第51話 女聖魔法使い(旧女死霊使い) 、聖魔法を発揮

 『あれはキラーマンティスだね』


 カマキリ型のモンスターと対峙する中、耳元にアイリスの声が聞こえてきた。


 「……どんなモンスターなの?」

 『見た目通りだけど、大きな両手の鎌が特徴的で……』


 目の前のカマキリ型のモンスターはこちらの話が聞こえているのか、定かではないが両手の鎌を研ぐ動きをしていた。


 『あの鎌は人間の首なんか軽く切り落とせるぐらいの切れ味を持ってるから——』

 「ひぃぃぃぃ!!」


 アイリスの説明の最中、後ろでシオンが悲鳴を上げていた。

 危険なモンスターがいるので、目を離すことはできないが震えているのだろう。

 

 「人間の首が飛ぶ瞬間って慣れると美しく見えるものよ?」

 「いやああああああああ!」

 

 エンジュさんの言葉にシオンは大声を上げていた。


 「……エンジュさん、これ以上シオンを怖がらせないでください」

 「冗談よ……若い子にはちょっと刺激が強すぎたかしら?」


 エンジュさんのため息が聞こえてきた。

 あの出来事があるから正直冗談には聞こえないと思う……


 「それでどうする?」

 「……あの鎌が厄介そうだから、まずは切り落として無力化したいけど」


 伝えると同時に月華の柄を強く握る。

 それに反応したのかモンスターは右手の鎌を大きく振り落とし風を切る。

 それに発生した風の刃がこちらへと襲いかかってきた。


 「……そこっ!!」


 即座に月華を勢いよく上へと振り上げ、衝撃波を飛ばす。

 モンスターのだした風の刃とぶつかり合い、どちらも何事もなかったかのように消えていった。


 「シャアアアアアアアアアア!」


 自分の攻撃が意味なかったことに腹を立てたのか、耳に突き刺さりそうな雄叫びを上げるモンスター。

 今度は両手の鎌を交互に振り落とすと、2つの風の刃がこちらへと飛びかかってきた。


 「……させないッ!」


 先ほどと同じようにこちらも衝撃波を飛ばし、1個の刃を相殺することができたが、残った刃がこちらへと襲いかかっていた。

 

 「……しまっ——」

 

 今から衝撃波を出しても間に合わないと思った瞬間——

 

 「いでよ、光の壁!」


 後ろからエンジュさんの声が聞こえると目の前に白い光が私たちを覆いはじめた。

 刃が光に当たると、ふわっと音も立てずに消えていった。


 「何とかなったわね……」


 そう言いながらエンジュさんは私の隣に立っていた。

 彼女の手には拳銃らしきものが握られている。


 「……これって、魔法?」

 「そうよ、聖魔法……であってるわよね?遠隔してるエルフちゃん?」


 エンジュさんは不適な笑みを浮かべながらアイリスの名前を口にする。


 『あってよ、バル兄……じゃなくて局長も言ってたけど、本当に人間なの? その魔法だって人間が簡単に扱えるものじゃないんだけど』


 ため息混じりに答えるアイリス。声色からして納得いってないのが伝わってくる。


 「使えるようになるまで、死ぬ思いしたのよ……」


 最後にふふっと笑いながらエンジュさんは正面をじっと見ていた。

 話をしている間、モンスターは何度も自前の鎌を振り落とし、刃を飛ばしていた。

 白い光に阻まれ、刃が私たちの体を引き裂くことができないのだが。


 「シャアアアアアアアアアア!!!」


 先ほどよりも大きな雄叫びをあげるモンスター。

 自分の攻撃が意味のなかったことに怒り狂ったのか、こちらへと向かっていた。

 

 「……エンジュさん、この光ってどこまで防げます?」

 「使えることだけに専念してたから、どこまで防げるかはわからないわね、エルフちゃんわかるかしら?」

 『自分が使う魔法の効果ぐらい覚えて欲しいけどなあ……ちなみに風とか炎とか元素系はある程度防げるけど物質を防ぐのは無理だからね』

 「……物質って?」

 『刀とか剣とか使った攻撃、ちなみにモンスターの鎌も物質だからね!』


 アイリスの説明の中、モンスターは私たちの前に立ち、右手の大きな鎌を振り落とそうとしていた。


 「ローズバインドッ!!」


 鎌に向けて刀を振り上げようとしていると、聞き覚えのある声が響き渡った。

 その直後に地面から伸びてきたツタがモンスターの体躯にまとわりついていった。


 「シャアアアアアアアア!!!!シャアアアアアアア!!!!」


 ツタから逃れようとするも、逃れようとするとツタから生えたトゲがモンスターに突き刺さっていく。


 「ふぅ……間に合ったあ」


 後ろを振り向くと、安堵の表情でこちらを見るシオンの姿があった。


 「さっき私が言ったことに発狂してたのに、これも変わらないと思うわよ」

 

 エンジュさんはツタとトゲに苦しむモンスターを指差していた。


 「モンスターと人間は違いますよ!」


 モンスターが襲ってこないことがわかっているのか、先ほどの緊張感が何処へ向かっていったのか、シオンの大声とエンジュさんの淡々とした声が響き渡っていた。

 しばらくすると、苦しみに耐えきれなくなったのかモンスターはドスンと音を立てて倒れていった。

 倒れてもこちらへの攻撃する意思はあるのか、ピクピクと鎌を動かしていた。

 虫の息とはこのことを言うのだろうか……

 

 「オルハさんどうしたの……?」


 刀を構えた私を見て、エンジュさんが不思議そうな顔でこちらを見ていた。


 「……楽にしてあげようかと、モンスターとはいえこんな姿を見てるのは辛い」


 月華の柄を掴み、一気に刀を引き抜こうとしていると……


 『3人ともモンスターの反応!!!』


 突如耳に突き刺さるアイリスの声。

 ほぼ同時ともいえるタイミングで正面を見る。


 「う、うそ……!?」

 「最悪ね……」


 シオンとエンジュさんは正面に見せたモンスターを見て声を振るせていた。


 私たちの前に立ちはだかったのは地面に横たわっているのと同種のキラーマンティスだった。


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