第15話 信じていいんだよね

 想太が改めて話をしようとすると、ニャルから待ったが掛かる。

「何?」

「話の前にそれをどうにかしてもらえないでしょうか。どうもさっきから目が合っている気がしてなりません」

「あ~じゃあ、ちょっと跳ばすね。『転送』! はい、ライオの寝所に跳ばしたから、後は適当に寝かしといて」

 ライオの人形を想太が跳ばしたと聞いて、ニャル達は驚愕するが何故かニャル達の間で『気にしたらダメだ』という思いが強くなる。

 ライオが消えたのを確認してから、想太がこれでいいかなとニャル達に確認するとニャル達はブンブンと首を縦に振る。


「あと、ついでにと言ってはなんですが、それもいいですか?」

「それ? ああ、コレね。よいしょっと」

『ソレ』と言われた床に寝転ぶライオを担ぐと『居間』へと放り込む。

「じゃあ、これでいいかな」

「すみません。いくら、拘束されていると言いましても、あのライオ様を前にすると、どうしても萎縮してしまって……」


 色んなものが片付けられた執務室でニャルが座りましょうかと想太達にソファを勧めるので、二人がソファに座るとその対面にパルとミコが座り、その間の一人掛けのソファにニャルが座る。

「改めて、話をと思いましたが、その前に少し休憩してもいいでしょうか。なんだか色んなことがあり過ぎてしまって」

「いいですよ。じゃあ、俺達も休憩しますね。じゃあ朝香」

「うん、そうだね。想太」

 想太と朝香は互いに頷くと特撮ヒーロースーツから普段着へと衣装チェンジを行う。

「なんと……」

「まだ、少年ではないか!」

「それもヒト族の……」

 ニャル達は特撮ヒーロースーツから普段着に着替えた想太達を見て、それぞれに感想を漏らす。

「どうしたのかな?」

「さあ、多分。私達が幼すぎるからじゃないかな」

「幼いか……コレばっかりは変えられないからしょうがないか」

 想太達をジッと見ていたことに気付いたニャルが再起動し、失礼しましたと想太達に謝るとベルを鳴らしてメイドを呼ぶと、お茶を人数分頼む。

「お茶が来るまで、あなた方のことをお伺いしてもよろしいですか」

「全部は話せないと思うけど、それでもいいかな?」

「ええ、構いません」

「それじゃあ話すね。えっと、まず俺の名前は想太、こっちが朝香ね」

「朝香です」

「ニャルです。こちらがパル、そして向こうがミコです」

「よろしく」

「よろしくね」

 軽く自己紹介をした後に想太が、どうやってライオを助けることになったのかを話す。


「それで、ライオを助けた後に、本題のことを頼もうと思ったら、ライオにハッキリと断られたからさ。なら今の王様に話しを聞いて貰おうと思って来たんだ」

「そういうことですか」

「え? ニャル様は今ので納得出来たのですか?」

「それ以上は言うなパル。私も納得出来ない箇所はある。だが、それを言ったところで、我々が満足出来る、納得出来る答えが返ってくるとは思えない」

「それは確かにそうですが……」

「そうだろう。誰が、地下牢のライオの元へ直接転移して、あの鎖を引き千切って助けることが出来ると言うんだ。まあ、実際に助けた本人が目の前で説明はしてくれたが今でも私には納得というか、理解することは出来ない」

「え~実際にライオ本人を見たんだから、そこは信じようよ」

「想太、人は想像を超えてきた現実を理解するには時間が掛かるんだよ。今は、これでいいじゃない。ね? 私が隣にいるんだしさ」

「朝香……」

 朝香に慰められた想太は、なんとか自分を納得させることが出来たようで顔を上げると、ニャル達の顔が目に入る。


「ソウタ殿、今はまだ色んなことがありすぎて信じられることは出来ないが、私はソウタ殿を信じたいと思います。いえ、信じます。あのライオ様ではなく私を信じてくれたあなたを私は信じたいのです」

「ニャル様、本気ですか! ミコ、お前からも何か言ってやれ!」

「パル。ごめん、私もニャル様と同じ。それにさ、ソウタ殿の話も聞いてみたいし」

「それは俺もそうだが……」

「なら、いいじゃない! ね?」

『コンコンコン』

「失礼します」

 ノックと共に執務室のドアが開かれメイドがティーセットを載せたワゴンを押しながら執務室へと入ってくる。

「では、何かありましたら」

 皆の前のテーブルの上にハーブティーが入れられたカップが置かれるとメイドがお辞儀をして執務室から退室する。

「ソウタ殿、アサカ殿、お口に合うかどうかは分かりませんが、どうぞ」

「「いただきます」」

 想太達はティーカップに手を伸ばし、一口啜る。

「あ、おいしい。私好きかも」

「うん、おいしいね」

「お気に召したようで」

「さて、喉も潤ったことだし、ソウタ殿。話してもらえる?」

「ミコ! そう、慌てるな」

「いいよ。ニャル。じゃあ、話すね。俺のお願いって言うのがね……」


 想太の話を黙って聞いていたニャル達が「はぁ」と揃って嘆息する。

「確かにそういう話でしたら、ライオも断るでしょうね」

「でも、少しも逡巡することなく即決で『無理!』って言ったんだけどね」

「あ~ライオ様らしいですね。ですが、ソウタ殿が気にしているように、これがどうにかすべき問題だというのは私も認識しています」

「でしょ? なら、解決方法を考えて欲しいんだけど」

「それは分かりますが、問題は一つじゃないですよね」

「でも、場所さえ用意してもらえるなら、あとは俺の方でなんとか出来るんだけどね」

 想太の言葉にニャルが反応する。

「それは本当ですか? 土地さえ用意出来ればどうにかなるんですか?」

「うん、出来るよ。まあ、そこは信じてもらうしかないけどね」

 ニャルは満足そうに頷く想太を見て、ここは想太を信じるしかないかと覚悟を決める。

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