第4話新聞記者の男
次の日。
「おはようございます、ちょっと今日俺に付き合ってほしい場所があるんですけど」
俺は自衛隊の
「別にいいけどどこに行くの?」
若干眠気を含んだ口調で訪ねてくる。
「ちょっと俺の知り合いのところまでついてきて欲しいんですけどいいですか」
「知り合いって私がお風呂に入ってる間に電話してた人?」
「話が早くて助かります」
「そうです、朝ご飯食べてしばらくしたらその人のところへ行こうと思ってるんですけどいいですかね?」
「私は別に今日予定入れてないからいつでも大丈夫だけど」
「車椅子に乗せてあげましょうか?」
「でもそこまでしてもらうわけには」
「気にしなくていいから昨日の地面にダイブする折り方見てるとあなた車椅子に乗る時も危なっかしい乗り方しそうだし」
無月は見た目細身なので最初は大丈夫かと不安だったが、意外にも俺を軽々と抱え慎重にゆっくりと車椅子に乗せてくれる
テーブルについたところで今日の朝ごはんを買っていなかったことに気づく。
「ちょっと今から朝ご飯買いに行ってきますね」
「それなら私がお礼に朝ご飯作ってあげましょうか?」
「何かお礼されるようなことしましたっけ?」
「家に止めてくれたお礼」
「まあそれはこれから自殺する予定だったのを結果的に引き止める形になっちゃいましたから止めるのは普通のような気もしますけどね」
「まあこれと言った理由は特にないけど私の気まぐれ料理に付き合ってくれればそれでいい」
「そんなシェフの気まぐれサラダみたいな感じで言われても」
冷蔵庫の中を開け何が作れるのかを考えてくれている。
「そもそも冷蔵庫の中に朝ご飯を作る材料あります?」
「ご飯と味噌汁はできそうだから大丈夫」
それから見事な手捌きで野菜を切っていきご飯を炊く。
「できた」
そう言いながらテーブルの上に運んできてくれる。
「どう美味しい?」
「ずっとスーパーの弁当とかばっかりだったんでこうして人に作ってもらったご飯を食べるのがなんだか新鮮です」
「それなら良かった」
作ってもらったご飯を全部食べ終えしばらくして知り合いの男に会いに行く時間になった。
支度をして2人で家を出る。
たくさんの人が行き交い、いろんな種類の飲食店が立ち並ぶ、その真ん中にある大きな噴水のところに1人の男が立っている。
「久しぶり」
その男に俺は声をかける。
「おう!本当に久しぶりだな」
「その横にいる人が昨日電話で話してたお嬢ちゃんか?」
「ああ」
短く言葉を返す。
今こうして俺の目の前に立っているこの男は
その見た目しっかりとした体格と威圧的な顔立ちが相まって本人から聞いた話だと、初対面の相手の場合は何もしていないのに恐れられることも多々あるらしい。
「初めまして」
「こちらこそはじめまして」
「まあいろいろ聞きたいこともたくさんあるんだけどまずはどっかで腰を落ち着かせながら喋りたいな」
「それならあの目の前にある店がいいんじゃないか?」
「あの店だったら真神も車椅子の状態でそのまま入れるだろうし」
「そうだなあの店にするか」
「私は別にどこの店でもいい」
そのお店に入り店員さんに席へ案内してもらう。
「それじゃあ改めて」
「俺の名前は
「私の名前は璃無月学生です」
「本題の話に入る前に1つ真神から聞いた情報を元にお嬢ちゃんのお母さんが所属していた宗教を特定してみたんだがこの宗教であってるか?」
そう言って一つの写真をテーブルの真ん中に置く。
その写真に写っていたのは何かの人の写真というわけではなくキリスト教でもブッダでもない何かの神様が仏壇に飾られている写真だった。
「そうです確かにこれと同じものが家の中の仏壇に飾られてました」
「それなら良かった、情報量が少なかったからこれでいいのかどうなのかいまいち地震が持てなかったんだがその言葉を聞いて安心したよ」
