と彦星の話、知らない?」
「あぁ、あのバカップルのこと?」
「ぬぇ……?」
「だってそうじゃん。結婚したらイチャイチャしまくって仕事しませんでした〜のどこがリア充じゃねぇんだよ」
「あ〜、うん。まぁ確かに」
「だろ? だからそんなやつらが雨で会えなくても何の関係もねぇだろ」
「うみゅ……そうかなぁ」
「んなことより何か願い事でもしたのか?」
ああ、そっか。短冊に願い事を書く、そんな行事もあったよね。
「うん。デパートにあった短冊に書いてきたよ」
「へぇ〜、なんて書いたの?」
「うぇ!? あ、えっと……今年も健康でいられますように、とか?」
「なんでそんな疑問形?」
本当はキミに想いが伝わりますように、って書いたけどそんなこと言ったらバレちゃうからね……。
「そ、そんなことより、楓悟クン、キミはなんか願い事したの?」
「したよ。もうちょい頭良くなる、って」
「……? それ宣言じゃない?」
「宣言した方が叶いやすいんだって」
「え〜じゃあそうすれば良かったぁ」
「ドンマイ」
キミはそう言って笑った。
キミも、ボクのことを願ってくれたら嬉しかったのにな。
7月8日「デート」
土曜日、午前9時50分、駅前。
俺は待ち合わせスポットとして有名な像の前に寄りかかって人を待っていた。
目の前を人が慌ただしく通っていく。時々見かける同じ制服のやつらは制服で出かける人たちなのだろう。休日まで制服なんて、学校に縛られてるか私服がめちゃくちゃダサいかの2択だろう。まったく、センスのないヤツらばかりだ。
「おっまたせ〜!! 待った?」
上機嫌で前から結愛がやってきた。
水色の半袖ワンピースを来て、黒いショルダーバッグを持っている。学校では長袖のワイシャツしか来てないから、今年初の半袖を見たことになる。
「待ってない。今来たとこだ」
「んふふ〜」
「なんだよ」
「5分前からキミが待ってたの、知ってるよ」
「じゃあもっと早く来い」
「いやいや、さっきの会話がしたかったから」
君は全く意味の分からぬ言い訳をして、俺は少しだけ苛立ったけど、君がとても嬉しそうな顔をするから、まあその顔を見れただけで言い、ということにする。
「まぁ、いいや。ほらさっさと行こう?」
「はいはい」
休日の日に出かけることを『デート』なんて呼んで、少しだけ服装とかに気を使って、気持ちだけでもデートを楽しんでる、なんて知ったら君は軽蔑するだろうけど、それでも心の中で思うだけならきっと許されるはずだ。俺はそう思った。
7月9日「電話」
『プルルルルルル』
「あ、もしもし!」
「もしもし」
「んふふ」
「はぁ? 急になんだよ」
「なんかさ、電話してるの楽しいなぁ〜って」
「まだ全然話してないのに?」
「ん〜、そうだね」
「毎週日曜に絶対電話してるのに?」
「それでも、だよ」
「あっそ」
「でもさ、楓悟クンも楽しいでしょ?」
「じゃなきゃ掛けてないって」
「素直じゃないなぁ」
「切ろうか?」
「ごめんって!」
「冗談だよ」
「さっきまで何してたの?」
「また急に話し変える……小テストの勉強してた」
「え、小テスト?」
「そう。漢字の」
「……あるの?」
「あるけど?」
「…………へぇ」
「あるの知らなかったのかよ」
「今からやる……」
「じゃあ切る?」
「嫌、切らない」
「切った方が集中出来んだろ」
「……じゃあおやすみって言って」
「はいはい、おやすみ。また明日な」
「うん、おやすみ」
「範囲送っとくから点数落とすなよ」
「はーい」
7月10日「放課後」
「暇だなあ」
