　久しぶりにダーナの街に来ている。何年ぶりになるのかな、北の門にはジョシュ兵長は引退したらしくていなかった、代わりにギースが兵長になったようだ。髭をはやしていて似合わないと爆笑したら怒られた。

　街門を通って街の中に入ると、相変わらず屋台が並んでいて賑わっている。特に寄り道もせず、まっすぐと宿木亭に向かうと宿の外で掃き掃除をしているニーナちゃんを見つけた。

「ニーナちゃん久しぶり、元気にしてた」

「あっ師匠、本当に久しぶりですね、それといい加減ちゃん付けで呼ぶのやめてもらえませんか」

　目の前のニーナちゃんは、初めてあった頃から成長して実は一児の母となっている。

「あはは、それでリーシャとクライスは元気してる？」

「ふたりとも元気ですよ、クライスは厨房にいますし、リーシャは教会教室に行ってます。それより今日は工房に泊まりますか、師匠がいつ戻ってきても良いように掃除はしていますけど」

「それじゃあそうしようかな」

「晩御飯は食べに来てくださいね、腕を振るいますからクライスがですけど」

　お茶出しますねと引っ張られるように宿の中に入る。ここはいつ来ても変わらないね。厨房にいるクライスと挨拶を交わして、ニーナちゃんが用意してくれたお茶を飲む。

　なぜだかニーナちゃんは料理の才能だけは持ち合わせてなかったりする。料理も分量さえ間違えなければ薬学と同じような気がするのだけど、料理だけは壊滅的に駄目らしい、ほんと謎だ。

「そう言えば大将とアーシアさんは？　厨房をクライス一人に任せるようになったの？」

　そう聞くとニーナちゃんが顔をうつむかせて黙ってしまう。えっもしかして大将とアーシアさんになにかあったの？

「お父さんとお母さんは……」

「おう、エリーか久しぶりだな」

　その声につられて振り向くと宿の入口には、白髪になっているけど体型は相変わらずムキムキな大将と年をとっても綺麗なままのアーシアさんが立っていた。

「えっと、大将？　生きて？」

「おいおい、人を勝手に殺すな、まだ死ぬような年でもねーよ」

「えっ、でも今ニーナちゃんが」

　ニーナちゃんの方を向くと、俯いたまま肩を震わせて笑っている。

「ニーナちゃん、これはどういうことなのかな？」

「何の事ですか？　ただお父さんとお母さんは買い出しに行ってるって言おうとしただけですよ」

「くっ、この子は一体誰に似たんだか」

「それは確実に師匠ですよ」

「エリーに決まってるだろ」

「エリーさんの影響ですよね」

　ぐぬぬぬ、解せぬ。

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