第7話 後始末

ヴェガがそう受け取った時、

彼の中で何かがブチ切れてしまい

本気の殺意が芽生えてしまった。


私闘で相手を殺してしまうなどあってはならない

ことなので、周りで見ていた誰もが最初は

そんなことになるとは思っていなかった。


だが冷静さを失ったヴェガは後先のことなど

考える余裕も無く、11567の首を掴み

締め殺そうとした。


ヴェガが殺意を込めて手を伸ばした瞬間、

11567の目付きもまたサッと変わった。


それに気が付いたのはルシュターだけであった。


ギリギリでヴェガの腕を避けると、11567は

そのまま彼の背後に回り込み、回り込みながら

彼の首筋の衣服を掴み、背後に回ると同時に

彼の首を締め上げた。


一瞬の出来事で周りの者達はすぐに事態を把握

できないでいた。


締め上げられた瞬間、彼は苦しみ窒息した。



そして、11567が手を離した時にはもう彼は息をしていなかった。


まだ若かった彼らは、殺人の方法も大まかには

教えられていても(実践用というより将来的に

これらの事も行うというような予告程度であった)

実際の殺人を目にするのは初めての者が多かった。


(生まれた環境によっては初めてで無い者もいたが)

やがてそういう世界に身を投じる事を覚悟した

者達ばかりであったので、怖じ気づくことは

なかったが、11567の動きが余りに鮮やかであった

ため、何故か現実味の無い光景に見えたのだった。



やがて騒ぎを聞きつけた教官達がやって来た。


彼らは現場を見て大体を察した後、集まっていた子供達を速やかに部屋に帰らせ、淡々と後始末を始めるのだった。


この世代でここまでの事態に発展する事が

珍しかっただけで、以前は頻繁に起きていたのかも

しれない。


そう思わせるように教官達は顔色一つ変えずに遺体を片付け、その日の内に目撃情報の聞き取りも終わらせていった。


皆、11567の反撃は正当防衛で仕方ないと証言した。


正当防衛にしてはやり過ぎな気もしている者もいが、誰も回りに当たり散らすヴェガに同情する者はなく、教官達も11567に処罰を与えたくないようだったので、一通りの聞き取りの後11567は

正当防衛にて処罰無しとなった。


皆は少し驚いたが、誰も異を唱えることはなく

トラブルの種がいなくなっただけで、また彼らは

日々の訓練と日課を熟していくのであった。



だが、ルシュターの言い分に目を付けた

責任管のイーダは、ルシュターに対してのみ

しつこく聞き取りを繰り返した。


彼はいつも冷酷な目をしていて、施設の子ども達に

対しても実験道具を見ているような人間味を感じない男であったが、11567の話をしている時だけは

とても生き生きとし、目が爛々としているので

あった。

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