今日は楓悟クンが補習に呼ばれてるから一緒に帰るためにボクは図書室にいる。
図書室に来たのは、教室が補習で使われてて他に涼しそうなとこがなかったから。他の教室だと最悪部活とかで使われてるかもだしね。
ボクも楓悟クンも部活には入ってない。こんなに仲良くなったのは去年同じクラスで趣味があったから良く話してたから。それがどういうわけかクラスメイトの目には付き合ってるみたいに見えたらしく、特に何もしてないのに学年公認カップルみたいになってる。
でもボクにとっては、彼のことが好きだというのが本心だということがみんなにバレなければどんなことしてもいいと言うこの状況に居心地の良さを感じている。
「暇だなぁ」
補習は4時半までらしく、今は3時45分。まだまだいっぱい時間はある。
明日の宿題は特にないし、本とかあんまり興味ないし、スマホは見すぎて充電が全然ないし。
「何しよ……」
周りにいるのは、参考書とにらめっこしてる3年の先輩と5センチくらいはありそうな分厚さの小説を一心不乱に読んでる1年生のみ。
どっちも図書室を有用に使っている一方でボクはスマホを見ているだけ。どう考えても場違い感が半端ない。
「なにか、しなくちゃ」
とりあえず漢字の書き取りでもしてようかな、とボクはノートを取り出した。なるだけ、補習が早く終わりますように。
キミがいない自由時間は酷く長く感じられた。
7月11日「鬼ごっこ」
「合同だな」
「……あぁ、うん」
6時間目の体育が2クラス合同鬼ごっこという小学生みたいなことになった。
それぞれのクラスの体育委員男女混合8人が鬼となり、捕まったらそいつも鬼になるという増え鬼方式。
この時期にやることじゃねぇだろう、と日陰に行ったところで君を見つけた。
「どうした、元気ないな」
「逆にこの天気で元気なアイツらが頭おかしいから」
「ほーん」
「キミも例外じゃないからね〜?」
「そうか?」
本来なら水泳をやるはずだったことを考えると、適当に隠れたり逃げたりしてるだけで終わる鬼ごっこなんて、楽勝だと思うが。
「よくこんな暑い中走り回ろうと思うよねぇ」
「水泳よりマシじゃないか?」
「いや、水泳の方がボクは好き。だって泳げるし」
「俺はカナヅチだから」
「……うける」
暑くて頭が回らないのか返しがすごく適当だ。
「水分取った?」
「外出る前にたくさん」
「フラフラしないか?」
「熱中症じゃないけど」
「でも顔が結構赤い……」
もしや熱でもあるのか、と君のおでこに手を触れる。
「熱くないな」
と、君が腕をガシッと掴んだ。
「……!? きゅ、急になんだ!?」
「今は何の時間だっけ?」
君はニヤッと笑ってそう言った。
「もしや」
「そ、ボク鬼だから、ボクに触れたキミも鬼。もう少し用心しなくちゃ」
「全く、策士だな」
「そうかな? じゃ、1人捕まえたし、後はサボっちゃおっと」
キミは俺から手を離し、微笑んだ。
「俺もサボろっかな」
「1人も捕まえてないのに?」
「……はいはい」
暑すぎる日向に出るのは憂鬱だが、1人くらいならパパっと捕まえられるだろう。そしたらまたここに戻ってくればいい。
軽く足を伸ばして俺は
7月12日「お前が言う?」
「……暑い」
「そりゃそうだろ」
気温35度越えの猛暑日におやつが足りない、と外に出てるんだから、これで涼しかったらバグみたいなもんだろ。
「なんかさ、3・4組水温高すぎてプールなくなったらしいよ〜」
「え、代わりに何したって?」
「なんか、ふつーに自習だったっぽい」
「……ズル」
