日本人は海外でモテる? 2

 多くの日本人は外国人と交流する経験が乏しく、それ故に多くの外国人に対するステレオタイプを持っている。「アメリカ人はみんなポジティブシンキング」とかそういったものだ。インターネットとSMSの発展により誤解を含むステレオタイプは少しずつ訂正されつつあるが、未だ根深く蔓延るもののも多くある。


 そしてそれは海外でも同じだ。多くの国では日本人に対する根強い、そしてネガティブなステレオタイプがある。多少は会話を経て真実を伝えることで誤解が解けるしそれで危ない目に遭うことなどないから、そこまで身構えなくてもいい。ただ女性達は気を付けるべき点がある。恋愛だ。


 海外に長く住んでいる日本人女性達はすでに知っていると思うが、海外にはアジア人好きの男性が一定数いる。これは単にアジア人特有の外見が好きとか、アジアンビューティーが好みとかいう嗜好の問題ではない。彼らはアジア人女性の「特徴的な性格」が好きなのだ。


 どういうことかというと、海外には「アジア人は真面目、勤勉、従順、自己犠牲的」と言ったイメージがある。実際長時間労働の現状や「過労死」という言葉は世界で有名だ。そして未だに男尊女卑的な文化に習っているアジアの現状から「アジア人女性は男性に付き従い、従順に男性の世話をする」「理不尽な振る舞いを受けても文句も言わない」「仕事も家事も子育てもすべてこなす」「過酷な環境でも逆らわない」とこういったイメージを持たれている。確かにその通りだとも思う。

 

 不満があればすぐデモを起こすフランスや、職場環境を改善しろと訴えるために職員全員がストライキを起こすカナダや、女性がいなかったら何もできないだろと男性達に思い知らせる為に多くの女性が一斉に出勤拒否したメキシコなど、多くの国では過酷な環境や悪質な搾取に皆黙っていない。


 素晴らしいと思う。日本もこうなれば、と何度も思ったが現状不可能だろう。そして今でも多くの国民が厳しい労働環境と低賃金の中、体に鞭を打って働いている。そんな中日本政府はさらに増税しようと目論んでいるようだが、それを非難することはあっても、政府の意向を変えるために出勤拒否などのストライキに走る日本人はいないだろう。


 何が言いたいかというと、日本人のこういった自己犠牲的な勤勉さは、海外のクズ達にとってはかなり都合がいいということだ。

 海外留学をすると、みんな「あの人海外でいい人を見つけるんじゃない?」「彼氏作っちゃうんじゃない?」「あっちで結婚しちゃうんじゃない?」「そしたらもう日本に帰ってこないでしょ」と噂される。実際私もそう言われたし、そしてそれらは現実となった。ただ、私の夫はこれから記載するようなクズではないことはあらかじめここで言っておく。


 私がカナダでよく聞くのは、白人好きの日本人女性とアジア人好きの白人男性が知り合いカナダで結婚する、という形式の恋愛だ。ハーフで美形の子供が生まれることである種のステータスを自慢げに披露する人もいるかもしれない。ただ現実はそう甘くない。そういう日本人女性の多くが、クズな白人男性を捕まえてしまっているからである。

 

 クズというのはそのままの意味だ。仕事をせず、家事もせず、育児もせず、遊び歩く。中には40代、50代のいい大人であるにも関わらず自分の親から仕送りを貰っている人もいれば、金を持っている日本人妻の両親から搾取する人までいる。

 そういう人達は性根がそうなっている。学歴の有無に関わらずそもそも働きたいと思っていない。働かなければとも思っていない。楽して他人から搾取して生きていたいと思っている。海外の女性達はそう言った男を簡単に切り捨てる。皆個人主義なので日本人の「自己犠牲的な国民性」など持ち合わせていない。しかし多くの日本人女性はある程度の苦行は我慢し「こんなものか」と耐えてしまう。そしてなんでもやってしまう。責任感の強さが裏目に出る。無職の夫の代わりに仕事をし、家計を支える。家事をしない夫の代わりに家事をし、育児をしない夫の代わりに、、、、と言った形で最終的にすべてを妻が担うことになる。ワンオペ万歳。こうなればクズ達の思う壺だ。

 

 そして憎たらしいことに大抵こういうクズ達は口がうまい。耐え切れなくなった日本人妻が文句を言っても、彼らは言葉を変え、話題を変え、論点をすり替え、最終的には「お前が悪い」と妻に罪悪感を植え付けるのである。クズ夫の本性に気付いた妻達も実際こういった口のうまさに丸め込まれる。おまけに子供もいるから離婚できない、とクズ夫の愚痴をこぼすのみで搾取される生活を続けるのである。


