真相

 .





「―――ってなわけ」

「………」


 わたしは15日間の記憶を思い出すと、病室に戻ったらお母さんに早速話していた。


「そんでねぇ―――って、お母さん?」


 わたしが話の続きをしようとしたら、お母さんはわたしの額に自分の右手をそっと当てた。


「……熱は無い……」

「うん、無いよ?」

「さっき、看護師さんから転んだって聞いたからなぁ……」

「お母さん。何が言いたいの……?」

「……その時に、頭をぶつけてとうとうおかしく……」

「なってないよっ!」

「……もしかして、病気して妄想癖がついたの……?」

「あれ、普通にスルー!? てか、妄想じゃないもんっ!」

「じゃあ、アンタはどうやって、この世に帰って来たのよ?」

「………。分かんない」

「分かんない?」

「そこだけの記憶が無いの。“抜けてる”って言うのかな?」

「ふーん」


 ……本当はね、あの後にどうやってこの世に戻って来れたのか、ちゃんと思い出して覚えているよ。

 でも、言わない。

 このことを言ったら、絶対に否定されるから。

 妄想や、“嘘”と思われて言われてしまうから。

 だから……言わない。

 わたしだけの“真相”として、わたしの中で秘めておく。

 それが、一番良いことだとわたしは思うから。

 でもね……?


「じゃあ、わたしが今言った女の子はなんなのさ!?」

「アンタの妄想から出来た架空の人物」

「違うもんっ!

妄想じゃなくて、せめて空想って言ってよっ!!」

「じゃあ、その女の子とやらの特徴を言ってみな」

「うんっ! えーとねぇ……」


 ……あれ?


「どうしたの?」

「……今まで覚えてたのに、特徴言おうとしたら分かんなくなった」

「……無理して思い出さなくても良いし、思い出せないからって嘘言うこともないからね」

「……ちょっと待って」


 何で今まで憶えてたのに、急に分からなくなって言えなくなった?

 何でも良い……。

 女の子の特徴を思い出せ……。

 何気なく、わたしは病室の窓を見た。

 病室の窓からは、キレイな青い空が見えた。

 ……青?


「あ……」


 そうだ、思い出した。


.

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