昨日はプール中止の鬼ごっことかいう鬼畜設計だったくせに……。先生が決めてんだったらこの不平等は考慮するべきだろ。一体教師は何考えてんだか。
「ね〜」
適当な生返事をキミが返した。
「ねーねー前にいるカップルさ」
「ん?」
「こんな暑いのに腕組んでるよ? 暑そー」
男の方がエスコートするように腕を組んでいた。同じクラスのやつどから微妙に気まずい。
というか。
「お前が言う?」
「え? なんで?」
「手繋いでんのもはたから見たら暑そうだと思うぞ」
「え〜? じゃあ離す?」
「別に、いいけど」
暑くて君じゃなかったら離してるけど。
前のカップルもきっとそんな気持ちなのかな。そんな感じだったらいいな。なんて思った。
7月13日「創作言語」
「……ぬわぁ」
突然君が人の言葉以外を喋り始めた。
「どうした」
「ぬあぬあ」
「…………そうか」
「ぬーぬぬーぬぬあぬあ?」
「……うん」
何か意味がありそうでもありどう考えてもなさそうでもある、そんな言葉を吐き始めた。
『ぬーぬぬーぬ』って一体どういう意味なんだよ。
「ぬーぬは」
「うん」
「ぬぬ、ぬあぬあ、あぬ?」
「…………は?」
「ぬぬ!」
「……あ〜、うんうん。確かに」
「あのさぁ」
「うわ、人に戻った」
「なーにーそーれー!!」
結愛はそう言ってバンバンと机を叩く。
「いやだって『ぬぬぬぬ』ずっと言ってたし」
「聞き取れてなかったでしょ!! 適当に答えてたでしょ!!」
「え、うん」
どうやらやっぱり意味があったらしく、そして返答が噛み合ってなかったらしく、君は大層ご立腹なようだ。
「さっき言ったのはね?」
まぁどうせしょうもないことだろ。人間以外の言葉を使ってたし。
「キス、したことある? って」
「あ〜なるほどね? キスかぁ…………ってえ!?」
キス!? 人間の言葉以外でそんな重要な聞くヤツいんの?
「そーだよ? キス、ある? って」
「あ〜、ない」
「でしょうね〜」
「どーせお前もないだろ」
「それはーまぁーうん」
君は死ぬほど目を逸らしながら言った。
まぁ、そりゃそうだろ。逆にキスしたことあったらショックだしなぁ……。
7月14日「ノンアルコール」
※成人IF
「今日さ! 私たちが同棲し始めて、ちょうど1年なんだよ!!」
「知ってる」
俺たちは高校の卒業式で付き合って、成人してしばらく経ってから同棲も始めた。
今日はそんな日から1年で、結愛の強い希望でお祝いをすることとなった。
「やっぱりさ! お祝いといえばお酒、ですよ!」
なんかもう酔っ払った感じで言う結愛。
いや、確かにお祝いし始めてから結構経ってて、俺は酒を2缶くらいあけたが……。
お前は弱いからってノンアルしか飲んでないよな!?
「ふふん。お酒、お酒♪」
「あのさ……酒、飲んでないよな……?」
もしかしたら俺の酒を間違えて飲んでるかもしれない。そんな発想が頭の中を駆け巡り、俺はそう聞いた。
「飲んでますよ〜! ほら!!」
そう言って見せてきた缶にはバッチリ「ノンアルコール」の文字が。
……もしかしてコイツ、雰囲気に当てられて酔ってる? ヤバくない?
と思いつつ、ふわふわしてる結愛が可愛くて俺は顔を緩ませた。
7月15日「勧誘」
「すみません……」
学校からの帰り道。結愛と一緒に歩いていたら突然女の人から声かけられた。
「はい、何でしょうか」
「実は……少しお尋ねしたいことがありまして……」
女の人はそう言った。
「はい、大丈夫ですよ。何でしょうか」
「ちょっとそこのカフェで2人きりでお話しませんか?」
2人きり……?
