第7話

  拝呈

 急なお手紙で申し訳ございません。

 貴方の健康状態が日に日に思わしくない方向にすすんでいると聞いて、お手紙を書かせていただきました。佐山先生も友人の貴方を大変心配しています。貴方の門下生やわたしの親友C・N・ウィルコックスが、何よりも読者が心細い思いをしています。

 もし仮に貴方の精神状態だけでなく、健康状態が今より悪化したならば本邦の幻想小説や怪奇小説、探偵小説におけるルネッサンスは幕を閉じることになります。勿論貴方の体調は良くなると信じていますが。

 しかし優秀な作家は多くいますが、貴方は彼らまでもき付ける大作家です。得意な分野は勿論のことながら、詩、短歌、俳句、川柳、評論など、ありとあらゆる創作活動にかかわり、いずれもその手のプロを魅了しています。貴方が脚本を務めたドラマも大ヒットして、センセーションを引き起こしました。

 貴方がこうなって以来、様々な分野の権力者が活力を失っています。かく云うわたしたちも例外ではありません。

 貴方の精神状態と健康状態の回復を、心より願っています。

 最後に、不躾ぶしつけなお願いと存じ上げておりますが、返信いただけると幸いです。

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