第三章 運動会なんだよ

第1話 校長先生の話は長いのよ

 今日はアビー提案の運動会当日となった。

「晴れた!」

『おはよう、アビー』

『『『おはよう!』』』

「おはよう、今日は早いね」

『だって、今日は運動会なんでしょ』

『そうよ。アビーだって楽しみにしていたでしょ』

『私達も出られるの?』

『んなわけないでしょ!』

「アビー、起きたのなら早くしなさい!」

「は~い、ごめん。ポポ達、また後でね」

『『『分かったぁ~またね!』』』


 アビーはパジャマから着替えるとジュディの元へと向かう。

「おはよう、お母さん」

「おはよう、アビー。今日は運動会なんでしょ。早く行った方がいいんじゃないの」

「うん。そうなの。お母さん達も見に来るんでしょ?」

「ええ、行くわよ。だって、アビーが頑張るんでしょ。それなら、親としては当然見逃せないわよ。ねえ、マーク」

「ああ、そうだぞ。お爺ちゃん達と一緒に見に行くからな」

「それで、アビーは何をするんだい?」

「そうだな。それは聞いてなかったな」

「えっとね……駆けっこでしょ。それにリレーに騎馬戦に……」

「まあ、随分いろんなことをするのね」

「そんなに出るのかい?」

「うん! 本当は全部出たいけど、他の皆も出たいからしょうがないよね」


 アビーが歩だった頃、テレビで放映されていた小学校や芸能人の運動会しか知らないが、実際には見たこともないし出たこともない。だから、今回の教師に提案した競技内容はアビー自身がやりたかった内容でもある。


「行ってきます!」

 朝食を済ませると、アビーは家から飛び出し学校へと向かう。


 教室ではメアリー達が動きやすい格好に既に着替えていた。

「おはよう!」

「「「おはよう」」」

「アビー。アビーはその格好で出るの?」

「うん、いつもの格好だし。これが動きやすいからね」


 学校では運動する時には体操服という習慣はない。なのでそれぞれが動きやすい服装での参加となる。

 そして、アビーは普段からスカートではなく短パンなので、着替える必要はない。


「皆、準備はいい?」

「「「は~い!」」」

 教師が教室の扉を開けて皆に確認すると、皆が元気いっぱいに返事する。


「じゃあ、運動場に行きましょう!」

「「「は~い!」」」


 皆で運動場に向かうと、そこにはアビー達とは違って体が大きい年上の子達が既に整列していた。


「じゃあ、皆はここに並んで」

「「「はい!」」」

 アビー達は一番端の列に並ぶ。その横にはアビー達より少し大きい子達が並んでいる。


「あなた達は私達の一つ下なのよね?」

「え?」

 一番前に並んでいたアビーは隣に並ぶ一学年上の生徒に話しかけられ、驚く。


「あ、驚かせてごめんね」

「ううん。大丈夫」

「ふふふ、よかった。ねえ、私達も今日が初めてなの。でも、面白そうなことばかりで楽しみなの。お父さん達も見に来るって言ってたし」

「うちも! それにお爺ちゃん達も来るって!」

「あら、凄いのね。じゃあ、負けられないわね」

「うん! 頑張るの」

「じゃあ、私も頑張らないとね」

「うん、お姉さんも頑張ってね!」

「うん、頑張ろうね」

「うん!」


 整列してしばらくして、校長先生の話が始まる。

「え~本日は晴天に恵まれ……」


「は~やっと話が終わった!」

「ね~あんな長い話なんて誰が聞くんだろうね」

「「「ね~」」」

 アビーも思いも掛けずに『校長の話は長い』というあるあるを異世界で体験するのだった。

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