第11話 人前で使ったらダメなんだよ
朝、いつもの様に朝食を食べ終えたアビーは山の中をポポ達と一緒に疾走する。
やがていつもの池の畔に着くと、深呼吸をする。
「う~ん、気持ちいいね」
『よく飽きずに走るね』
『ホントね』
『飛んじゃえばいいのにね』
『『それはダメ!』』
『おう、来たかアビー』
「長老、おはよう」
『うむ、今日も元気じゃな。ところで、アビーよ』
「何?」
『人前で魔法を使ったと聞いたぞ』
「あ……ダメだった?」
長老から昨日、ニーナに使った治癒魔法のことを聞かれたので、もしかしてダメだったのかなと長老に確認する。
『ダメじゃな。でも、なぜダメなのか、ちゃんとした理由は話してなかったな』
「そう言えば、聞いてないかも。なんでダメなの?」
『それはじゃな……人は魔法を使えないからじゃ』
「え? でも、僕は使えているけど?」
『そうじゃな。しかも精霊魔法をな』
「でも、それがなんでダメなの?」
アビーもそう言えば、なんでダメなのかと長老にちゃんと聞いてみる。
『確かにアビーは精霊魔法が使える。それは、少し横に置いておこう』
「横に?」
『アビー、お前の横でもワシの横でも無い。単なる言葉の綾だから気にするな。だから、横を見てもないと言うに……話が続かないから、もういいか?』
「あ、ごめんね。長老。ちょっと、『横』が気になって……」
自分の横なのか、長老の横なのか、どこに置かれているのかと探していたアビーに長老がもういいかなと確認する。
『話を戻すが、人という種は魔法を使うことは出来ない。ましてや、精霊魔法を使えるなど、アビー以外には聞いたことがない』
「へ~そうなんだ。僕って貴重なんだね」
『そうだな。貴重だな。もし、見付かったら標本にされるレベルじゃな』
「え?」
『冗談に聞こえるかも知れないが、ホントだぞ』
「ホントなの。じゃあ、魔法使ったらダメだじゃない」
『だから、さっきからそれを説明しようとしているんだが?』
「それでなんで魔法が使えるのがバレると危険なの?」
『急に話が戻ったな。アビー、これがなんなのか分かるか』
長老が異空間収納から鋭利な感じの石を取り出すとアビーに見せる。
「え? ナニコレ?」
『これは魔石という。魔物が体内に持っているものだ』
「へ~深緑色でキレイだね」
『まあ、そうだが。これが我々を悩ませる存在なんじゃ』
「ん~長老、よく分からないよ」
『まあ、待て。人は魔法は使えない。ここまではいいな?』
「うん、それは分かった」
『じゃあ、その次じゃな。人は魔法は使えないが、ある道具を使うことで魔法を使うことが出来る』
「え~なら、僕が使っても大丈夫なんじゃないの?」
『そうじゃな。だが、魔法が使えるのは、この魔石を持っている者だけなのじゃ。もっと詳しく言うと、精霊を閉じ込めた魔石を持つ者だけが魔法を使えるんじゃ』
「え? 長老、もう一回いい?」
『もう一度か。魔法が使えるのは精霊を閉じ込めた魔石を持つ者だけ……だ』
「ねえ、長老。聞いていい?」
『魔石に閉じ込められた精霊のことか?』
「そう! 精霊は魔石から出ることは出来ないの? 魔石の中では生きているの? 魔石から出す方法はないの?」
『おっと、いきなりだな。そうじゃな、一つずつ答えよう。まず、魔石から自力で出られないのかということだが、ハッキリ言ってしまえば分からん。まだ魔石から脱出したという精霊に会ったことがない。それと同じで魔石の中で生きているのかどうかも不明じゃ。最後に魔石から精霊を出すことが出来るかどうかだが、前に魔石から出すことが出来ずに魔石自体を割ってしまったことがあるんじゃ』
「それで?」
『魔石が割れ、中からは死んだ精霊が出て来た……そうじゃ』
「そうじゃって、長老が見た訳じゃないの?」
『ワシは実際には見たことはない。それにそんなことがあってから、無理に魔石を割ることも出来ずにいる』
「難しいんだね」
『まあ、そういう訳で人前で魔法を使うのは厳禁だという話だ。分かってくれたかな』
「うん、分かった」
『そうか。分かってくれたか』
「でもさ、その魔石に入れられないように精霊の皆に言えば済む話じゃないの?」
『アビー。確かにお前の言う通りだ。だが、意思を持つワシやポポ達みたいな中級精霊ではなく産まれたばかりの下級精霊が捕らわれるんじゃ』
「へ~精霊にもそんな
『そうじゃよ。ワシらもいつかは大精霊様と並ぶ存在になるかもしれんぞ』
なぜか長老が偉そうにするが、アビーは違うことに興味を持つ。
「ねえ、精霊って普通の人には見えないんでしょ? なら、どうやって捕まえられてるの?」
『それはな、魔眼じゃ』
「魔眼?」
『そうじゃ。要するに魔術的な細工を施した義眼なんじゃよ』
「魔術?」
『あ~魔法と魔術の違いも説明しないとダメか……』
「あ、今はいいからさ。その魔眼があると、精霊を見ることが出来て、捕まえることが出来るの?」
『そうじゃ。詳しいことはワシも相対したことがないから、分からないがな。その魔眼を持つ者は精霊の姿を見ることが出来、声も聞くことが出来るらしい』
「うわ……」
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