depraved infant talon

@himurogento-asamesitaku

beginning of the collapse

逢魔が時、摩天楼。

その間を跳び回る二つの影があった。

逃げるあいつは軽々と、追い縋る僕は荒々しくビルを渡っていく。

「逃がさない……!観念しろぉ!」

必死になって僕は叫ぶ。逃がすわけにはいかない。

「しつっこいなあ……、片付けるか。」

逃げている男はそう呟くと、速度を緩めビルの一つに降り立つ。

追いついた僕は警戒しながら距離を詰める。

「なんだあ?まだガキじゃねえか。そっちは人手不足なのか?」

軽薄な笑みを浮かべながら問いかける男。耳障りだ。

「なにっ、僕はガキじゃない!僕にはちゃんとタロンっていう名前があるんだ!」

「おお、怖え怖え。」

わざとらしく震える男、鼻につく。

「いい加減にしろっ、もう逃げられないぞ!」

怒りのままに叫ぶ僕。

「ふ~ん、じゃあかかってこいよ。始末したいんだろ?俺を。」

芝居がかったふざけた動きで口にする。

「当然だ!」

肥大化した腕を振りかざしながら飛び掛かる。

「速いなあ、だが…『テーロス』」

目の前に現れた黒い球体が鈍く唸る。

「喰らえっ!……えっ!?」

僕の爪は空を切った。確かに捉えたはずなのに。

「ん~、読みやすくていいねえ。」

球体越しに男が言う。その姿は……、歪んでいた。

「くっ」もう一度右腕を叩き付ける。視界に紅が飛ぶ。

「今度は当たっ……え?」

何かが飛んで行くのが見えた。まさか。バランスが崩れる。

「どうだ?俺の『アーチ』、軽くなったろ?」

声の先を見る。男の手の上に白い球体が浮遊していた。

「なんだ、それ……」

右腕を押さえ、立ち上がり問う。何故か痛みは無い。

「この球か?さあ?それよりとっとと帰った方がいいんじゃねえか?」

再三煽られる。怒りが再燃する。

「ふざけるな!こんな怪我……」

力を籠める。鈍い痛みと共に腕が生え始める。

「ま、お疲れさん、じゃあ俺は帰らせてもらうぜ。」飄々と告げる男。不味い!

「待てっ!逃がすかあっ!」

男に向かって走る。動きが鈍る。

「あ、そうそう。俺のコードネームだけど……。」球体が回転しながら輝きだす。

「何を……」

嫌な予感がする、だけど走り出した脚は止められない。視界が歪む。

「じっくり味わえよ?『ガンマ・バースト』!」

溢れだした光が僕を飲み込む。

「うわああああ!!!」

身を焦がす烈光の中、僕は意識を失った。

「片付いたな。消し飛んだか、落ちたか……。」

「ま、いいや。はーっ、……明日はあそこだ。」

日が落ちた中、ガンマは闇に溶けていった。

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