音が紡ぐ二人の憧憬、それは空に散った夢の光景

のーこ

第0話:プロローグ



  一世を風靡した二人組ユニットが死んだ。


 『エアプライズ』


 ギター担当の空奏くうそう 弾歩はずむ、ボーカル担当の天音 正声まさなの同級生ユニットは高校生の時、路上ライブから活動を始め、大学生の時には事務所所属となりメジャーデビュー。そこから数年で全国に名を轟かせるユニットとなっていった。


 そんな彼らの目標は『ユニットで立つ武道館ライブ』。

 それは、彼らだけでなく多くのアーティストが夢を見る舞台。

 彼らはそこで満員御礼を掲げライブを行うことが夢だった。



 

 夢だった。




 12年前の12月24日、悲劇は起こった。


 彼らは当時、日本を襲った未曾有の災害を受けチャリティーツアーを行った。その千秋楽の舞台を12月25日、クリスマスの日に武道館と定めた。

 その年、年末の紅白歌合戦にも初選出されたアーティストの初武道館ライブということもあり大きな注目を集めていた。

 

 彼ら家族たちも、一足先に東京入りしていたサポートメンバーの人と空港で待機をしていた。

 前のライブを行った地方の空港近くで偶然開催されていた、オープンマイクのイベントに飛び入りで乗り込んだ二人は、サポートメンバーより一日遅く、東京入りする予定に変更となっていた。

 家族たちも空港の椅子に腰を掛け「あの二人は全く…」「いつまでたっても変わらないんだから…」と少し呆れた様子で談笑を行っていた。


 しかし、彼らの和やかな空間は長くは続かなかった。

 空港に設置されていた大きなスクリーンが特徴のテレビが速報知らせる。


『緊急速報です。本日、羽田着予定の国内線航空機が消息を絶ちました。消息を絶った場所では「爆発音がした」という通報が警察に数多く寄せられ、何らかの事故が航空機に発生したと考え、捜索活動が始められております。

繰り返します……』


「え?」「ちょっと待って」「そんなわけ…」「おい!確認を急げ!」



「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァア」



 飛行機を冠した名のユニットが目的地の目前で空に散る。

 なんて皮肉な話なんだろうか。なんて世界は残酷なのだろうか。



――――――――――



 当時五歳だった俺は、あの日の出来事をよく覚えていない。幼かったせいか、ショックが強すぎたのか。

 おそらく、いつも通り子供たち同士で楽しくごっこ遊びでもしていたのだろう。




 ただ、その中でも尊敬していた父が散ったこと。が切れてしまってことはよく覚えている。


                   


 

 

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