「いや、俺、その……」
「5分だけでいいので……お願いします」
「いや、でも、俺今」
ガシッと腕を掴んでくる。意外と力が強くて簡単にはふり解けない。
「ダメですか? ねぇ、ダメなんですか?」
「いや、俺」
「私とデート中なんでダメです!!」
結愛がそう言って、俺を引っ張った。
「デート……!?」
結愛がそのまま引っ張って、女の人が驚きで手を離した。そのままスタスタと早足でその場を後にした。
7月16日「声」
※死ネタ
「死んじゃった人のことで最初に忘れるのって声なんだって」
そんなことを君はずっと言っていた。
そして、君は俺と一緒にいる時にやたらと会話を録音したがった。
こんなものを残してどうするんだ、みたいな会話を君は録音していた。もちろん許可をとって。
君は『いつかキミと離れ離れになってもキミのことを忘れないように残すんだ。この録音はキミにもあげるからキミもこれを聴いてボクのことを忘れないでね!』なんて言った。
その『離れ離れ』がまさか君が死んでしまう、という形で訪れるなんて、俺は思いもしなかったんだ。
俺の手元に残ってるデータ上の君はとても楽しそうで、どの録音にも君が辛そうな描写は残ってない。対して俺は、楽しそうな時よりも辛そうな時の方が多かったりして、君は俺がいなかったらどんな気持ちでこの録音を聴くのか、なんてありもしない世界の想像をする。
どうして君がこんなにも早く、20歳という若さで死んでしまったのか。死ぬのは俺じゃなきゃダメだったのか。そんな考えが俺の頭を支配する。
それでも、それでも君を追うことは許されない。それは君のいない世界から逃げることになる。君がしたがっていた沢山のことを俺が代わりにしなくてはならない。
そんな使命感に駆られ、俺は無理やり毎日を過ごしていた。
7月17日「天邪鬼」
「今日さ、1日天邪鬼にならない?」
「エイプリールフールでもないのに?」
ボクの提案を君は一刀両断した。
「いや、なんか、よくない?」
「いや、よくない。世間的に悪いだろ」
「世間的に悪い? なんで?」
「だってさ、天邪鬼ってことは暑い時に『寒い』とか言うってことじゃん?」
「うんうん」
「そんなの頭おかしいじゃん」
「そこをこう、上手くはぐらかしながらね?」
「めんどくさい」
キミはそう言った。
むー、冷たい。まるでボクのこと、好きじゃないみたい。
「じゃあいいもん! ボクだけする!」
「あっそ」
そう言いながら少しづつ離れていくキミ。
「なーんで、もっと離れてよ〜」
「わかった」
ボクの天邪鬼な言葉を真に受けてキミはどんどん距離をとる。
ガシッと腕を掴んで怒ったような顔をするとキミはボクの方を見て呟く。
「……嫌い」
「ぬぇ!?」
「どっちだ?」
キミはイタズラっぽく笑って言った。
どっち? どっちって、本心の『嫌い』か、天邪鬼の『嫌い』か、ってこと……?
「え、分かんない」
「分かんないなら分かんないままでもいーよ?」
キミは笑った。
7月18日「打ち上げ」
今日は球技大会で、女子の部でボクのクラスが、男子の部で楓悟クンのクラスが勝ったから、優勝同士でアイスを食べることになった。
残念なことに2人じゃなくて、優勝したチーム同士なんだけど。
「アイス、美味いな〜」
「アイス、美味しいね〜」
同クラじゃないから、女子と男子の間に微妙に距離感がある。
「……」
「結愛ちゃん、アイス美味しくない……?」
「あ、ううん! そういうわけじゃないんだけど……」
男子の方がどうしても気になってしまって上手くアイスに集中できない。
「……あぁ! 彼氏くんと一緒に食べれなくて寂しいんでしょ〜!」
クラスの中心っぽい子がそう言った。
彼氏くん、か。本当にそうならいいんだけど。
「ううん、そんなわけじゃ……」
「いやいや遠慮しなくていいって!!」
そう言って彼女は颯爽と男子に声をかけに行く。
別に悪い人じゃないし、嫌がらせが目的ではないだろうけど、少しだけ怖い。
「楓悟くん! 結愛ちゃんが一緒に食べたいって!」
「……、結愛が?」
楓悟クンはキョトンとした顔をする。
ほら、付き合ってるわけじゃないのにそんな伝え方しちゃったから楓悟クンが困っちゃった。
「ん、まぁ、分かった」
楓悟クンは頷いて私の近くに座った。
「来たよ、結愛」
「……ありがとう、楓悟クン」
キミはボクの顔を見てふふっと笑った。
いつまでも付き合ってるって体で、恋人っぽいわがままを言っていたい、そう感じた。
7月19日「おかえり」
※成人IF
「よし! できた!」
今日の夜ご飯はピーマンの肉詰めとウィンナー。
今日はお仕事が早く終わったからちょっぴり手の込んだものが作れた……ような気がする。
楓悟クンは今日残業で、結構遅くなっちゃってる。だってもう21時過ぎてるし。いつもは19時くらいなのに。
だからお疲れの楓悟クンはボクが癒してあげちゃうのです。
お風呂の用意も出来てるし、ご飯もできてる。ボクを求めてるなら頑張って癒すことだってできる。
…………エッチなことはご飯食べてお風呂入ってからがいいけど。
とりあえずもうすぐ帰ってくるかもだからワクワクしながら待ってるのです。
ふわふわのクッション抱きしめて、ふかふかのソファに座って暇つぶしにスマホを眺めて待ってるのです。
「ピンポンピンポン」
はっ!
