第一章 第六節 第二話

 お察しのとおり、彼女等を手に掛けたのは私だ。もっとも、その罪を問うことはこの国にはできないがね。


 そして、彼女等をああしたのも、やはり私だ。でなければ、人の魂は勝手にああはならない。


 結婚、というのも正解だ。確かに私は、『十人のインディアン』を利用して、あれと結婚しようとした。結果を言ってしまえば、その試みは失敗してしまった。それに、涼香に目をつけられてしまっては、これ以上はやるだけ無駄というものだろう。どうしたって邪魔してくるだろうからね。


 とはいえ。君達が考えているであろう結婚と、私がやろうとしたそれは、実際のところ別物と思ってもらっていい。そうだね、君達にも分かりやすいように言い換えるとしたら……同化、いや、受胎? 難しいね、どう表現すべきか。


 ところで、御影君は私のことを何と聞いているのかな? まあおおよそ想像はつくけど――やはりそうかい。まあ、蒐集家というのも、あながち間違いではないんだけどね。


 さて、結婚して何をしようとした、だったね。しかし困った、君達にも理解できるように説明するとなると、やはりとても難しい。君達には圧倒的に、知識が足りていない。


 馬鹿にしているわけではないよ。きっと涼香だって、理解できやしない。いや、理解してはいけないのかも知れないね。さもなくば、きっとあの子は壊れてしまうから。それは君達とて同じだけど。


 ――ああ、まあそうだね。そのとおりだよ。私は産もうとしたんだ。何をって? 少なとも君が想像していないものを、だ。君達の感性に合わせるなら、ろくなものではない何かをね。


 だけど……さっきも言ったけど、今回は失敗だ。それも大失敗。まさか試す前に終わってしまうとは、流石に思っていなかった。やれやれ、思いつきでやるものじゃあないね。次はもう少しこっそりやるとしよう。


 ――別にはぐらかしているわけじゃあないよ。約束したじゃないか、嘘も誤魔化しもなしだって。一応、私なりに君達に気を使っているんだよ。


 それでも、どうしても知りたいというのなら、また家に来ればいい。私はもうあそこを出るけど、書物やら何やらはそのままにして行くつもりだから、多少は助けになると思うよ。おすすめはしないけどね。


 ああ、安心してほしい。あれはもう、家にはいないから。君や藤堂さんを脅かすことはないと、保証しよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る