「でもよく少ない情報でここまで特定できましたねそんなに細かいことは教えてないと思うんですけど」
「まぁ確かに真神だけの情報を頼りに情報を絞り込むのは苦労したけど色々な手を使ってなんとかなったよ」
「それで一旦話を戻すが、この宗教に所属している正確な人数はまだ把握できていないんだが少なくとも300万人はいる」
「随分と他の宗教に比べると人が少ないんだな」
俺の勝手なイメージだと何億人とかはいるイメージだったんだがそこまで有名じゃない宗教だとこんな感じなのかもしれない。
「元々あった大きい宗教のメンバーの一人が独立して立ち上げた宗教とかじゃなくて1から作り上げた組織だからな」
「そんなにうまく人が集まんなかったんだろう」
「まあでもゼロから立ち上げた団体にしてはよく集まった方なのかもしれないけどな」
「新しい宗教を立ち上げてそんなに簡単に神様って作れるもんなのかしら?」
無月は素朴な疑問を口にする。
「別に新しい宗教を立ち上げたからって新しい神様をわざわざ作る必要はない」
「別に元々自分が所属してた宗教と同じものを信じたっていいんだ」
「でもそれじゃあ元々いた宗教から独立した意味がないんじゃ」
「別に元々いた宗教と全く同じにしなくても少し変えるだけで新しい宗教ができる」
「新しい宗教を立ち上げる場合もわざわざ自分で新しい神様を1から作り上げようなんて考えなくても別に問題はない」
「朝のニュースとかで頭の良さそうなインテリの人たちが勝手にその宗教の存在理由をあれこれ想像して作り上げてくれる」
「その宗教を作り上げた本人はそのニュースで議論してた内容を新しい進行の対象として掲げればいいだけだ」
「とはいえ今の話は俺の憶測がだいぶ入ってるから実際のところはどうなのかわかんないけどな」
「また話がだいぶ脱線しちまったから話を戻そう」
「それで結局この宗教は何を信仰の対象としてる宗教なんだ?」
「それが詳しく調べてみようとしてもよくわからなくてな」
「一応のこの宗教の存在意義というかキャッチコピーは貧困に苦しんでる人犯罪を犯してしまって何をどうしたらいいかわからない人の助けになりたいって言う内容だったけど」
「随分とターゲットが広い神様なんだな」
「宗教に所属してる人が犯罪者だってわかったら私その宗教を抜けますけどね」
「誰だってそれはそうだと思うがでも実際前に犯罪を犯した人が何人かその宗教に入ってるらしい」
「本当だったら今日この宗教の幹部のやつらの情報も調べて教えようと思ってたんだがそこまで手が回らなくてなまた今度でいいか?」
「じゃあまた今度新しい情報が集まったらどっかに集まって情報共有しよう」
「じゃあ行きましょうか無月さん」
「今日はありがとうございました」
言って勇輝に頭を下げる。
「こちらこそこんなところまでわざわざ来てもらってすまなかったな」
「また今度何か新しい情報が入ったら教えるよ」
「その時はまたよろしくお願いします」
俺たちはその店を出て家へ帰る。
「俺が最初にこの話を持ちかけておいて言うのもあれなんですけどこのままで大丈夫ですか?」
無月がテーブルの横に置いてある椅子に座ったところで尋ねる。
「どういう意味?」
「お母さんとお父さんがどうして宗教にどっぷりハマってしまったのか調べて行けば行くほどもしかしたら衝撃的な真実が分かってしまうかもしれません」
「その真実は知らない方が幸せなものかもしれない」
「私昨日言ったでしょどうせ自殺をするんだったら全てを分かった上でなるべく楽になった状態で自殺したいって」
「そこでいくら絶望したところでこれから死ぬ人間には関係ないし」
「分かりました」
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