第14話 魔女、ギルドで依頼を眺める
ん~、良い目覚めの朝だね、外はまだ日が昇り始めたばかりか少し暗い、お腹にはまだ昨日の食事が残っている気がする。ささっと服を着てローブを羽織ると階下へ降りる。
「大将にアーシアさんおはようございます」
「おうおはよう、エリーか早いな」
アーシアさんは口の動きを「おはようございます」と動かしている。
「エリーさんおはようございます」
「ニーナちゃんおはよう、朝からお手伝いかな」
「はい、パパとママのお手伝いをしています」
「もう何この子、良い子すぎないですか」
ニーナちゃんに抱きついて頭をいいこいいこと撫でる。
「あはは、くすぐったいですよエリーさん」
「エリーそれくらいにしておけ、それで朝はどうする昨日の残り物でいいならすぐ出すが」
大将に襟首を掴まれ引き剥された。
「まだお腹に昨日のものが残っている感じなんですよね、できれば朝の分をお弁当にしてもらえませんか?」
「まあいいが大したものは出来ないぞ」
「料金は払いますよ」
「いらん、朝の分と相殺とでも思っておけ、ちなみに弁当を持って何をするつもりだ」
「ならそうさせて貰いますね、ちょっと今日はギルドで依頼を見てから、街の南と東を散策しようと思ってまして」
「分かった少し待ってろ」
「それじゃあその間に裏の井戸借りますね」
大将の了承を取り裏から外に出てポンプで井戸水を出す。誰が広めたのか知らないけど辺境にまで井戸ポンプが普通に有るんだね。あの朽ちた街にはそれらしい物がなかったから、ここ200年の間に広まったという事なんだろうね。顔を洗ってさっぱりした所で中に戻りお弁当を受け取る。
「他の方たちはもう出たんですか?」
「そんなわけねーだろ、多分あいつらは昼にならないとまともに起きてこねーよ」
「その心は?」
「あれだけ飲んでりゃそうなるってもんよ、何度か見ているってのも有るがな」
「大将も結構飲んでいた気がするんですけど大丈夫ですか?」
「あん、あの程度じゃどうにもならねーよ」
ミランダさんやサーラにギースもちゃんとセーブして飲んでいたようで大丈夫なんだとか、ちなみにサーラとギースそれとガーナ、サマンサ、ミランシャの3人は敬称いらないということになりました。
酔っ払ったガーナに絡まれて「冒険者はなー、なめられたらおしめーなんだよ、特にオレたち女の冒険者は簡単に食いもんにされんだよ」という流れから、年も近いし敬称とかいらないとなり、その話を聞いていてサーラとギースもそれならと呼び捨てになった。うん、歳も近いからね、私永遠の17歳です。
ローブのフードを下ろしてギルドに向かっている途中で、七の鐘が聞こえてきた時間にするとだいたい七時って事かな。この時間なのに既に開いている露天もあって通りにはいい匂いが漂っている。
ギルドの中に入ると既に人がごった返している。受付カウンターを見ると既にミランダさんとサーラがいて、こちらに気づいたようなので軽く頭を下げておく。
ウッドランクの依頼が貼られている部分にはもう殆ど依頼が残っていないようだ。そしてウッドランクの依頼を持っているのはだいたい5歳くらいから10代なかばくらいで年齢層に幅があるみたい、格好は薄汚れた格好の少年少女が多いように見える。
掲示板に残っている物や既に確保されている依頼書をさらっと確認した所では、ウッドランクは街の中でできる依頼が大半のようだ、溝さらいに、作業手伝い、倉庫の整理、煙突掃除、北区、南区、東区のゴミ拾いみたいな感じかな。
この街だけなのかこの国が、なのかしらないけど小さな子どもにも仕事があるって優しい国なんだなと思う。元の世界の価値観からしたら子どもに労働させるなんてと言われるかもしれないけど、それこそ子どもであろうと自己責任が基本のこの世界でわざわざ子供にできる仕事を街ぐるみで出してくれているのは驚きに値する。
続いてブロンズランクの依頼も半分近くはなくなっているようだ、そちらは私くらいの年齢の少年少女からもう少し上の年齢までみたいだ。体が出来てきて街の外でも活動できるようになったらブロンズの依頼に移る感じかな。
依頼の内容は薬草やハーブの収集、薪集めに木こりの手伝い、採石場の雑用や採掘作業の手伝いと、この辺りは危険度の少ない依頼が半分くらい。あとは常設依頼のゴブリンの討伐にフォレストウルフやツノウサギの肉と毛皮の買い取り、持ち込まれた魔物の解体作業の手伝いなどもあった。
アイアンランクになると依頼の数に対して手に取っている人が少ない、なんとなくだけど時間が早いからかもしれない、下のランクと違って取り合う必要がなくなってきているのかもしれないね。
アイアンランクは、特定の魔物の討伐というよりも魔石の買い取りが常設依頼として有る。魔物関係で目につくのはオークのお肉の買い取りくらいかな。他には魔の森探索なんかもチラホラ見られる、どう探索するのかわからないけど珍しい素材があれば常時受け付けているのと、奥に向かう安全なルートなどが見つかれば情報を買い取るとかそんな感じみたいだ。
こうして見るとアイアン以降は常設依頼が多いように見える。常設以外には商人の護衛が多い感じかな。個別での商人の護衛依頼もあるけど大きなキャラバンみたいにまとまって遠方の街までの護衛というのが目についた。これに関しては募集期間が半月後ということですぐに締め切るタイプではないようだけど。
シルバーに関してはそのままアイアンの上位互換みたいな依頼がちらほらある感じかな? 一方ゴールドの依頼は張られていなかった、ただ単にゴールド相当の依頼がないだけなのか、ゴールドとなると指名依頼みたいな感じなのかも知れないね。
それにしてもギルドの依頼って結構適当な気がするね。この街だけなのか他の街のギルドもこんな感じなのか気になるところでは有る。
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