第5話情報収集
「あの…できたらでいいんですけどこれからも俺の夜ご飯を作ってくれませんか?」
俺地震食に対してそんなに好き嫌いもこだわりもある方ではないんだができることなら栄養管理がちゃんとされたご飯が食べたい。
いつも自分から健康管理を全く気をつけていないわけじゃないのだがそんなにしっかり見ているわけでもないし唯一しっかり見てるところは賞味期限ぐらいだろう。
「そんな簡単なことでいいなら別にいいけど居候させてもらってるお礼も兼ねて」
「ありがとうございます俺自分で料理ができないので助かります」
「まあどんなに頑張って色々なものを買って食べててもスーパーのものをずっと食べてたら飽きちゃうだろうしね」
それから冷蔵庫の中にあるあり合わせのものでご飯を作ってくれた。
「少し量が少ないかもしれないけど冷蔵庫の中にあるもので作るのはこれが限界だった」
「十分ですよありがとうございます」
「明日にでも食材買ってこないともうなくなりそうだな」
今までは自炊が元々できなかったので冷蔵庫にある食材なんてそんなに気にしてなかったがこれから作ってもらうことを考えると買っておいた方がいいだろう。
「今度時間がある時にでも自分で食材を買ってきますよ」
「自炊を全くしてなかった人がどれがいいものなのかとかわかるのかしらね」
いつも通りの平坦な口調ではあるが言葉で確信をついてくる。
「頑張ります」
「私も何かの用事でスーパーに行くことがあればなるべく食材を買うようにするわ」
「ありがとうございます」
それから作ってもらったご飯を全て食べた。
「ご飯を食べてゆっくりしたところでお風呂に入ってきていいかしら?」
「はいどうぞ、俺もそれじゃあお風呂に行きましょうかね」
「あなたがお風呂に入りたいんだったら私は後でいいから先に入ってきて」
「いや俺はもともと今日は銭湯に行く予定だったので気にしないでゆっくり入ってください」
俺は車椅子を漕いで勇輝との待ち合わせ場所に向かう。
「悪いちょっと遅れた」
いつも利用しているというわけではないが時々使っている銭湯の店の前でいつも通り勇輝が待っていた。
「そういえば今銭湯って使ってる人いるのか?」
勇輝が素朴な疑問を口にする。
「さぁ俺も詳しいことはわからないから何とも言えないが昔より客が減ったのは確かだろうな」
銭湯の中でこんな話をしていたら怒られないかと今更ながら思ったが中で会計をしているおばあちゃんは会話を機に止めてすらいない。
男湯のロッカーの前で服を脱ぐのを手伝ってもらい一緒に中に入る。
知らない人が何人かいて一緒に入るタイプではないので2人でのびのびと湯船に疲れる。
俺は銭湯の洗い場のところに寝転がり体を洗ってもらう。
もうすでに銭湯には何回か一緒に来ているので慣れた手つきで体と頭を洗い2人で一緒に入る。
「今調べてる情報あともうちょっとでまとめ終わりそうだから待っといてくれ」
「分かった待ってる」
「それにしても今回の宗教の件もそうだがなんで人って何かに依存したりするんだろうな?」
「人は何かを信じたい生き物なんだよ」
「例えばスポーツ選手とかで金メダルを取れるって期待された人がいざ金メダルを取れなかったらネットですごい叩かれたりするだろう」
「それは自分が相手に期待しすぎたからだ」
「有名人じゃなくてもただの人間関係だってそうだ」
「特に恋愛だとそれが顕著に出ることが多い」
「相手の男の人は十分よくやってるのに女の人からしたら全然優しくないとかもっとこういう言葉をかけてよとか」
「よく言われてるメンヘラとかがこれでトラブルを起こしてるケースが多い」
「まあ俺は生まれてこの方一度も恋愛をしたことがないから実際はどうなのかわかんないけど」
俺は淡々とした口調で自虐を口にする。
「考えながら恋愛するとうまくいかないっていうデータもあるみたいだし、ある程度相手に依存して盲目になってた方がうまくいくのかもしれないな」
「俺もう今30だけど運命の人が全然現れないんだがどうしたらいいんだ」
「そもそも本当にしたいと思ってないだろう」
「まあそうなんだけどな」
「そもそもこの世に運命的な出会いなんてない自分が相手との出会いを運命的なものにしていくんだ」
言うとハット驚いた表情を顔に浮かべる。
「まあこの前テレビ番組でやってた恋愛心理学者の人が言ってた言葉の受け売りなんだけど」
「まあそう言われてみれば確かにそうだよな」
「人間は結局のところ自分の好きなように勝手に解釈して自爆したり幸福になったりする」
「結局のところ自分の考え方ひとつってわけか」
「それじゃあまた何かわかったら携帯に連絡する」
「早ければ今日の夜連絡するかもしれない」
「分かった」
風呂を出て俺は一旦家に戻る。
テーブルの上に置いておいた自分のスマホが着信音を鳴らす。
スマホの画面を見てみると電話をかけてきたのは勇輝だった。
「もしもし」
「真神」
「どうした?」
「宗教のことについてまた新しい情報が入ったから今からそっちに行って説明する」
「分かったよろしく」
短くそう言って電話を切った。
予想してたより早いな。
「何だって?」
「宗教のことについて新しいことが分かったから今から家に来てくれるそうです」
家のチャイムの音が鳴る。
「今開ける」
家のインターホン越しにそう言って家のドアを開ける。
「それで何がわかったんだ?」
「その宗教の上の方のやつの顔のまだ全員じゃないが写真を持ってきた」
そう言ってテーブルの上にそれぞれ違う人物の写真を3枚並べる。
「これが今その宗教の幹部たちの写真ってことか?」
「正確には現時点で俺が素性をある程度知っている範囲での幹部だけどな」
「後他に2人幹部がいるんだがそいつに関しては曖昧な情報が多くてしっかりとした情報が手に入らない」
「そいつらは全員その宗教を立ち上げた時から一緒にいるやつらしい」
「そいつら幹部をたどっていけば何で嬢ちゃんの両親が宗教にどっぷりハマったのかわかるかもしれねぇ」
「いきなりと思うかもしれないがこれからその宗教の建物の方に行こうと思うんだが大丈夫か」
勇輝が情報を調べるのが早いのは知っているつもりだったが、まさかたった1日でここまで用意周到に準備をしてくれるとは。
「私は別に行くのは構わないんですけどその建物がある場所の当てはついてるんですか?」
「ああ、さっきネットで調べたらすぐ出てきたよ」
「分かりましたそれじゃあ早速行きましょう」
俺は勝手にもう少し悩むと思っていたんだが思いのほか早く言葉が出てきて少し驚いた
早速3人でその建物へと向かう。
その場所にたどり着いてみると思っていたよりも建物が大きく見上げてしまう。
「俺が調べる時に見てた画像よりも大きいな」
「無月さんってお父さんとお母さんにこの場所に連れてこられたりしました?」
「小さい頃とかはよくここの宗教の神様にお祈りしに来たりはしてたけど中学に入ってからはそれがやで全くここには来てない」
「なにせここに来てたのもすごい小さな時の話だからそのお祈りに来てた時の記憶すら曖昧だけどね」
「ならそのまま強行突破しても問題ないってことですね」
「まあ特別な会員証とかも必要なかったはずだし普通に中には入れると思うけど」
「あれからしばらく時間が経ってるからシステムがどうなってるのかは私には全くわかんない」
今までの話を聞く限りではかなり前からこの建物があるみたいだが、その割には見た目がとても綺麗だ。
「とりあえず中に入ってみましょう」
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