第14話 元貴族の冒険者、敵に送る塩を見せる


 希少な魔物をカリガール家に献上して、

 エミリ達の除名を請う。


 クリスのその提案に、

 ゼニーは耳を疑った。


「クリスさん、

 何故あなたがそこまで・・・?」


「そうですよ。

 この人はクリスさんを陥れようとした、

 いわば敵なんですよ?」

 レナもゼニーに同意である。


「それは・・・」

 実はクリス自身にもよく分からなかった。


 エミリ達に対する後ろめたさからだろうか?


 いや・・・


 多分、わずかの間だがクリスが世話になった児童保護施設・・・。


 あの温かい空間を守ってきたのは、

 エミリやマルコの功績だ。


 施設の子供たちも、

 二人を慕っていた。


 その子供たちのためにも、

 あのを何とかしたいから・・・それで・・・。


 だが、エミリはそんなクリスの心境など知る由もなく、

 押さえつけられた身を引きずるように食いついてきた。


「あ、あんた、それ本当!?

 本当に私たちを助けてくれるのね!?

 騙したら承知しないわよ!?」


「どの口が言いますか・・・」

 聞いていてレナはあきれ果てた。


 だが、

 クリスはエミリのその態度に怒ることもなく、


「本当です。

 ――街から東の森にはダンジョンがあって、

 珍しい魔物が出るんですよね?」

 と、冒険者ギルド職員のレナに向かって確認するクリス。


「ええ、

 ダンジョンの魔物は基本外に出ないため、

 その生態系はいまだに謎が多いのです」

 レナもギルド職員の顔になって答える。


「ですがクリスさん・・・、

 ダンジョンに潜るとなると、

 それなりの準備を整える必要がありますよ。

 武器に防具、回復薬にあかりと・・・、

 それなりの出費と危険を覚悟しなければなりません」


 すると、

 それを聞いていたエミリが噛みつくように、


「何言ってんの!

 あんた達この前、さんざん私たちからふんだくったじゃない!

 金ならそこから出せばいいでしょ!?

 ケチケチしてんじゃないわよ!!」

 と、わめき散らす。


 彼女のその態度に対して、

「エミリッ!

 いい加減にしないか!!」

 と、ゼニーが憤慨する。


 だが、

 エミリは反省するどころか、

「何よっ!

 偉そうに命令してんじゃないわよ!!

 私たちはもう、あんたの部下じゃないんだからね!!」

 と、完全に手のひらを返してきた。


 結果、

 当然のようにチルポ達にさらに強い力で、

 床に押さえつけられる。


 一方ゼニーもさすがに、

 腹が立って腹が立って震えている。


 レナとクリスは、

(どうしよう・・・)と、顔を見合わせる。


 これでは、

 相談どころではない。


 と、その時、


「WOOOOOOOOHHHH!!!!」


 窓にヒビが入ってもおかしくないほどの声が、

 部屋中に響いた!


 巨大な白狼ユキの放った吠え声ハウリングだった。


 見ればエミリが、

 泡をふいて失神している。


 何故か他のものは、

 声には驚いたが何ともない。


 どうやら、

 標的を選んで声を発する事ができるようである。


「・・・この子が一緒なら、

 クリスさんもダンジョンで安心ですね」

 半ば感心、半ばあきれぎみに言うレナ。


 それに対し、

 フンス!と鼻を鳴らすユキ。


 静かになったところで、

 クリスはゼニーに切り出した。


「ゼニー商会長、

 そういうわけで申し訳ありませんが、

 しばらくの間エミリさんを保護していただけませんか?

 もちろんお礼はしますので・・・」

 クリスがそこまで言うと、


「いや・・・」

 と、その発言を止めるゼニー。


「むしろ私のほうからお願いしたい。

 クリスさん、我々ゼニー商会のカリガール家との関係修復のためにも、

 冒険者のあなたに、希少な魔物の素材入手の依頼をお願いします」


「え!?」

 今度はクリスのほうが驚く番だった。


「その依頼を引き受けてくださるのでしたら、

 エミリの身は、我々ゼニー商会が責任もってお預かりします」


 ゼニーの依頼とその提案は、

 むしろ渡りに船である。


「レナさん。

 ここはギルドではありませんが、

 この場で依頼を出す事は可能でしょうか?」

 と、ゼニーはレナに尋ねる。


 レナは少し驚いた顔をした後、

 少し考えたようだがすぐに、

「はい、可能です」

 と言って、

 制服の懐から折りたたんだ書類を取り出す。


 そして、

 ゼニーが必要事項を記入したのを確認すると、


「ではクリスさん、ユキさん。

 この依頼、この場で受注という事でよろしいですか?」

 そうに確認する。


「はいっ!」

 クリスはためらいなく答えた。


 ユキもニイッと牙を見せて応じる。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ―――二日後、

 東の森のダンジョンの入り口前に、

 準備を整えたクリス達がいた。


 腰にミスリル製の短剣を帯び、

 動きやすい革の鎧に身を包んだクリスと、

 相棒のユキ。


 そして・・・、


「では、

 よろしくお願いします」

 クリスはに向かって言った。


【つづく】



 _________________


 ここまでお読みいただき、

 本当にありがとうございます!


 そして、今回皆様にこい願うのは、


 前回に引き続き、

『クリスがしとめようとしている魔物とは!?』

 そしてもう1つ、

『クリスの新しい仲間はどんな奴!?』


 皆さまが閃いたアイデアを、

 コメント欄にてお贈りくださいませ!


 簡単な言葉で良いので!!


『魔物はオーガ、仲間は女エルフ』とか、

『魔物はミノタウロス、仲間は男ドワーフ』とか、

『魔物はキラーマシーン、仲間はさすらいの剣士』とか・・・!


 ちなみに、

 仲間は今までに出たキャラでも構いません。

 ま、戦力になりそうなのは一人もいませんが・・・


 どうぞ、どうぞよろしくお願いします・・・!!


 ・・・というお願いを先日までしておりました。


 閲覧はもちろん、

 コメントをくださった方には本当に感謝しております!


 最新話では常に新しいお題へのコメントを切に願っております。


 なので、この先もお付き合い頂けたら幸いです。




















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