王様と鶴

水城洋臣

童話「王様と鶴」

 昔々むかしむかしことでした。

 とあるくにに、まだわか王様おうさまがおりました。


 その王様おうさまのおとうさんとお祖父じいさんは泥棒どろぼうでした。

 泥棒どろぼうくにぬすんで王様おうさまになったのです。


 いま王様おうさま泥棒どろぼうではいのですが、まわりからは「あいつは泥棒どろぼうだ」とうわさされ、だれからも仲良なかよくしてもらえませんでした。

 くにひとたちや、おしろ大臣だいじんたちからも陰口かげぐちわれます。ほかくに王様おうさまたちも、その王様おうさま無視むししていました。


 そんなひとりぼっちの王様おうさま友達ともだちは、うつくしいつるだけでした。

 そのつるだけは、その王様おうさまってくれていました。


 王様おうさまつるといつでも一緒いっしょにいたいとおもい、そのつるくに将軍しょうぐんにしました。おしろ仕事しごとをするときも、これでずっとつる一緒いっしょにいられます。


 あるとききたやまからおにたちがおそってきました。

 いつも無視むししてきたまわりのくには、やっぱりここでも無視むししてきました。


 くにひとたちは王様おうさま見捨みすてて、ほかくにげてってしまいます。

 大臣だいじんたちに相談そうだんすると、「つる将軍しょうぐんにしたんですから、つる鬼退治おにたいじしてもらえばいいでしょう!」とわれてしまいます。そして大臣だいじんたちもげてしまいました。


 しかし、ただのとりであるつるには、なにもできません。

 そしてつかまってしまった王様おうさまは、おにたちにべられてしまいました。


 王様おうさままもれなかったつるは、そんな様子ようすかなしそうにつめながら、そら彼方かなたへとってきました。






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