ドアチャイムが鳴る音が聞こえてボクは慌ててドアへ向かう。ドアを開けて声を出す。
「おかえり〜!」
「ただいま、結愛」
勢いつけすぎたドアに驚きつつ、キミはそう笑った。
7月20日「間違い」
今日は結愛から『一緒に登校できない』と連絡が入っていて、首を傾げながら少し早めに家を出た。
学校に着いて自分の教室に行く前、結愛の教室の前を通りかかると、彼女が辛そうな顔で座っていた。
何をしてるんだろう、声をかけた方がいいのか、そう思いつつも、一緒に登校できないと言われたのにわざわざ早くきて声をかけてくるなんて気持ち悪い行動かもしれないという思考が横切って結局声をかけられなかった。
昼休み。君はいつものように俺のクラスに弁当箱と共にやって来て、朝の面影はどこにもなく、復活したんだと安堵した矢先、君が言った。
「今日の朝ね、家族がゴタゴタしてて家に居れなくて早く学校来たの。だから一緒に来れなかった。ごめんね?」
「いや、大丈夫だ。何があったんだ? 今は大丈夫なのか?」
そう聞くと君は微笑んで口を開いた。
「うん。クラスの友達が話聞いてくれたからもう平気。話聞いて貰うだけで結構楽になるもんだね〜」
…………間違えた。
あの時、拒絶されるかもしれないなんて考えずに声をかければ良かった。そしたら君の力になれたのに。
なのに俺はネガティブなことだけ考えて結局見なかったフリをした。最低だ。
「楓悟クン? 元気ない?」
「……いや、ちょっと寝不足なだけだ」
そう言い訳をして、俺も弁当箱を取り出した。
7月21日「楓悟クンの誕生日」
「楓悟センパイ、おはよ」
そう言われてはじめて、ああ今日が誕生日だったっけ、と思った。
「ありがとう。でも、先輩って……」
「先輩じゃん? 一個上になっちゃったし」
「そんなに誕生日が遠いわけでもないだろ?」
「そーだね」
俺が今日、7月21日。結愛が7月28日。たった1週間しか変わらない。
「でもさ! 先輩って呼びたいじゃん?」
「……あぁ、そう」
先輩は距離感ができて嫌だ、なんて子供みたいなことも言えず、俺はそう返した。
「……楓悟センパイつめたーい。コーハイに優しくしてくださいよ〜」
「プレゼントくれないし」
そう拗ねたように言ってみると、結愛はハッとした顔をした。
「そうだ! プレゼント!」
「え、もしかしてくれないつもりだったと?」
「違う違う。家置いてきた」
堂々とおめでとうとか言いながら、プレゼントを忘れてくるという、何とも言えない。
「仕方ない。取りに帰るには時間ないし、放課後家おいでよ。渡すから」
「遅刻してでも持ってこい、なんて言ったら?」
「え〜! センパイがコーハイに遅刻を強要した〜!」
「嘘だよ」
もしかして1週間、先輩って呼ばれ続けるのか。それなら結構嫌だな。
「じゃあ、放課後渡すね! 絶対喜ぶのだから楽しみにしてて」
「はいはい」
誕生日に君の家に行けるだけで嬉しいよ、なんて思いながら俺はそう答えた。
7月22日「寄り道」
「寄り道しようよ、楓悟センパイ」
「……まだ先輩呼びか」
キミは呆れたようにそう返した。
そりゃそうだ。キミは今、ボクより1つ年上なのだから。
「ダメなの?」
「どうせ、言ったって聞かないだろ? で、どこ行くんだ?」
「いや、決めてない。楓悟センパイは何処がいい?」
「え〜」
