第52話 流星光底メンバー、窮地を脱する
「う、うそ……!?」
「最悪ね……」
私たちの前に現れたのは虫の息になっているのと同種のモンスター。
今回のは少し赤みを帯びているようだが……強さに関係があるのだろうか?
「……シオン、エンジュさん私の後ろに隠れて」
急いで2人を私の後ろに移動するように伝えると、すぐに行動に移す。
「……エンジュさん、先ほどの白い光を出す魔法をお願いします」
先ほどのように刃を飛ばされるに前に防げる手段を作りたかった。
その意図が通じたのか、エンジュさんは「もちろんよ」と告げた。
『3人とも逃げるなら今の方がいいかも!』
その最中、インカムからアイリスの声が聞こえてきた。
「な、何でですか!?」
即座に反応したのはシオンだった。
「現れたモンスターの目的は3人じゃなくて、倒れてるモンスターだよ!」
アイリスの言うことを聞きながら視線を向けると、彼女の言う通り現れたモンスターは私たちには目もくれず真っ先に倒れてる同種の方へ歩き出していた。
「それなら今のうちに——」
「いえ、エルフのお嬢ちゃんの言う通り、ここはさっさと逃げた方がいいわね」
エンジュさんは苦虫を噛み潰したような顔でシオンの言葉を遮った。
「とりあえず説明は後でするから、この場からさっさと去るわよ……!」
エンジュさんはシオンと私の手を掴むと走り出していった。
「ひっ……引っ張らないでくださいー!」
通り過ぎた時に何かを引きちぎるような音がしていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ここまでくれば大丈夫かしら……」
私たちの手を掴んでいたエンジュさんが足を止めると、手を引っ張られていたシオンがその場に座り込んだ。
「はぁ……はぁ……! も、もうどうしたんですか!」
息を整えながらシオンは大声をあげていた。
「後に来たモンスターはメスだったのよ」
ため息混じりにエンジュさんは答える。
「そ、それが一体どうしたんですか!?」
『シオちゃん、カマキリの特徴って知ってる?』
「へ?」
これまでに聞いたことのないシオンの驚きの声がダンジョン内に響き渡っていた。
「カマキリですか……? カマってぐらいだから切れ味のすごいとかですか?」
シオンの返答にエンジュさんはため息をついていた。
「まあ、女のは虫には興味ないから仕方ないわね……カマキリってのはね、繁殖行為をしたらメスがオスを食べるのよ」
淡々と答えるエンジュさんの返答にシオンは大きく目を開けていた。
「まあ、オスも黙って食われるわけじゃないけど、あの状態じゃ逃げることは不可能ね、カマキリじゃないからあのメスが綺麗なのかわからないけど、メスに襲われて食われるならオスも本望じゃないかしらね」
エンジュさんの言葉にシオンの顔は青ざめていく……。
「も、もしかして、あの場にいたら……」
「カマキリの捕食シーンがじっくり見れたわね、シオンちゃんが興味あったなら謝るけど」
「そ、そんな趣味ありませんよー!!!!」
今にも泣きそうなシオンの顔を見てエンジュさんは妖艶な笑みを浮かべていた。
「……エンジュさん、それ以上シオンをいじめないでください」
私が声をかけるとエンジュさんは「仕方ないわね」と言わんばかりの表情で肩をすくめていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あ、ポータルありました!」
17階の途中でポータルを発見すると真っ先にシオンが喜びの声をあげる。
カマキリ型のモンスターから逃げ切ってからもダンジョンの先を進んでいった。
モンスターの襲撃もあったものの、あのカマキリのような大きな問題にぶつかることもなく、気がつけば17階まで来ていた。
——ポータル見つけたのか、おつかれ3人とも!
——それにしてもあのカマキリはどうなったんだろうな
——そりゃあメスカマキリに食われて今頃いい夢みてるだろ
——俺も女に食われてえなあ
——たしかにな、相手が女剣客さんとか最高だよな!
「リスナーさんがオルハさんになら食べられたいって言ってるわよ」
シオンがポータルの手続きをしているため、周囲を見渡しているとスマホを見ながらエンジュさんが声をかけてきた。
彼女を見ると嬉々とした表情でスマホをこちらに見せていた。
スマホの画面には配信画面が映っているのはいいが、相変わらず画面が大量の文字で埋め尽くされていた。
「……人を食べるなんてできないけど?」
「そういう意味じゃないけどね」
目を瞑り、考え込んでしまうエンジュさん。
彼女のスマホへと目を向けると、フラれたなという文字が見えたような気がした。
「手続き完了しましたよー!」
エンジュさんとやりとりをしているうちに手続きを完了させたシオンが笑顔でこちらを見ていた。
——シオちゃんの元気な声を聞けてオジさん大歓喜!
——夜も遅いから気をつけて帰るんだぞー!
——少ないけどこれ、夕飯代でつかってくれー[/10000]
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「局長……申し訳ございません!」
オルハたちが下北沢ダンジョンを抜けて帰路についている頃、新宿のダンジョン管理局本部の局長室では1人のエルフが勢いよく頭を下げていた。
「……それよりも早く状況を説明しろ」
十畳近くある部屋で、局長であるバルムが目の前のエルフを叱責していた。
「ノワールドラゴンの封印が解かれました……!」
エルフの言葉にバルムは更に顔を強張らせた。
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