リハビリ③

 .





「……あっ、あのっ?」

「さくらちゃん」

「はひっ!?」


 わたしが口を開くと、理学療法士さんがわたしの名前を呼んだ。

 わたしはビックリして変な声が出てしまった。


「ちょっと、右手で俺の右手をギュウ~って、力入れて強く握ってみて」

「……はい」


 ワケが分からなかったけど、わたしは理学療法士さんの言う通りに右手で理学療法士さんの右手を強く握った。


「もうちょい強く握れない?」

「これ以上は……無理……」

「……なるほど」

「………?」


 わたしが『無理』と言うと、理学療法士さんはわたしの右手から、自分の右手をそっと離した。


(何っ、一体何なのっ!?)


 わたしの中の不安メーターのめもりが少しずつ上がっていく。


「あ、いきなりごめんね」


 わたしの考えが分かったのか、理学療法士さんはわたしに謝ってきた。


「今、さくらちゃんの握力がどれくらいか、握手して自分の手で測ってたんだ」


 あぁ、なるほど。

 わたしの不安メーターのめもりが少しずつ下がっていく。


「それで次は握力計を使って、さくらちゃんの握力を調べたいんだけど、良いかな?」

「はい」

「じゃあ今、握力計を持って来るからちょっと此処で待っててね」

「はい」


 理学療法士さんは、握力計を取りに一回わたしの前から去って行った。

 わたしはただボーッと待っているのは飽きるし、嫌なので周りを見渡して、リハビリセンターでリハビリを受けている人を見た。

 やっぱり病院とあって、リハビリを受けている人の年齢はバラバラだった。


「ん?」


 そうやって、リハビリを受けている人たちを観察しているとその中の一人と目が合った。

 わたしと同い年くらいの男の子だった。

 男の子はわたしと目が合うと、ニコッと笑ってまた自分のリハビリに一生懸命励んでいた。


(……すごいなぁ~。あの男の子、何でリハビリを受けているんだろう?)


.

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