カフェに行くのはありきたり。コンビニで買い食いはちょっと暑い。ボクの家は…………昨日来てもらっちゃったし。
「じゃ、ゲーセン」
「ゲーセン! プリクラ撮る?」
「じゃあ行かない」
キミは拗ねたように言った。ひっどいなぁ。
「じゃあ何するの?」
「クレーンゲームやったり、あと……」
そこでキミは止まった。何か言い淀んでるみたい。
「なになに? 何がやりたいの?」
「……ハマってる音ゲー、一緒にやりたい。2人で出来るやつだから」
ちょっとだけ言いづらそうにキミは言った。
……一緒に? キミがハマってるゲームを?
へ〜、そんなのカップルみたいじゃん。近くのゲーセンなんて、同じ学校の人も来るのに?
「楽しそうじゃん! そんなに難しくない?」
「人それぞれじゃない?」
「え〜、まぁ、いいや! やり方教えてね」
「もちろん」
7月24日「暇つぶし」
日曜日。何も予定が入ってない。イコール暇。
暇をつぶそうにもどうつぶしていいのか分からず、適当にゴロゴロする。
楓悟クンに借りた小説は読み終わっていて、宿題も終わっていて、ゲームもなんかやる気じゃなくて、外に出る気分でもない。
「暇だなぁ……」
どうしようか。
楓悟クンは今日は用事があって構ってくれないしなぁ……。
つまんない、早く休日終わればいいのに。
7月25日
「プロポーズっていいよね!」
「…………脈絡、ないな」
君の言葉に頭の中がパニックになりながらそう答えた。
いったい何なのか。何が君をその思考にたどり着かせたのか。もしや、君は誰かプロポーズされたい人でもいるのか。そんなのは耐えられない、とも声に出せず、どうにか平静を装う。
「よくない? バラを贈ってもらう〜とかさ」
「……邪魔じゃないか、花は」
「むぅ、ロマンがない」
頬を膨らませて抗議している姿は可愛いが、それはともかくバラは邪魔だろう。
「プロポーズは108本だったか?」
「そうだね〜『結婚してください!』って意味だし。でもね、別に108本じゃなくてもいいんだよ?」
「数に決まりはないと?」
「ううん。そうじゃなくて1本なら『一目惚れ』とか11本なら『最愛の人』とか」
「ああ、決まりはあるけど少ないのでもいいと」
「うん、やっぱり少ない方がいいし」
……まるで貰えるのが前提みたいな言い回しをしたな。
「で、何故突然プロポーズの話をし出したんだ? まだ俺たちは結婚すらできないが」
「ああ、なんかさ、今日朝プロポーズの話題がテレビでやってて」
「それで、羨ましいと?」
「うん。いつかされたい。何本でもいいからさバラとか指輪とか渡されて『この先の人生を俺と一緒に歩いて欲しい』とか言われたい」
「やたらキザだな」
「そうかな? 楓悟センパイ似合うと思うけど」
「…………は?」
「え?」
似合う? なんで俺がその言葉を君に言う前提なんだ?
「俺は…………プロポーズはしないぞ?」
「そっか、まだ付き合ってないもんね!」
…………え?
「お前、俺のこと…………!」
ピピピピピピ!
…………あぁ、夢か。
アラームの音で現実に戻されてしまった。現実も夢みたいに両思いだったらいいのに。
そんなことを思いながら、おれはベットから起き上がり、朝の支度を始めた。
7月26日「夢」
「俺さ、勇者なんだよ」
…………は? 真面目な顔して何言ってんの?
