第4話 魔女、トリ唐で一杯する

 ここに取り出したるは、とれたてほやほやの死使鳥となります。全長5メートルほどありますので適当な木に逆さに吊るして血抜きをします。血抜きは豪快に首を一刀両断。頭は用意しておいたタライへ置いておく、死使鳥って見た目は真っ黒い鶏にわとりなんだよね、こいつの黒い鶏冠とさかは素材になるのでサクッと回収、残りの部分は掘っておいた穴へポイ。


 だいたい血抜きできたようなので沸かしておいたお湯へドボンと全身漬け込む、暫くしてから引き上げて、羽を一枚一枚抜いていくこいつの羽も色々使い道がある、なにに使うかと言うと羽毛布団とか羽毛枕にすると、死んだようにぐっすり眠れる効果がある。名前に偽りなしってことだね。


 毛を抜き終わった後は、細かい毛を焼く感じで炎で軽く炙る。そこまで終わればあとは解体して部位ごとにまとめて収納しておく。今回使うのはもも肉、一口サイズにカットして調味料に付けこみ、何度かひっくり返して味をなじませる。


 暫くそれを繰り返して、漬け込んでいたもも肉の調味料を捨てて片栗粉を放り込んで混ぜ混ぜする。そして途中で用意しておいた熱々の油にさっさと入れ込んで4、5分待ってから一度取り出して休ませる。その後もう一回全部油に入れ込んで1、2分経ってから全部取り出して完成です。


「はぁー美味しそう、お米が無いのが残念だけど」


 一個小さめなのをつまみ食い、外はパリッと中はジューシーでうまうま。出来たから揚げはまとめて収納ポシェットに入れてお片付け、さきほど頭をポイした穴へ油や必要ない部位をまとめてポイポイして埋めておく。


「よし、片付けも終わったしご飯の前にお風呂だ」


 さっそくひとっ風呂浴びて汚れを落としてご飯の準備、から揚げは多めに作ったので一食分だけ取り出してハーブや薬草と一緒にお皿に並べる。お米がないのがホント残念、旅の目的にお米探しも追加しないとね。


「いただきます」


 うん美味しい、おっと忘れるところだった。収納ポシェットから木製コップとエールの入った小樽を取り出してコップへ注ぐ。魔法でエールを冷やしてから揚げをもう一つハーブとともに食べ、そこへエールをぐいっと喉へ流しこむ。

「はぁーしあわせー」


 日本にいた時はお酒は飲み会の時以外飲まなかったのだけど、こっちに来て師匠に付き合っているうちに飲めるようになった。ラガーのビールは苦手だけどこのエールのビールは好きだ。


 気がつけば用意しておいたから揚げは全部食べきっていて、ビールも小樽が半分くらい無くなっていた。まあまだまだ在庫はあるから良いけど。ほろ酔い気分で今日はさっさと寝てしまおう。着替えを済ませ、歯磨きをすませてお布団に潜り込んで眠りにつく、おやすみなさい。



 スッキリ良い目覚めの朝だ、昨日のお酒は残っていない、酔って一回寝れば酔いが覚める体質だったりします。さっと朝風呂を済ませて設置しっぱなしの魔石を回収。今朝は軽くりんごに似た果物で済ませる。流石に朝から、から揚げはね。


 屋敷の地下へ行き設置されていた魔物避けの魔石も回収、ベッドとお布団も回収して忘れ物もないかな? 一通りチェックして屋敷から外へでて屋敷に「お世話になりました」と頭を下げ杖に座り空へと飛び上がる。


 もし再びここに来ることがあれば、魔物避けの魔石がないから魔物の住処になっているかもしれない、その時はその時だね。手に入れた地図を目安に進む方向を東に決めて移動していく。


 少し飛んだ先は普通の森になっているけど、木の密度は魔の森ほどではないので動物や魔物がいるのが見える。時々下をみて街道の跡がないか確認するけど今の所それらしいものは見当たらない。


 ぽかぽか陽気のお陰でなんだか眠くなってくる。たまに地図と方角を確認しながら飛んでいるとやっと街道らしき道が見えた。そこだけ不自然にまっすぐ木が伐採されていて街道になっている。見た感じ轍の跡が残っていることから今も使われている街道みたいだ。さてと南に向かうか北へ向かうか轍だけを見てもどちらの方向へ行ったかはわからない。


「こういう時は南かな? 寒いより暖かいほうが良いからね」


 そんなわけで進路を街道に沿って南方向へ、日が暮れそうになった所でちょっとした広場を見つけた。降りてみると複数のかまどの跡が残っている、ここはきっと行商人や旅人などが休憩するのに使う場所なんだろうね。


 ここにこういう物があるということは、ここから徒歩かもしくは馬車で進めば街があるんだろうね。この時間から無理に進んでも街に付く前に夜になるかもしれないから、今日はこのままここで一晩明かすことにする。


 食事は収納ポシェットからパンを取り出して昨日の、から揚げをハーブと一緒に挟んで、飲み物は果物を搾ったジュースを用意する。お風呂に入りたいけど、今から作るのもめんどくさいし軽く浄化の魔法で汗と汚れを落とすだけにしておいた。あとは結界を張って広場からは見えない暗がりで木にもたれかかって眠りにつく、おやすみなさい。

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