虫を取る時によく見かけるお姉さんの謎

maricaみかん

第1話

 ユキトと言う少年は、毎日のように近所の林で虫取りに勤しんでいる。

 そんな日々の中、いつものように見かける女がいた。

 ユキトから見て年上の、常に穏やかに微笑んでいる女。名前は知らない。

 ただ、自分の日常の中に女が入っているような感覚があり、違和感のようなものを感じることはなかった。


 毎日違う虫を目当てに林へとやってきて、狙った獲物は逃がさない。

 いつも自分を見ている女との、奇妙な連帯感があった。自分が虫を捕まえて、女は微笑むだけ。

 何の関係もないはずなのに、それでもわずかな親しみを感じて。

 ただ、お互いに声をかけることもなく、日々を過ごしていった。


 ユキトが虫取りに飽きてきたころ、別の場所で女を見かけるようになった。

 ゲームに夢中になっている時はゲーム屋で、おもちゃに夢中になっている時はおもちゃ屋で。

 偶然とも思えず、ついにユキトは女に声をかけていく。


「なあ、いつも会うよな。俺のことつけてるのか?」


「どうだろうね。君は何が正解だと思う?」


「別に何でもいいけど、ストーカーは犯罪だからな。捕まらないように気をつけろよ」


「心配してくれるんだね。嬉しいな。ねえ、うちに遊びにこない? 好きそうなもの、いっぱいあるよ」


「まあ、気が向いたらな。そのうち行くかもな」


 ユキトと女の出会いが何をもたらすのか、その時の彼は知らなかった。



――――――



 私には気になっている男の子がいる。名前はユキトくん。

 虫を捕まえるのが趣味らしいから、私は虫を飼い始めた。

 そして、ユキトくんが狙っているであろう虫を林に放つ。そうすることで、ユキトくんの行動を操っている感覚が、私には何よりも楽しかった。


 だけど、彼は虫取りに飽きてしまったようだから。

 私は次の行動のため、ユキトくんの情報を調べて、もっともっと誘導することを計画した。

 声をかけられた時にはビックリしたけれど、都合がいいかもしれない。

 これなら、ユキトくんにもっと近づいて、私の手のひらで操ることすらできるかもしれない。


 いずれ大きくなったときの恋人を目指すのか、はたまた他の関係を目指すのか。今は分からない。

 だけど、絶対に決まっていることがある。それは、ユキトくんの人生を私の手で操ってみせること。


 ねえ、楽しみにしていてね、ユキトくん。

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