第16話 村沢もバズった

 村沢とダンジョンに行ってから2週間が過ぎた。俺はぼちぼちと取材やら有名人らしい行動を取っていた。村沢とは会う機会を失っていたのだが、ある日のことだった。村沢が動画サイトのURLを貼り付けてきたのだ。俺はとりあえず開いてみると、村沢の姿があった。サムネイルには文字があり、それなりに編集もされているようだ。動画を観てみると、村沢が言い訳をしながらモンスターを倒す姿が映っていた。撮影しているのは誰だろう、とは思ったが、村沢の友人だろうか。話が八割で、二割がモンスター退治だった。二層にいるドレインバッドを倒している姿は特別に面白くはないのだが、漫談は笑えるものだった。動画のURLの下にもメッセージがあった。


「広めろ」

「嫌だよ」 


 俺は思った通りに返信をした。すぐに村沢から返信が届く。


「お前も出ろ」

「どう考えても、お前のためにしかなってない」

「登録者数が1000も行かない。お前とコラボしたら絶対に伸びる」


 登録者数は850人前後だった。始めたのが2週間前だから、勢いのあるチャンネルだとは思うのだが、村沢にとっては不服らしい。


「2週間で850はすげえんじゃねえのか?」

「何百万のやつに言われても」


 嫌味なやつだな。


「わかった。西園寺さんとコラボをするから」


 村沢はそのようなメールを送ってきた。次の日になると新しい動画が挙がっていて、動画を再生してみると、ところどころで、「コラボしませんか?」とコラボを求めていた。ちなみに村沢のプロフィールにはしっかりと西園寺ファンと明記されていた。そして、嫌いな動画配信者に新川哲也と書いているのだ。これ、ネタと思わなかったら、叩かれやしないのだろうか。まあ、キャラクター的に村沢は明らかに男受けがいい。俺のアンチも混ざっているのかもしれない。


 それから村沢のチャンネル登録者は右肩上がりで伸び続けた。コラボをすることはあるのだが、明らかに村沢と似たようなモテなそうな男配信者との協同が多く、一向に西園寺とコラボはできずにいた。そして噂というか、村沢と俺を繋ぐ話がチラホラと流れ始めたのだ。


 新川哲也の裏話とか、動画は観ないがサムネイルを見かけることはあった。その中に村沢の画像と俺が一緒になっているものがあった。俺はエゴサをする気はないので、見ることはなかったのだが、いつの間にか、村沢は西園寺とコラボをすることになっていたのだ。


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