コミュ障ぼっち、最強剣客として無自覚にバズる〜最弱魔物を真っ二つにしただけなのにバズってしまいました。え、実はS級モンスター? いやいやご冗談を〜
第45話 女剣客と女配信者、とある意味での最強の敵を知る
第45話 女剣客と女配信者、とある意味での最強の敵を知る
「……そこッ!」
目の前に現れたトロル向けて腰にかけた生まれ変わった月華を引き抜いたのはいいけど……
思っていた以上に月華が軽すぎていつもより勢いが乗ってしまっていた。
目の前のトロルは元より、振り上げた際に発生した衝撃波で後ろにいたと思えるトロルも断末魔の声をあげていた。
——うおおおお!? 一気に2体撃破って女剣客さん強くなってね!?
——1体だけだとおもったら2体いたことにビックリなんだが!
——女剣客「実は修行してた」
体が寸断された2体のトロルの亡骸を見ながら、新しい月華の凄さを改めて実感していた。
「お、オルハさーん……!」
考え込んでいたが、後ろに立っていたシオンの声で我に返る。
彼女の方を見ると、杖を持っていない手で自身の口と鼻を覆い、目尻には大量の涙が溜まっていた。
「早く行きましょう! これ以上ここにいたら倒れちゃいます!」
シオンの声を聞いて、今の状況を知ってしまう。
すぐに彼女と同じように口と覆う。
「……そうね」
月華を鞘に収めるとすぐに歩き始めた。
『2人とも、この先にモンスターがいるよ』
この匂いから早く解放されたくて先を急ぐが、インカムからのアイリスの声を聞いて月華の柄に手を添える。
すると、前から巨体がゆったりとこちらへ近づいてくる。
……相変わらずの強烈の匂いを撒き散らしながら。
——またトロルかよ!?
——ってか14階ってトロルしかいないのか?
——ホントかどうかしらねーけど、他のモンスターがトロルの匂いがキツすぎて他の階に逃げ出したって聞いたことあるな
——2人はモンスターが逃げ出すほどの匂いの中にいるのか……
目の前に現れたトロルは私とシオンの姿を見つけると、ドタドタと大きな音を立てながらこちらへ向かってきた。
空腹時に餌を見つけたハイエナのように。
「……まだ、ハイエナのほうがいい」
思っていることを口にしながら、私は月華を鞘から勢いをつけて引き抜くと、トロルの巨躯をバターのように切り裂いていく感覚が剣先から伝わってきた。
横一文字に斬られたトロルは雄叫びをあげることなく、前のめりに倒れていく。
その瞬間にズボンのポケットに押し込んだスマホがブルブルと震え続けていたような気がする……。
「……ぐっ」
その直後から匂いが一気にキツくなってきた。
後ろにいるシオンもそれに気付いたのか、さっきよりも苦しそうな顔をしていた。
『2人ともどうしたの……!?』
インカムからアイリスの叫び声が突き刺さる。
「……さっきもそうだけど、トロルを倒したら匂いがキツくなってきた」
『そういえば、トロルは腐臭で仲間に自分が死んだことを知らせるみたい……』
「……それを早く言って」
アイリスにそう返すと、すぐにシオンに声をかけて先へと急いだ。
「オルハさん……!」
先を歩き続けていると、後ろでシオンが声をかけてきた。
トロルの亡骸から離れたためか、先ほどまで顔色が悪かったが、少しは良くなっているように見えた。
匂いは相変わらずだが……。
「……どうしたの?」
「少し休みませんか……?」
私の歩くペースに合わせていたためか、シオンは肩で息をしていた。
そんな彼女を見て申し訳なく思ってしまう……。
「……アイリス、シオンが疲れたから少し休もうと思うけど」
『うん、一応周りにはトロルの気配はないから少しなら平気だと思うけど』
アイリスの言葉を聞いて力が抜けたのか、その場に座り込んでしまう。
「強烈な匂いで倒れるかと思いましたよ……まだ臭いですけど」
そう言いながらシオンは羽織っていたジャケットの匂いを嗅いでいた。
この中にずっといたからこのジャケットはもう着れないかもしれない。
「ここにいたらわからないですけど、たぶん私たち匂いがとんでもないことになってますよね?」
「……そうだと思う」
「帰りどうしましょうか、電車乗ったら地獄絵図になりますよね、しかも下北沢止まる電車って終電に近くなるとめちゃくちゃ混むし」
そう言いながら、大きくため息をつくシオン。
「……こうなるならバイクで来た方がよかったかも」
「バイクなら常に外だから匂い気にしなて済みますね!」
たしかにそうだけど、問題があるとしたら……ヘルメットがないことだ。
こんな状況は二度と起きてほしくないが、シオン用のヘルメットを買っておいていいかもしれない。
「そういえば、ミナトさんが打った刀すごいですね、まさか一気に2体も倒しちゃうとは思いませんでした」
「……私も思わなかった」
ミナトの家で何度か試し斬りをしたにもかかわらず、実戦では思っていた以上に力が入っていたのか定かではないが、まさかあそこまでになるとは私自身も思っていなかった。
今度あったらミナトとガーデニアにはお礼を言わないと……。
『2人とも休んでるところごめん!』
突如、インカム越しにアイリスの声が耳に突き刺さる
「……アイリス、うるさい」
『そんなこと言ってる場合じゃないんだって!』
「ど、どうしたんですか?」
シオンはアイリスの声をじっくり聞くために片耳を手で覆う。
『トロルが近づいてきてるの!』
それを聞いて、私は立ち上がる。
「……倒したらすぐに——」
『それが1体じゃないんだって!』
その後すぐにアイリスは3体もいるんだって!と叫び続けていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「……どうやら、耐え切ったようだな」
私の頭上で麗しい顔つきの男エルフが躍動のない声で話しかけてきた。
「そう思うなら優しい言葉でもかけて欲しいのだけど?」
私が皮肉たっぷりに返すと、男エルフは不機嫌な顔を見せていた。
この男が持ってきた本を熟読してから試せと言ってきたので実践したら、体の激痛や吐き気などこれまでに経験したことのない苦しみを味わったのだから、皮肉の一つでも言いたくなる。
「……苦しむってことはそれだけお前の魂が闇に染まっていたということだ」
更に追い討ちをかけてくる男エルフ。
闇に染まってるのはそっちじゃないかと言いたくなったが、体が疲れすぎてこれ以上無駄なことに体力を使いたくなかった。
「それだけ言えるのなら少しずつ闇が無くなりつつあると言うことだ」
「……あっそ」
この男エルフに聞こえるように大きくため息をついてから、ゆっくりと立ち上がる。
「……それで今日はもういいかしら? さすがに疲れてクタクタなんだけど?」
男エルフは私の顔をじっと見てすぐに、仕方ないと言わんばかりの表情を浮かべていた。
「まあいいだろう……ここまでこれで破棄するのはもったいないからな」
エルフの男というのは素直ではないのだろうか?
別に優しくしろとは言わないが、少しは愛想の良さを見せてもいいのではないか……。
そんな私の考えを吹き飛ばすかの如く、部屋中にけたたましい音が響いていった。
「な、なによ……!」
「慌てるな、タブレットからだ……」
そう言って男エルフはタブレット端末が置いてある机へと近づいていった。
「誰かと思ったらアイリスか、何かあったのか?」
タブレットに向けて男エルフが話しかけるとすぐに甲高い声が聞こえてきた。
たしか、この男エルフを兄と呼んでいた人物の声だ。
『バル兄!オルハちゃんたちがヤバイんだよ!』
知り合いの名前を耳にして、私もすぐにタブレットがある机へと向かっていった。
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