絶対に働きたくない僕がヤンデレ彼女に養ってもらおうと計画し、適当に心を病ませた女の子たち三人が全員僕のこと大好きなヤンデレとなって貢ごうとしてくる件

リヒト

第1話

 酷く重苦しい空気に支配されるこの場。


「これが息子さんのいじめの記録です。写真に動画に録音……言い逃れは不可能。わかりますね?」


 固く口を閉ざし、額から汗を流す一人の中年の男にその横で今にも泣きそうになががら目を潤ませている一人の中年の女性。


「これを学校に提出したところで何か意味はあるでしょうか。大した対応も取らずに学校は注意で済ませ……よくもチクったな、と。更にイジメがエスカレートするのが目に見えています。そこで僕は隣にいる被害者である彼と相談し、これを警察に持っていくことも考えています」


 そんな男女二人を前に椅子へと腰掛けている僕は、自分の隣に座っている小柄で可愛い自分と同い年の高校二年生である牧ケ谷玲衣を指し示しながら、言葉を並び立てていく。


「そ、そんな!警察に行くのはッ!!!」


「学校と言う場でなければ誰もが迷いなく警察に行くようなことを子供がしでかしているのに、ですか?」


「……」

 

 警察。

 その単語を聞いて立ち上がった中年の男性の言葉は、続く僕の言葉で沈黙に代わる。


「あぁ……言い逃れは出来ません」

 

 僕はポケットに入れてあった自分のスマホを取り出し、SNSアプリを開く。


「自分のフォロワー数は既に一万人を超えています……拡散も容易です」


「……っごく」

 

 高校二年生の夏。

 早い子だと受験を考えて本格的に勉強を始めるような頃……僕は、これまでずっと温めていた計画の大詰めに入っていた。


 高校二年生に上がると共に、クラスの中心人物である男が始めたクラスの隅にいる陰キャであった牧ケ谷玲衣への壮絶ないじめ。

 いつしかクラスの全員が関与し、先生たちもなんとなく気づきながら黙認していたいじめ行為……それに目をつけた僕、西園寺和葉はとある一つの計画を立てていた。


「ですが、貴方たちも犯罪者の両親というレッテルを貼られるのも、愛する我が子が犯罪者となるのも嫌でしょう?」

 

 その計画に目的は至極単純。

 いじめを利用して金を得ること。


「受験のことを考えると、学校側に知らせることすらリスク……そこで、です。勝手に個人間のやり取りでこの件を終わらせてしまいませんか?」


 僕は一枚の銀行カードを自身の目の前に座るいじめの主犯格である男子の両親に見せる。


「示談金……学校も、警察も、裁判所も通さない金銭のやり取りで済ましてしまうのはどうでしょうか?」


 自分がいじめの標的とならないようにうまく立ち回りながら、いじめられている玲衣と仲良くなって多くの助け舟を出しながら、かき集めたいじめの証拠。

 それをいじめの主犯格の両親へと突き付ける僕は計画の最後。

 いじめの証拠を突き付けての金銭の要求を口にするのだった。

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