キミが言った言葉に驚いたけど、よく周りを見渡すと全然知らない場所だった。
白い床、白い壁。窓には無色透明なステンドグラス。壁にはやたら分厚い本が何冊も飾ってあったり、特に豪華でもない皿が飾ってあったりしてる。ロウソク台が何個か置いてあって、シャンデリアとかはない。なんとも微妙な豪華さの部屋。
明かりになりそうな物がロウソク台くらいしかないから多分電気が発達してない。で、勇者って発言。
多分これ、夢かな。
というか夢で確定だよね。だってさ、あんな生真面目楓悟センパイが『俺勇者なんだよね』とか言うわけないじゃん? もし言い始めたら多分風邪とか引いてるから即熱計らせてそのまま楓悟クンのお家帰って寝かせなきゃいけない。というかそういうこと言うのはボクの担当だし?
さらにはこんな意味のわからぬ豪華さを持った家なんて現代日本にないし。
だからこれは夢。
「…………勇者?」
「うん、この世界にいる悪いヤツを倒さなきゃいけないんだ」
悪いやつ。語彙力ないみたいな物言いだなぁ。普通は魔王じゃないの? 王がいないにしろ魔物みたいな言い方も出来るはずなのに『悪いヤツ』呼ばわり。まるで普通の人間を魔物のように見立ててぶっ倒そうとしてる?
「悪いやつって犯罪者とか……、なんてね?」
「いや、もっと悪いヤツだよ」
やっぱり犯罪者より悪いよね、魔物とか。だって異世界から急に侵略してきてお姫様さらったり、世界を手中に収めたり、モンスター全国に配置したりするんだよ? 関係ないけどラスボス近くの村に住んでる人ってどうやって生きてるんだろう? 敵とか強いけど。
「それって誰?」
まぁ、一応聞いとかないとね。もちろん魔物だろうけど。
「教皇に決まってるじゃん」
教皇? 教皇? え、何の?
もしかして宗教の教皇? は?
「……ねえ、どういうこと!?」
ピピピピピピ!
……聴きながら詰め寄ったらアラームの音が聞こえた。
…………え、なんで教皇倒すことになったか結局わかんないまま終わり? うわ、酷い……。
そんなことを思いながら二度寝をする時間もなくボクは起き上がった。
7月27日「嘘」
※死ネタ・成人済み
嘘をつくのは悪いこと。叶えられないような約束もしちゃダメ。
だからキミは悪いことをした人なんだ。
ボクを置いてあっという間にいなくなっていく。交通事故でも病気でもない、通り魔殺人の被害者になってしまって。
ボクと一緒に生きてくれるって、ボクが死ぬまで一緒だって、そう言ったのに。
ボクの誕生日の前日に、そんな風に死んでいく。まるでひどい仕打ちだ。
キミは死のうと思ったわけじゃない。そんなことは知っている。分かっている。これは単なる事故でキミが進んで言ったことを嘘に変えたわけじゃない。キミが望んで悪い子になったわけでもない。
それでもキミは悪い人なんだ。
ボクはキミがいなくなったらどうやって生きていいか分からない。真っ当な人生の歩み方を知らない。キミが生きていた証は全て形に残らないものとして消え去ってしまう。
こんなことになるんなら、声を録音しておけば良かったな。写真をもっと撮っておくべきだった。
でも後悔してももう遅い。もう何もすることはできない。
きっと後追いなんてキミは望んでない。ボクは、寿命までキミのことを考えながら生き続けるんだ。
それがキミの呪縛なら、それはそれでありかもしれない、なんて思った。
7月28日「結愛の誕生日」
「誕生日おめでとう」
キミが少し嬉しそうにそう言った。
「……ありがと?」
「いや〜、これでまた同い年だからな」
「…………もしかして、根に持ってた?」
「そりゃそうだろう。いくら俺の方が早いといえどもたかが1週間。それなのに先輩先輩はないだろ」
キミはひどく呆れたようで。ボクはこの1週間楽しかった、などと言ったら怒られそうでボクは何も言えなかった。
「まあ、俺は君と違ってちゃんとプレゼントを持ってきてるからな。はい、これ」
「ちゃーんとボクのこと考えながら選んだ?」
そんなことをするのは多分好きな人とかにだけだろうな、なんて思いながら聞く。
「ああ」
「うぇ!?」
「君が何をもらったら喜ぶかを一生懸命考えながら選んだ。多分好みに合うだろ」
…………あ、そういう感じ?
