バージョン違い

 またさらに他のニュースサイトに飛び読み進めて行くと今度は”森村ブレンド”ではなく”森村バージョン”のコーヒーがあるという記述に気付く。


 ここ玉川珈琲俱楽部の濃く苦めのコーヒーへ濃度の高いミルク、更に砂糖を入れて出来上がった森村バージョンのコーヒー。これの上澄みを彼の人は楽しんでいたというのだ。


 となれば森村ブレンドは無いとしても、森村バージョンのコーヒーは再現出来るという事ではないか。


 折角ここに来たというのに、思った物を頂けずに失意のままに帰るという事はしなくて済む。


 であるならば私の稚拙な事前調査による損失は、彼の人の飲み方を真似する事で何とかすんでのところで回避されたようだ。


 私は意を決して奥の調理場にいる先程の店員さんに向けて手を挙げつつ「すいません」と声を上げると、店員さんはすぐさま「はい!」と返事を返しカップル達の合間を縫って私の元に駆けてくる。


「えっと、フレンチローストのやつお願いしたいんですけど、こくゆたかブレンドで大丈夫ですか?」


「ええ、フレンチローストでしたらこくゆたかブレンドで大丈夫ですよ。」


「ああよかった、でしたらこくゆたかブレンド1杯お願いします。」


「承知いたしました。こちらお砂糖ミルクはいかがいたしますか。別皿でお持ちしますがご入用でしょうか。」


「はい、ぜひお願いします。」


「承知いたしました。では少々お待ちくださいませ。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る