一寸愉快な日常

ねりけしやろう

第1話 文具屋と悲劇

明日は文具屋に行く日だ。

ここで言っておくと、私は大の文具好きだ。せっせと金を貯めては文具屋に行っている。

だが、その中でも明日は特別な日だ。

いつもは近所のスーパーの一部のような小さい場所に行くのだが、明日は違う。

文具好きの聖地、「ロフト」に行くのだ!!

ロフトと言えばコスメやインテリアなどのイメージが強いだろうが、

ロフトにはそこらへんの近所では手に入れられないような、珍しいすんぎょい文具が売っていたりするのだ。(その分お値段が張ったりするのだが、まあそれは良しとする)しかも文具仲間と行くのだから、ワクワクしないわけがない。

そんなぼけっとした気分で、明日寝坊してしまうと本末転倒なので、目覚ましを早めにセットし、10時には寝床についた。


そしてやってきた、今日!だが、そんな日こそ悲劇は訪れる。

私は鏡を見て絶望した。

私の髪の毛は、この世のものとは思えないほど荒れ狂っていた。

重力にでも対抗しようとしたのか、と思った。

だが落ち込んでる暇はない、とはっとし、時計を見る。

待ち合わせ時間まで、あと1時間ある。

移動時間を引くと、30分ぐらい。ごはんや身支度なども入れると…あぎゃー。

急いでも10分ぐらいしか余らない。

なんでもっと早く起きなかった、自分。

あと10分でこれを片付けるなんてほぼ不可能だ。

とりあえず、身支度やご飯を急いで済ませ、(急ぎすぎてごはんがのどに詰まるかと思った)ドライヤーをしたり、水をかけたりしてみる。だが、無駄だった。

ゴキブリ並みの生命力、とでもいおうか。

髪の毛はドライヤーや水にも屈することなく、直立していたのだ!

時間も迫ってきたので、とりあえず髪をぎっちぎちに縛り、帽子をかぶって出発する。道中でも誰かに見られてないか、心配でならなかった。

ママ、あの人の髪どうしたの?しっ、見ちゃだめよ。

そんなことを言わないでくれよォ。おいらだってがんばったんだぜ(←10分ほどの努力)

そうこうしているうちに、目的地に着く。文具仲間のAさんがどう思っているか気になったが、何も言ってこなかったので気づいてないんだなと心の中で安心した。

そのあとはめちゃくちゃ楽しかった記憶しかない。今までとは比べ物にならないほどの文具の量。都会はすごいっぺー。対して都会でもないけど。髪の毛のことなんてとうに忘れていた。

そして、結構時間がたち、そろそろ帰ろうかというときに、Aさんがふいにコチラを見ていった。

「髪の毛、どうした」

突如、私はとてつもない恥ずかしさに襲われた。

気づいてなかったんじゃなく、気づかないふりをしていたのか。

「あっ、ちょっと髪の毛の寝ぐせがなおんなくて、すみません」と慌てて謝ると、Aさんは「え、ねぐせだったんですか。てっきりそういうかみがたかと」

んなわけあるかーい。

Aさんの思考に半ば呆れたが、そういうかみがただと思って気遣いをして今まで黙っていたAさんを想像すると、少し可愛くも思えるのだった。

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