第6話 返り討ちにしたわよ
「この体は汚されたの! だから、私はあの人達に会う資格はないの!」
「分かりました。じゃあ勝手にして下さい。俺は他の人達を助けに行くんで。あ、このオッサンはこっちで引き取りますね。亜空間生成『
想太は作った亜空間に両手足を拘束したオッサンを放り込むとテントから出て行く。
「じゃあ、他の人は……皆檻にいるみたいね。じゃあ、騒ぎにならない内に転送させようかな」
『それがいいでしょ』
女性達が捕らえられている檻に近付くと想太は檻の中にいる女性に「どこかに捕まってて下さいね」とだけ、告げると朝香達が待つ家の近くに『転送』させる。
「じゃあ、あとはさっきのオッサンみたいに悪さしていたヤツだけ捕まえて」
『あ、そいつです。あと、そこのも』
アツシのサポートを受けて、獣人達に非道いことをした騎士を対象に捕縛しては『牢屋』に放り込んでいく。
「ほとんど捕まえることになったね」
『しょうがないでしょ。では戻りますか』
「そうだね。じゃあ、帰ろっか。『転「ちょっと待て!」移』」
想太が転移する瞬間にママが想太を掴んで引き留めようとしたが、その甲斐もなく想太と一緒に転移されてしまう。
「よっと」
「あ、想太。お帰り~どこも怪我しなかった……って誰、その
朝香に言われ、想太は初めて自分の腰にしがみつく女性……ママに気が付く。
「あれ? どうしてここに?」
「ちょっと、想太! 無視しないで!」
「朝香、紹介するよ。この女性がママさん。リリ達のお母さんです」
「え? この女性が?」
朝香が訝しんでいると、その朝香の後ろからリリ達が飛び出してくる。
「「お母さん!」」
「ママ!」
「あ……リリ、ロロ、パパ……ダメ、来ないで!」
ママからそう言われ、リリ達は飛び付くことが出来ずにその場に立ち止まる。
「お母さん! お母さんなんでしょ!」
「お母さん!」
「ママ、なんでそんなことを言うんだ。一体、どうしたんだ?」
「ダメなの。私にはあなた達と会う資格なんてないの!」
ママがそう言うとパパは想太にどういうことだと詰め寄る。
子供達に聞かせる話でもないかと想太はパパだけを呼び、助け出した一部始終をパパだけに話す。
「そういうことか。バカだなママは。そんなことで俺がママを嫌いになるはずがないだろう」
「そうね。あなたなら……パパならそう言うのが分かっていたの。だから、会わずにいようと思っていたんだけど……」
「でも、会いたいから俺に飛び付いて転移してきたんでしょ。どうもさっきから言葉と行動が一致しないんだよね」
「くっ……それを言われると……」
本当は会いたいクセにとママの気持ちを慮ってはみるものの、これだけ強情だとなかなか崩せそうにないと思った想太は、ママの相手に疲れ始め、さっさとパパに任せることにした。
「そういう訳で後はパパさんとよく話して。あと、朝香はママさんに着る物を用意してあげて。何時までもシーツを纏っている訳にはいかないでしょ」
「あ、そうよね。分かったわ。任せて」
「頼むね。それと他の人達はどうしたの?」
「一応、檻からは出したけど」
「出したけどって……まさか、アソコで伸びているのは……」
「だって、檻から出してあげたのにさ。『ヒトの子が~』って、私に暴力を振るおうとするんだもの。不可抗力だよ」
朝香の言葉に檻の横で折り重なるように山盛りにされている獣人の男性を見やり想太は納得する。
「まあ、そうだな。じゃあ、女性の方は?」
「そっちは簡単。最初にパパさんとリリ達に説明をお願いしたから」
「そうなんだ。それはお疲れ様」
「どういたしまして」
「あの~」
「はい?」
朝香を労いあとはどうするかと考えていると救出した女性陣から、あるお願いをされる。
「え~と、トイレに食事に寝るところね。え~と、全部で百三十人だったよな。じゃあ、イメージは学生寮だね。『白狼寮』創造!」
想太が唱えると、想太の家の横には五階建ての寮が三棟現れる。
「想太、これって高校の学生寮だよね?」
「うん、そうだよ。これだけ多いとね。こっちの方が便利がいいでしょ。中に厨房施設に食堂に浴場、もちろんトイレもあるからね。さあ、入って下さい」
想太に案内される形で女性陣と朝香が一緒に寮へと入る。
「まずは、トイレね。朝香は使い方を教えてあげて」
「あ、そうよね。じゃ、代表で……あなたと、それにあなた、最後にあなた。着いてきて」
女性用トイレに朝香が代表者三人を連れ入ると使い方を説明している間に食堂と厨房を案内する。
「後は、上に部屋があるから好きに使って。多分、部屋数は足りると思うから」
「分かったわ。ありがとう」
想太の隣に立つ女性が返事をする。
獣人の年齢は見た目からは分からないが、雰囲気的には想太とそれほど歳は離れていないように思える。
「えっと……」
「あ、私はスー。よろしくね。あなたはソウタでいいのよね?」
「はい。それでいいです」
「ふふふ、そんなに畏まらないでよ。私達を助けてくれたのよね。そんなヒーローにそんな風にされたら私が怒られるじゃないの」
「あ、すみません」
「だから、それをやめてって言ってるの。もう、いいわよ。でも、なるべく普通にしてね」
「あ、はい……うん、分かった」
「そう、それでいいのよ。じゃあ、厨房の使い方を教えてちょうだい」
「分かったよ。スー」
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