ある大学生の裏アカウントの投稿
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たく @kaoga-miteiru ·2018年6月19日
大学いこうとすると息が苦しくなる
たく @kaoga-miteiru ·2018年7月1日
今日もやりたくないことをやらされてる
たく @kaoga-miteiru ·2018年7月3日
今日も今日とてやりたくないことをやらされてる
たく @kaoga-miteiru ·2018年7月7日
やりたくないことをやって、やりたくないことをやって、やりたくないことをやって、それが普通だっていうの? 本気で苦しいんだって言ってるじゃん
たく @kaoga-miteiru ·2018年7月10日
明日もきっとやりたくないことをやらされてる
たく @kaoga-miteiru ·2018年7月21日
ちがうんです僕はもともと走りたくなんてないのに勝手にやらされてるんです楽しくともなんともないずっとずっと苦しいだけで早く終わってほしいと思ってて
たく @kaoga-miteiru ·2018年7月28日
部活やめたい ほんとにしんどい やめられません スポーツ推薦だから? いいえそうでなくともやめられません 言おうとしても言えない 絶対に
たく @kaoga-miteiru ·2018年8月2日
いや学生記録塗り替えたってなんにもうれしくないよ ほんとに苦痛に耐えてるだけなんだからさ 走ってる最中まじで早く終われとしか思ってない
たく @kaoga-miteiru ·2018年8月7日
ぼくは小さい頃から狂っていたなんでぼくなのか全部あなたたちのせいなのに顔は今日もかわらずぼくをみて笑っている苦しいいやだいやだいやだ
たく @kaoga-miteiru ·2018年8月21日
子の言うことをしんじられないならあんたらは親じゃないでしょ
たく @kaoga-miteiru ·2018年9月4日
きえろきえろきえろきえろ こっちをみるな
たく @kaoga-miteiru ·2018年9月26日
どうしよう 先輩に気味悪がられてる? 見られたかも
たく @kaoga-miteiru ·2018年9月29日
真剣に相談乗ってくれた うれしすぎて涙出た
たく @kaoga-miteiru ·2018年10月6日
ストレスのもとを断てば、幻覚は収まるそうです
たく @kaoga-miteiru ·2018年10月7日
顔のことはどうしようもない 陸上もやめられない ならアイツらか
たく @kaoga-miteiru ·2018年10月7日
わんちゃん殺すか なんてね うそうそ 通報しないでね
たく @kaoga-miteiru ·2018年10月30日
今日もまた喧嘩になった 信じられないならもういいよ
たくみ @kaoga-miteiru ·2018年11月9日
うーん あんずるよりもうむがやすし?笑
【筆者メモ】
2022年10月、ネットでのネタ探し中にて発見。
前述の絹澤匠の事件が気になって調べていたところ、ネット上に晒されていた絹澤匠の個人情報や彼のものと思われるSNSの裏アカウントにたどり着く。
絹澤匠は幼少期からスポーツ教室に通っており、小学校から本格的に陸上競技を開始。高校時代には学生記録に名前が残るほど優秀な選手だった。家庭環境に問題があったようには見えず、かなり早い段階からスポーツ教育に力を入れていたこと以外はとりたてて特筆すべきことのない普通の家庭だったようだ。
この記録からは、絹澤匠は大学進学を機に、以前より悩まされていた幻覚症状が悪化したのか、精神的に不安定になっていったことが読み取れる。絹澤匠はその悩みを伝えていたものの両親はまともに取り合わなかった、というのは記事にもあった通りだった。
どういう状況であれば、親は幻覚症状を訴える子どもに何の対応もしないのか。
普通なら心療内科なり精神科なりにかかるだろう。親が世間体を気にした? それとも子どもに通院を許すと治療のために競技から離れるかもと惜しんだ? 子どもにしか見えない幻覚を信じられなかった? いずれもしっくりこない。
そうなっておかしくなさそうな状況を、私はしばらく脳内で組み立てていた。
そして思い至ったのは、正常性バイアスが働いた、という可能性だった。
もしも絹澤匠が――それこそ幼い頃から己の幻覚症状について言及しているような子だったなら、大人になって今更親に訴えても「いつものことでしょ」「今まで大丈夫だったんだから気にしないの」という反応になる、かもしれない。そこまで想像が進んだあたりで、絹澤匠のことが妙に引っかかった原因に気づき、驚愕する。
2018年、逮捕時に二十歳だった。
ならば2001年に三歳であっておかしくない。
千葉県の松戸市に在住し、絹澤匠――「たくみ」という名前。
彼の母親である絹澤弘子のイニシャルはH・K。全てが合致していた。
両親を殺害した絹澤匠。彼は、2001年にママ友掲示板に投稿された、何かの「顔」を怖がる幼児「たっくん」と同一人物である可能性が非常に高い。
本当に、彼は幼少期からずっと顔に関連する幻覚に苛まれ続けていて、どうにもならなくなるくらいに追い詰められた果てに両親を殺してしまったのだとしたら。
人を破滅に追いやってしまう幻覚症状。
まるで物語の中の怪異じゃないか、と思った。
現実的な日常に隠れるオカルトの香りがするものを、他の誰でもなく自らの手で見つけ出したことに――不謹慎ながら、正直なところぞくぞくとした。
この発見は上手く活用すれば素晴らしいアイデアになると思い、担当編集者への提案一覧に加えておくことにした。
それが全ての始まりだった。
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