第9話 怖かったんだよ
集会所でのそれぞれの子供達の紹介が終わると、村長の話で纏められ終わりとなる。
アビーも両親の元に近寄ると、ジュディのスカートにしがみ付いてしまう。
「あらあら、どうしたの?」
「なんでもない」
「そう? マーク、馬車をお願いね」
「え~一緒に行こうよ」
「お願いね」
「わ、分かったよ」
アビーはまだ、ジュディのスカートにしがみ付いたままでいるので、ジュディがそんなアビーの様子に不思議そうにしながらも優しく問い掛ける。
「どうしたの? もしかして、さっきの騒ぎに関係があるの?」
「……」
「もう、黙ってちゃ分からないわよ。いつものアビーらしくないわね」
そんなアビーの様子にジュディが困っているとメアリー、サンディ、ニーナが近寄ってくる。
「アビー、どうしたの? まだ怖いの?」
「あら、もしかしてアビーとお友達になってくれたの?」
「はい! そうです。私はメアリー」
「サンディ!」
「ニーナです」
「あら、三人も。ほら、アビー」
アビーはジュディのスカートから顔を離すと、メアリー達を見る。
「アビー、もう帰っちゃうの?」
「なんで?」
「だって、せっかくお友達になれたんだから、もう少し一緒にいたいじゃない」
「そうよ。そんなに早く帰らなくてもいいでしょ」
「おばさま。ダメ?」
ジュディはニーナのおばさまにグサッとくるが、メアリー達と折角仲よくなったのにこのまま帰るのはもったいないと考えてしまう。
「そうね、アビー。遊んでらっしゃい。お母さん達も少しお買い物をして帰るから」
「え、でも……」
「いいから。でも、そんなに遅くならないでね。そうね、二時間したら、またここに来なさい。いいわね?」
「うん、分かった。ありがとう、お母さん!」
「ふふふ、やっと機嫌がなおったみたいね。じゃあ、よろしくねメアリー」
「はい。おばさま!」
「「ありがとう、おばさま!」」
「ぐふっ……いいのよ。気を付けてね」
後、もう一回おばさまと言われたら、口から血を吐いてしまいそうになりながらもなんとかメアリー達を送り出す。
「今日一日くらいなら、大丈夫よね」
「お~い、馬車を持って来たぞ。って、アビーは?」
「あら、マーク。馬車は戻しといて。あと二時間したら使うから」
「え~帰るんじゃなかったのか? それでアビーはどこ?」
「そのアビーにお友達が出来たから、今一緒に遊びに行ってるのよ。二時間後にここに戻ってくる約束でね」
「そうか。でも、大丈夫かな」
「大丈夫よ。自分の娘を信じなさい!」
ジュディに言われ、マークが不承不承に頷くと折角だしこのままデートして過ごしましょうとジュディがマークの腕を取る。
「あ、でも馬車を戻さないと」
「そうね、付き合うわ」
桃色の雰囲気を醸し出しながら、マークとジュディの二人は荷馬車に乗ると、荷馬車を止めていた場所へと走らせる。
アビーはメアリーと手を繋ぎ、村の中を案内してもらっている。
「アビー。ここが私の家よ。今度遊びに来るときには迷わないようにね」
「あ~メアリーだけズルい! アビー、私の家はこっちよ」
「もう、サンディまで。次は私の家だからね」
「うん!」
メアリー達と一緒に村の中を巡り、少しだけ広くなった空き地に辿り着く。
「ここは?」
「ここは、いつも私達が遊んでいる場所なの。広いでしょ?」
「うん、広いね。それで何して遊ぶの?」
「何しようか?」
アビーはどんな遊びをしようか考えて、ここはシンプルに鬼ごっこでもいいかなと思っていると、ロープが落ちているのが目に入る。
とてとてとロープに近寄りしゃがんで手に取り、ロープを広げて長さを確かめると、十分な長さがあったので、サンディとニーナのそれぞれに端を持ってもらうと、回すように頼む。
「「回せばいいの?」」
「うん。でも、あまり早いのはダメだよ」
「「分かったけど……楽しいの?」」
「やってみれば分かると思うから。お願いね」
サンディ達にロープを回してもらうとアビーはタイミングを取り、その中に飛び込んで、タイミングを合わせてロープに足を引っ掛けないように飛び跳ねる。
そして、それを見ていたメアリーも何故か体がウズウズしたようで、手招きをするアビーの元へとタイミングを合わせて入るとアビーと向かい合ったまま、飛び跳ねる。
「「もう、二人だけズルい!」」
そんなサンディとニーナのぼやきに二人は笑うと、しばらく飛び跳ねた後に二人と交代する。
交代した後は、当然アビーとメアリーでロープを回すが、いつまで待ってもサンディもニーナも入ってこようとはしない。
「もう、入らないとダメでしょ!」
「そう言われても……」
「じゃあ、私がタイミングを教えるから」
「「それなら、出来るかも!」」
「もう、調子いいわね。じゃあ、いい? はい、今よ!」
「「え?」」
「もうなんで行かないの。じゃあ、もう一回ね。はい!」
「えい! 入れた! やった!」
「えぇ~」
サンディは入れたが、ニーナは残ってしまった。
「じゃあ、ニーナ。よく聞いててよ。いい?」
「うん、わ、分かった。お願い!」
「一、二、三……今!」
「えい! あ……う、うえぇぇぇん……」
ニーナがメアリーのタイミングで飛び込むが、少しだけ遅かったのか、足を引っ掛けてしまい擦り傷を作ってしまう。
「うわぁぁぁ~ん……」
「あ~転んだ時に擦っちゃったか~もう、泣かないの。そんなに痛くないでしょ」
メアリーはそういうが、五歳児に泣くなと言っても無理ってもので、泣くなと言われてしまえば、より一層泣いてしまう。
アビーは泣いているニーナの側に近寄ると擦りむいた膝に手を当てると痛くないよと言う。
「でも……あれ? 痛くない?」
「ほら、痛くなんかないでしょ。ほら、もうタイミングは分かったわよね?」
「うん!」
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