アウトサイダー

朔之玖溟(さくの きゅうめい)

第1話

 おまえの度胸には驚嘆させられるねえ、と伯母は云った。眼窩がんかはじっとおれを見つめ、死んだ魚のように思えてくるものの、伯母の興奮はかなりのものである。続け様に伯母は、本当に気づかれなかったかい、と心配そうに声を潜めて云った。

「もちろんだとも。伯母さんが欲しい物は、きちんとおれのうちにある。伯母さんは何一つ心配しなくてもいいんだ。あいつのいない内に盗ってきたからね」

 伯母は何やら合点がいかないようで、

「でも一体どうやって盗ったのかい」

「あいつは予備で鍵を一本持っていてね、頼れる家政婦がそれを預かっているんだ。だからおれはその家政婦の家に行って、そいつが留守の時、窓を割って忍び込んだ」

 おれがそう告げると、伯母の顔色がみるみると青くなっていった。


 けどね、墓穴を掘ったわけではないから安心してほしい。おれは鍵を盗んだ後に型を取り、それから闇市の人に偽鍵を造ってもらったんだ。そして、日を改めて再び彼女の家に窓から侵入した。窓硝子は割れたままだったよ、彼女は丁度旅行に出ていたからね。おれは偽鍵を予備の鍵と入れ替えて、あいつの家に堂々と侵入し、ぶつを取ってから再び引き返して鍵を交換したよ。もっとも、人がいない時間帯をねらったがね。


 と説明を続けると、伯母はにっこりと目を細め、たちまちおれの頬もゆるむ。

(これで良かったのだ、きっと)

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