こう、マジメに取られちゃって、逆にちゃんと考えないとおかしくない? のパターン?
まあ、ボクはキミのプレゼント、考えて選んだけど……。
「へ、へぇ〜? じゃあ期待してあげようじゃないの」
「じゃあ、プレゼントは家帰ってからでも開けてくれ」
そう言ってキミはもう一度言った。
「誕生日おめでとう、結愛」
7月29日「綺麗」
「ねぇねぇ、クラスの三木くんカッコよくない?」
三木くん、三木真一郎くん、だっけ。
クラスの人気者の1人で、スポーツはできないけど、頭がめちゃめちゃ良くて、カッコイイって言われてたっけ。
「あ〜うん。まぁ、カッコイイよね」
「何それ〜。やっぱ楓悟くんのかっこよさには劣る、とか思ってんの〜?」
まぁ、そうでしょ。
だって楓悟クンはかっこよくて、でも可愛いとこもあって、頭も良くて、運動もできて、ボクのことを構ってくれる完璧超人なんだから。
だからさ、人には正直興味無いんだよね、なんて。
7月30日「例えば」
「例えばの話、明日世界が終わるならどうする? 何する?」
君はそう問いかけてきた。
明日世界が終わるなら。そんな言葉はわりとありきたりな話題で、でもいざ問われると難しい。
「……分からん。結愛は何するんだ?」
「ボクは……やっぱり楓悟クンと一緒にいたいかも。今みたいに」
「……俺と?」
「うん」
……へぇ、俺と、か。君のことだから家族や……好きな人とかと一緒にいたいとでも言うのかと思った。
「好きな人とかじゃなのか」
「…………そう、だよ?」
「え?」
君の方を見ると顔を赤くしてそっぽを向いている。つまり、さっきの肯定の意味は……
「キミは? どうするの?」
「俺も……結愛とがいいかも」
「好きな人とじゃなくて?」
「……好きな人、だから、かな」
君の方から目を逸らしながら言った。
……これ、ほぼ告白だな。
7月31日「告白」
昨日の話がなんだか告白紛いになってしまい、顔を合わせずらくなってしまった。
それに加え少し前から夏休みに入ってるってこともあり、避けるのにはとてつもなくご都合だった。……裏を返せば昨日の真意を聞くのはとても難しいこと、という意味だが。
結局の所、俺は連絡する勇気もなく1日を過ごしてしまったのである。
夜になって、そろそろ寝ようかな、としてる頃、突然電話がかかってきた。結愛からだった。
「……もしもし?」
「……連絡、くれると思ったのに。楓悟クンの意気地無し」
「…………あぁ、えっと」
「ねぇ、昨日の、どういう意味なの」
「それは……そっちこそ」
「ダメ。楓悟クンから教えて」
半ば怒ったようにそう言われてしまったから、俺は1回深呼吸した後、言葉を紡いだ。
「好きだよ、結愛が」
「それは、友達として?」
「違う」
心臓がありえないくらいバクバク言ってるのを悟られないように俺も質問をする。
「結愛は?」
数分、いや実際は数秒なのだろうが、とりあえず長く感じられる時間が経ったあと、君は言った。
「…………同じ」
「そっか。じゃあ、両思いか」
「……嬉しいね」
「明日からちゃんと付き合ってるって、言えるな」
「まだ夏休みだから言えないけど、新学期になったら、ね?」
それもそうかと俺は笑った。
これからは毎日電話だって、もっとカップルっぽいことだってできる。そう思うと君に会いたい気持ちが高まる気配を感じた。
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