第2話

 眠っている夢を見ている。

 夢だと気づいたのは、ベッドが実家の私の部屋だったからだ。

 寝返りをうつ。

 背中に、冷たい何かが触れる。指でつつかれたような感触があった。


「……ちゃん、きみちゃん……」


 耳元で誰かが私を呼んでいる。私以外、誰もいないはずなのに。 

 ベッドの底に沈み込むように、小さなてのひらの圧で横腹を押され始める。

 痛い。強い力で押されている。

 沈む前に、目を覚まさなきゃ。起きなきゃ。


「きみちゃん、きみちゃん」 


 誰かがベッドの底から呼んでいる。

 応えてはいけない。

 知らぬふりをして目を覚まさなきゃ。

 アラームはどうして鳴らないの。

 沈んでしまう……


 PiPiPi……PiPiPi……PiPiPi……


 アラームで、飛び起きる。

 Tシャツをめくり横腹を見ると、小さな手のような痕があった。

 幻聴や幻覚のたぐいではない……。

 ねっとりとした汗がにじんできた。


 実家の私の部屋に、何があるんだろう。

 私は、実家に行くことにした。



 

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