第2話 どっちかと言うと俺が『お兄さん』だと思うけど

 朝香達がお風呂場へ行ったのを確認した想太は流しに溜まった汚れた食器を洗う。

「これで終わり……っと。さて、次は洗濯と替えの服か。でもな~小さいとは言え女の子の下着がな~ハァ~」

 想太は小さくため息を吐き脱衣所へと向かうと脱衣所に入る前に脱衣所の前から浴室にいる朝香に声を掛ける。

「朝香~入るよ。いい?」

「いいわよ。遠慮なくどうぞ」

「じゃ、失礼しますね」

 想太はゆっくりと脱衣所の引き戸を開けると、洗濯籠に入れられた子供達の汚れた服を取り出す。そして、その横には朝香のがあるが、出来るだけ見ないように注意する。

「じゃあ、替えを作ったら置きに来るね」

「よろしくね」

 浴室の朝香に声を掛け、脱衣所から出るとリビングへ向かう。

「さて、汚れた服を持ってきたはいいけど、どうしたものかな」

『そんな物、洗えばいいでしょ』

「そうは言うけどさ、今から洗っても乾かないし」

『まだソウタはそんなことを……ハァ~いいですか? まずは汚れた物は『クリーン』でキレイになります。そして、破損した箇所は『修復リペア』スキルで元通りになります』

「へぇ~便利だね」

 中々自分が持つ力のことを理解していない想太に嘆息し呆れながら想太に言う。

『ハァ~だから、ソウタがそれをするんですよ! はい、二つのスキル取得しましたので』

「分かったよ。『クリーン』、『修復』っと」

『じゃあ、後はそのキレイになったのを『コピー』スキルで創造しましょう。はい、これも取得したのでどうぞ。あ、それと一応、コピーして作った物は『異空間収納』に収納していた方がいいでしょう』

「え~女児のパンツを保管するの?」

『ええ。一々キレイにして修復してコピーするよりはいいと思いますが』

「それもそうか」

 女児のパンツを保管するようにアツシに言われ、反論してみるもなんとなく論破され結局はアツシの言うとおりにする想太だった。


「じゃあ、これでいいか」

 二人の着替えを用意した想太は再び、脱衣所に向かい中に声を掛ける。

「朝香、着替えを持って来たから、開けるね」

「いいわよ。どうぞ」

 朝香の返事を待って脱衣所に入ると、二人の着替えを分かる様に棚に置いてから脱衣所を出ると想太はリビングに戻りソファに座る。

「ねえ、アツシはどうして、ここに俺を連れて来たの?」

『召喚した国から離れたいのはもちろんですが、お隣のシャムニ王国も五十歩百歩なので、それならばケモ耳、モフ好きのソウタにピッタリなこの国にしました。本当は、もう少し中寄でもよかったんですが、獣王国も極度の人嫌いが多いので様子見も兼ねてこの位置にしました』

「ふ~ん、そうだったんだ。でも、結果的にあの二人を助けられたからよかったよ」

『確かにそうですね。あ、上がられたみたいですよ』

「え? もうなの。早いね」

「想太~ロロをお願いね」

「え? ロロ?」

「そうよ。男の子の方よ。よろしくね」

「分かった! ロロ君。おいで」

「は~い」

 想太に呼ばれた男の子、ロロが想太の方へ、ペタペタと近付いてくる。

 想太はロロが被っていたバスタオルを受け取ると少々乱暴に髪の毛をワシャワシャとしながら丁寧に水分を拭き取り、体の方も十分に拭き取るとロロが持っていたパンツを履かせてシャツを着せる。

「これでよし。お風呂はどうだった?」

「気持ちよかった!」

「そう、それはよかった。はい、どうぞ」

 想太はロロをソファに座らせるとコップに注いであった牛乳をロロに渡す。

「飲んでいいの?」

「いいよ」

 ロロはコップを両手で持つと恐る恐る口に付け、一口だけ飲む。

 一口飲んでコップから口を離すが、またコップに口を付けると『ゴキュゴキュ』と喉を鳴らしながらコップ一杯の牛乳を飲みきる。

「ぷはぁ~もう一杯!」

「はいはい、お代わりね」

 想太は立ち上がり冷蔵庫から牛乳パックを取り出すとロロのコップに注ぐ。

「あまり冷たい物を飲み過ぎるとお腹によくないから、今日はここまでね」

「え~」

 ロロは想太に言われ、不満を漏らすが今日はこのコップの牛乳を飲み干したら終わりと言われたので今度は一気に飲み干すことはせずに一口ずつゆっくりと飲む。

「あ~ロロだけズルい!」

「あ、お姉ちゃん」

「そんなこと言わないの。はい、リリもどうぞ」

 朝香がリリにコップを渡したので、想太がそのコップに牛乳を注ぐ。リリはコップに牛乳が注がれるのをジッと見詰める。

「はい、どうぞ」

「ありがと」

 想太は牛乳を注ぎ終わると、リリに声を掛け、リリはお礼を言ってからコップに口を付ける。

 ロロが飲んでいたのを見ていたので、リリは安心して一口目をゆっくりと飲み、二口目からは口を離すことなく勢いよくコップの中身を飲み干し「もう、一杯!」と想太にコップを差し出す。想太は笑いを堪えながら、そのコップに牛乳を注ぐと「リリもこれで今日は終りね」と言って牛乳パックを冷蔵庫へ戻す。

「え~どうして?」

「冷たい物を飲み過ぎると体によくないからね」

「そうなんだ。ソウタ兄ちゃんは物知りなの?」

「ソウタ兄ちゃん?」

「うん、ダメだった?」

「いや、ダメじゃないけど。急だったからさ」

「そっか。それと、アサカお姉さんにお話をいっぱい聞かせてもらったよ」

「僕も聞いた。アサカお姉さんはソウタ兄ちゃんのことが好きなんだよね」

「ロロ君、想太の前でそんなこと……」

 朝香はロロの口を塞ぐような真似をするが、その目は想太の反応を確かめているようだった。

「リリ、そんなことはいいから。聞かせて欲しいんだけど」

「なに?」

「なんで、俺は『ソウタ兄ちゃん』で朝香は『アサカお姉さん』なの? そこは『アサカお姉ちゃん』でいいんじゃないのかな?」

「分からないもん。だって、アサカお姉さんがそう言ったもん!」

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