 私は幸い、日本を発つ前にこういった現状を知り合いから教えてもらい「気をつけろ」と釘を刺されていた為、きちんとした相手を見つけることができた。しかし、詳しいことは書けないが、こういった状況に陥っている典型的な「クズの白人夫と献身的なアジア人妻」という家庭を目にしたことがあり、戦々恐々とした。これが、かの有名な、あの、あわわ、と唇が震えそうになる、まさにそんな夫婦だった。

 この夫のクズっぷりはここでは書ききれない。アラビアンナイトの如く、1001夜に渡って語れそうなくらいに、多くのクズエピソードがある。その家には子供がいるが、搾取されるアジア人の奥さんとその娘さんには深く同情する。


 そしてこれは日本人のみの話ではない。上記でも「アジア人妻」と表記したように、中国人、韓国人など、他のアジア人の間でも同様の被害報告がある。そして悲しいことにこれはカナダにとどまらない。アメリカでも、他のヨーロッパの国でもこのようにアジア人女性を無料で使える都合のいい家政婦、と利用しようとするクズ達はいる。そして被害報告は尽きない。


 前回のエピソードでは、「日本人が海外でモテる」という噂に対し念を押した。ナンパされて喜ぶ日本人女性に釘を刺した理由はここにある。アジア人女性が海外でモテるのは決して女性として魅力があるからではない。勿論そういった場合もあるが、現状を鑑みるにアジア人の国民性が搾取に都合がいいから、という場合が多い。実際「アジア人が好き」という言葉も冷静に考えると意味がわからない。アジア人だろうが、ヨーロッパ人だろうが、カナダ人だろうが、どこの国の人だろうが、結局は性格は人によるのだ。礼儀正しい、勤勉なカナダ人もいる。クズな日本人だっている。それをすべて無視して国籍や人種で人を好きになるなど、その意図は図りかねる。


 実際に私は「日本人だから」という特殊な理由でナンパされたことがある。地下鉄の駅で電車を待っていた時に白人男性から声をかけられたのだ。

「君、日本人?」

「そうだよ」

「いいねえ、俺日本人好きなんだ」

 この時点で私は身の毛がよだつ思いがした。何故かはわからない。でも直感でこいつはやばいかも、と思ったのだ。

「なんで日本人が好きなの?他の国の人でもいい人いっぱいいるよ」

「いや、なんでって。とにかく日本人が好きなんだ」

「変だね」

「俺、日本人の彼女が欲しいんだ」

「なんで日本人じゃないといけないの?」

「うーん、でも日本人がいいんだ」

 何度か理由を聞いても彼は答えない。答えられないのか、答えたくないのかは知らない。でも彼の様子からは異常な何かを感じ取った。ちょっと前まで「ナンパされた!わーい!」と頭のてっぺんに花が咲く勢いで喜んでいた私はここで違和感を感じたのだ。こんなアホでもわかるほどの強烈な違和感。ほんの少し会話しただけで、この人とは関わりたくないと思わせる何かを彼は放っていたのだ。ちなみに彼はイケメンだった。日本人が描く、典型的な美形の白人。でもこの時の私は、彼の美しい顔よりも彼から放たれる違和感の方に慄いていた。

 私に夫がいることを伝えると、彼はさっといなくなった。彼とは別の車両に乗り、離れられたことに安心した。それほど彼は異様な雰囲気を放っていたのだ。


 私は幸運だったと思う。数打ちゃ当たると言わんばかりのナンパで喜ぶ空の頭を持ちながら彼の違和感に気付けたのは、すでにそういったアジア人搾取に関する情報を知人から得ており、実際にクズ夫を捕まえたアジア人妻の惨状を目の当たりにしたからだ。こういったクズ男に関するセンサーが働いていたのだと思う。


 だが、留学やワーホリで来る海外に来る日本人女性はそうではない。その多くが外国人にある種の憧れを持ちながらキラキラした目をして異国に降り立つのである。そして彼女達の目にはこういう輩を警戒するフィルターがなく、運悪くクズを捕まえてしまった女性達のその後は悲惨な物語を辿る。多くの日本人は知らないと思うし、信じられないと思う。ただ海外では本当に有名な話で多くの人が知っているのだ。定説があると言っても過言ではない。


 これをどれくらいの人が読んでくれるかはわからないが、もし目にする人がいたら、もしこれから海外に行きます、という人がいたら、どうか気を付けてほしい。私の、アホで、承認欲求に飢えた惨めな姿から学び、搾取される女性達の二の舞を踏まないでほしい。

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