第174話 魔女、今後の方針に迷う

 吸血大陸から戻ってきてから数日の間、ひたすら強化ガラスを作っていた。ちなみにガラスは錬金術で作ったので実際の材料とは違う。


 この世界にはガラス草というものがありそれを材料として使っている。本来なら珪砂、ソーダ灰、石灰で作れるのだけど、ガラス草があるためにそちらの作り方は普及していないみたいだ。


 とはいえ私が知らないだけで、それらの材料を使って作っている国もどこかにあるのかもしれない。思いつくのはやはりドワーフがいる国だろうか。そのうち行ってみたいとは思っている。


 確かドレスレーナ王国の北側にある砂漠地帯の地下にドワーフの王国があると師匠の家にあった書物で読んだ記憶がある。ただ古い書物だったので今も健在なのかと聞かれるとわからない。


 ガラス作りが終わりシオンに渡した後は、リーザとシーボルトの街を散策しながら久しぶり大人買いをした。吸血大陸にいた間に消費した分の補充になるのだけど、今回は海産物が多いのでこれはこれでいいと思う。



「エリーさま、こちらをティッシモ様からお預かりしております」


 冒険者ギルドにリーザを案内するついでに寄った得にティッシモからの手紙を渡された。


「リンダありがとう」


 相変わらずシーボルトの冒険者ギルドは閑古鳥が鳴いている状態だった。そんなか受付のリンダは相変わらず暇そうにしていた。


「ふむ、ティッシモとはエリーのいい人か?」

「違う違う、知り合いの息子よ。流石に一月以上ほったらかしにしていたからね」


 手紙を読むと、なんだがポエミーな言葉で旅立つと書かれていた。そもそもディーさんから私に同行するように言われていたようだけど、どういった目的で同行するようになったのか聞いてない。ティッシモはエルフとしてはまだ若いし、私もまだまだ生きるつもりなのでそのうちばったりど何処かで再会できるだろう。


「それで依頼関係は相変わらず?」

「ですね。ここは海運ギルドがメインですからね」


 ここの冒険者ギルドは相変わらずのようだ。


「リーザも冒険者登録しておく?」

「しても良いのか?」

「大丈夫だと思うよ」

「ええ、大丈夫ですよ。ここじゃあ子どもも海運ギルドに行きますけど、冒険者ギルドに登録するのに年齢制限はないからね」


 確かにダーナの街でも、他の街やドレスレーナの王都でも子どもが冒険者として仕事をしていた。ただしリーザが冒険者登録をしても意味がない気もする。リーザの見た目は十二、三歳なので、このままだと年齢制限でシルバーランクまで上げることが出来ないはずだ。


 でも小人族とでもしておけば見た目が若くても問題なのもしれない。


「ねえリンダ。リーザをシルバーランクにしてあげたいんだけど、権限を持っていたりする? ここって分所かなんかだったよね?」

「一応ありますよ。でもこの子ってどう見ても子どもですよね」

「見た目はね」

「訳ありですか」

「まあそんなところね」

「わかりました。ただしちゃんと依頼をこなしてシルバーランクになる条件をクリアしていただきますよ」

「ということだけど、リーザはどうする? 別にリーザには冒険者カードは必要ないと思うけど」

「ふむ、持っていればなにか良いことがあったりするのか?」


 リーザは少し考えるようにしてからそう聞いてきた。


「シルバーランクになりますと、登録した街以外の入場税が必要なくなります。それと関連して、シルバー以外の方が他の街で冒険者をするのなら改めてその街で登録する必要がありますね」

「それだけなのか?」

「それだけといえばそれだけですね。街への出入りが頻繁なら入場税も馬鹿にならないですからね」

「ふむ、なら作らなくて良いな。エリーにお金の負担のしてもらうのは申し訳なくは思うがな」

「別にいいけど。まあリーザが冒険者登録をしてシルバーになったとしても、その見た目じゃあ逆にややこしくなるかも知れないわね」


 結局リーザは冒険者登録をしない事になった。実際に必要かと言われると今は必要ないと思う。何らかの騒動でもあって有名になったとかでもない限り、見た目十二、三歳のリーザにとっては逆にややこしいことになる。


「それじゃあ帰るわ。手紙ありがとうね」

「いえいえ、またのお越しを」


 リンダとわかれてリーザとともに冒険者ギルドから外に出る。


「それでエリー、この後はどうするのじゃ?」

「どうしようかな。その辺りはアダルと相談かな。もう一度吸血大陸へ行って、王城の地下にある転移装置を使うかこの大陸を巡るか。もしくは船で他の大陸を探してみるっていうのでもいいね」

「妾たちがいた大陸ならここより東に向かえばいつかはたどり着けるであろうな」

「東にあるのね」

「うむ、ただ距離まではわからぬ」


 ここから東と言っても、東にもこの大陸が続いている。その端まで行って船で海を渡るというのはあまり現実的ではないし、ここから転移装置を使って吸血大陸に行くほうが楽だろう。


 それにここから吸血大陸に行く転移装置があったわけで、この大陸の他の遺跡にも生きている転移装置があるかも知れない。それを見つけるのもいいかも知れない。それに関してはアダルの持つマスターキーでどうにかなるのかはわからないけど、その辺りも含めて一度アダルと相談する必要があるだろう。


 問題はアダルは船での移動になるので、仮に転移装置がある遺跡が内陸にあった場合わかれての行動になりそうなことだろうか。

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