禁忌題目の簡易プロット Ver.3.0(筆者作成)
『日常生活に溶け込む「顔」の怪異(仮)』
[ジャンル]現代オカルトホラー
[テーマ]安定していると思われている日常の脆弱さ
[一行ログライン]
「強迫観念を植え付ける」顔の怪異により、悪徳ライターは究極の選択を迫られる
[起]
交際相手を調理して食べる猟奇殺人が発生。捕まった犯人Aは「顔の化け物の幻覚にやらされた」と不可解な供述をする。過去の事件に酷似した内容の供述をした犯罪者らがいたと気づいた主人公。彼は金に汚い悪徳ライターで、美人ながら社会不適合者である妹を養っている。二人は小銭稼ぎのネタになると踏んでその事件の調査を開始。Aと面会を重ねていくうち、主人公の妹は「顔の怪異」の幻覚に苛まれ始める。
[承]
過去に暴行事件を起こし「顔の怪異」の供述をした元犯罪者Bを発見、脅して次の内容を聞き出す。「顔の怪異」は適正がある者に伝染する。幻覚が視え始めるとやがて「抗うことが出来ない強迫観念」が出現する。強迫観念の内容は人によって千差万別ながら当人の無自覚な願いに関連性がある。Bは「目が合った人に暴力を振るって怯えさせないといけない」という強迫観念に駆られて事件を起こした。Bが後に自ら両目を潰したのは、強迫観念から逃れるにはそうするしか無かったからだと言う。
[転]
やがて妹に「自傷行為」の強迫観念が出現。主人公は妹の強迫観念を消す方法を見つけるため「顔の怪異」の出処を探し回り、やがて壊滅した自己啓発カルト団体の廃墟の書庫に行き当たる。元々「顔の怪異」はある古い土着信仰で「私は〇〇する、と神に誓いを立てると、それを成し遂げるまで神が手助けする」というものだったが、カルト団体が悪用しはじめてから現在のような強迫観念の呪いに転じたらしい。零落し信仰されなくなった「顔の怪異」の神を鎮めるため、主人公は手段を尽くす。
[結]
有効と思われる最後の手段も効果は薄く、妹の強迫観念は常軌を逸していく。追い詰められた主人公は「顔の怪異」に誓いを立てる。「妹の強迫観念を消すためにどんなことでもする」、と。その日から主人公は「顔の怪異」が視えるようになり、「妹の強迫観念を抑えるのと引き換えに、『顔の怪異』の感染者を増やす手伝いをしないといけない」ことを理解する。これがただの無意味な強迫観念ではなく、効果も伴うことを祈りながら、主人公は「顔の怪異」の犠牲者を増やしていく。
※改善検討事項
・だいぶ形になってきたのでは?
・後味も前ほど悪くなく、突飛さも抑えられている
【筆者メモ】
2023年1月3日未明。
私は絹澤正樹氏へのインタビューを終えてから、クリスマスらしいクリスマスも過ごすことなく、簡易プロットの第三弾の作成に試行錯誤していた。外に出る時と言えば、必要最低限の生活費を稼ぐための仕事に向かうか、もしくは通院のいずれかというほどだった。(そのころから原因不明の目眩と睡眠障害が悪化し、常に視界の隅に違和感を覚えるようになり悩んでいた)
およそ正月に似つかわしくない状況で出来上がったこのプロット第三弾だが、一晩寝かせて落ち着いてみても中々に会心の出来ではないかと自画自賛の思いは消えなかった。やはりあの実地取材が刺激になったというか、功を奏したのだろう。
担当編集者の佐藤氏には、近況がてら「絹澤匠の伯父へのインタビューを行ったこと」「そこから今回の着想を得た」旨もそれとなく書き記しつつ、このプロットのデータをメールで送り付けた。
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