獣人と魔術学院
あかば雨期
第1話
「――それからクロエ・キャネンダムは後日再試を行う。詳細は放課後に実技教員室で伝えるので午後四時までに来るように。……では解散」
先生が最後にボクへの無慈悲な鉄槌を下して魔術実技の授業は終わり、学院に昼休みが訪れた。
生徒たちがさわやかな笑顔でグランドを立ち去る中、耳も尾も垂れ下がり真っ白になって途方に暮れるボクの元に二人のクラスメイトがやってくる。
「クロ子相変わらずいい爆発だったなあ。またほっぺに煤付いてるよ、ぷふ!」
「うるさいなぁ!今日はちょっと鼻の調子がよくなかったの!」
汗に濡れる頬を乱暴に拭いながら尻尾を逆立て反論していると、反対の頬を優しく拭いてくれるハンカチが。
「クロちゃんこっち。……はい取れた」
「鼻の調子て!いやぁ、クロ子はおもしろいなぁ!」
「エメちゃんありがと、好き……。グレースはもうあっち行って!キライ!」
※※※
人をからかって笑うこのイジワルな女は寮で私と同室のグレース・テルヴィレア。
よく遊び日焼けした肌で黒髪のポニーテールを気楽に揺らしながら、なんとなくで魔術学院に合格してしまう不敵なボクのライバルだ。
本人は実技一本で入ったー、なんて言ってるけど座学も苦手そうなそぶりは見えない。ボクへの当てつけなんじゃないかな!
そしてボクのほっぺをキレイにしてくれた、ふわりとした金髪ロングヘアのかわいらしい女の子がエメ・アルバサフィーティア。
なんでも代々魔術師の家系なんだとか。
文武両道な上にスタイルも大人っぽいボクの自慢の友達で、もう一人のルームメイト。
二人ともボクよりちょっとだけ、ちょっとだけ背が高いから同室の3人で並ぶとボクが埋もれちゃうんだよね、ちょっとだけ。……それはどうでもいいや!
※※※
ボクは和やかに微笑むエメちゃんにピッタリくっ付き、けたけたと笑い続けるグレースを威嚇しながら更衣室で実技服から制服に着替え、3人で食堂へと向かった。
グレースはお昼を食べている最中も事あるごとにボクをからかってきた。
なんてやつだ!
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