第10話 王子少女はお揃いにしたい!

「『花』と『風』の弱みを解消して、こちらに取り戻す」

特に、『花』はうちの村があるし、ミソラさんも実家だ

弱みと言ってるけど、何が起こってるのか気になる…


「どちらも取り返せたら、戦力的にこちらの方がかなり上になる

 彼らも内戦なんて起こすより、違う方法を考えると思うわ」

そのための、視察という名の時間稼ぎ


「王子が見つかればいいのだけれど、『雪』が何かやったようだし、期待はできない…」

「……」

王子は無事なんだろうか…

ありえそうなのは、不意打ちで始末した、毒を盛ったとか

あれだけ驚いてたし、もうこの世にいない可能性も…


「そ、それでセッカちゃん…大変申し訳ないのだけれど……」

ミソラさんが土下座の体制に入ろうとするところを、慌てて手で止める


「だ、大丈夫ですよ、やりますから!王子様!」

「え…?い、いいの?!」

「何度も頭を下げてもらうのは、流石にこっちが申し訳ないです」

のっぴきならない状況なのは、よくわかった

ここで私だけ逃げるわけにはいかないだろう

…ホントはめちゃくちゃ逃げたいけど…!


「そのかわり…全部解決したら、最後に一つ、私のお願いを聞いてもらえますか?」

自分の口に人差し指を当て、ウインクをする


「え、あ…えっ…」

「何で顔赤くなってるんですか?!」

今の台詞の一体どこに、恥ずかしがる要素が…?


「こ、これはアレよね?!最後に『お前が欲しい』って言われるやつで…」

「そんな事言いませんよ?!」

「『ひかやみ』の外伝10に、似たようなシーンがあったじゃない!

 傭兵に払う財産が無くなったお姫様が、最後に言われるやつ」

「そ、そこまではフォローしてないですよぉ」

本編は全部読んだんだけど、そこまで熱心なファンじゃないし…


「だからまあ、後払いでいいので、今は気にせず使ってもらっていいですよ」

にっこりと微笑む私


「セッカちゃん…あなたひょっとして、天使か何かかな?」

「そんなおだてられても~」

近所のおばちゃんがよくやってる『やーねぇ』のポーズをする

でも私、褒められるのは大好きなので、もっと褒めるといいと思います!


「あ、ところどころでスイーツを挟んでもらえると、私のやる気が急上昇ですよ!」

「ええ、了解よ!次は一緒に食べ歩きとか行こう!」

都会で食べ歩き…楽しみだなぁ

村では同い年の女の子、いなかったんだよね

仲のいい友達と一緒に…っての憧れてたんだ



「あ、そうそう、食事の事なんだけど…」

そう言って、ミソラさんは自分のカバンから、怪我をした時に使う包帯を出してきた


「包帯ですか?」

「これを腕に巻いて欲しいの」

あ、これは…


「おそろいですか?!」

「お、おそろい?!」

「闇の軍師『みーさん』もつけてましたよね、包帯!

 腕から闇の力が漏れ出すから、封印してるんですよね!」

「そうだったわ!自分もつけてた!」

あれ?ペアルックの申し込みじゃない…?

お友達と一緒の格好、いえーい!って事かと思ったのに


「そ、そうじゃなくてね」

赤くなって否定するミソラさん

…この闇の軍師、よく赤くなるなぁ

赤の軍師って名乗っても、いいんじゃないかな?


「ほら、セッカちゃん、貴族の作法とか急にやれって言われても無理じゃない?

 他の人のやる真似してみても、違和感は出ると思うのよ」

まあ、確かに…


「そこで、こう包帯巻いておけば

『ああ、怪我してるから所作がちょっとぎこちないのかな?』って

 相手が勝手に思ってくれるって寸法なのよ!」

「なるほど…!」

ずっこい…!でも頭いい……!


「ミソラさんって、詐欺師の才能ありますね!」

「それ褒めてないからね?!」

私は早速、もらった包帯を腕に巻き、彼女に見せつける


「おそろいー♪…えへへ」

これで私も闇の軍師!

お友達と一緒の格好だぁ


「……はぅ」

…あれ?ミソラさんがなぜかまた赤くなってる

やっぱり彼女は赤の軍師じゃないかな!

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