第2話 友達だと思っていたのに

 目の前の視界いっぱいに手紙が表示され、送り主が誰なのかを探すが送り主らしき名前は見当たらないことに想太は不思議に思うが、今は手紙の内容を確認するのが先だと思い、手紙の内容に目を通す。

 その手紙に書かれていたのはこんな内容だった。


 ※※※※※

 やあ、いきなりでごめんね。あと、君がずっと寝ていたからこっちで適当にスキルを選んでみたけど、意外といい組み合わせだったでしょ?

 それともまだスキルを使っている暇なんかなくて実感も湧かないかな。

 でもさ、君の国の言語の難しさはどういうことなのかな。全くいちいち翻訳するこっちの身にもなって欲しいよね。

 特にあの『同音異義語』って言うのかな。読み方は一緒なのに使う『漢字』が違うってのは厄介の一言だよね。まあ、ここまで言ったら気が付くと思うけど、君のスキル『想像』は字面が違うからね。本当は『創造』って書きたかったんだけど、変換ミスしたまんまカードに書かれたんだよね。本当、責任者出てこい! って奴だよね。って、この場合は僕になっちゃうのかな? まあ、本当は変換ミスのままにして勘違いさせた方が面白いかもって思ったからなんだけどね。

 だから、何が言いたいかと言うと、君の『創造』は『創造』だからさ。なんでも創造して好き勝手にしてみたらいいよ。その方が見ている僕も楽しいしさ。じゃ、後は好きなように頑張ってね! 影ながら応援しているよ。

 それと同じ様に『聖女』も誤変換だからね。見かけたら注意してね。

 ※※※※※


「なんだこれ? ってか『創造』ってマジ? あ! だから、さっき『ステータス』が見られたんだ。でも、次にステータス見られたらヤバいよね。どうすんだこれ?」

『追伸、隠蔽スキルを早く覚えた方がいいよ』

「うわっ」

 突然、視界にそんな文字が映し出された想太が驚き尻餅を着く。

「そういや、見てるって言ってたな。でも、一々視界を遮られたら、いつかは死ぬぞ」

 想太が立ちながらお尻を軽く払っていると今度は視界の右下に小さく『ごめんごめん』と表示されると「あ、やっぱ見てるんだ」と想太の中で確信に変わる。


「まあ、相手は人外だし。どっちみち見ようと思えば現在過去未来好きなように見られるんだろうから抵抗するだけ無駄か」

 想太が呟いた瞬間に『その通り!』と表示される。

「慣れるしかないか……って、その前に隠さないと確か『隠蔽』だったよな。こういう時にサポートしてくれるアシスタント的な何かがいてくれたらいいのに。だから、『アシスタント』を要望します」

『受け付けました。ご要望であればなんなりと』

「え?」

『はい?』

「誰?」

『呼びましたよね?』

「呼んだ? 俺が?」

『ええ、『アシスタント的な何か』と』

「ああ、言ったね。で。それが君と……声色からして男?」

『まあ、近い物ですね。それで、何をお手伝いすれば?』

「あ、そうだった。多分、これから色々なスキルを作ると思うんだけど、作ったスキルは『隠蔽』で見えなくして欲しいんだ」

『そういうことですか。纏めると『スキルを作った後にわざわざ隠蔽スキルを使って秘匿するのは面倒だから、代わりにお前がやれよ』とそう言うことですね』

「言い方……でも、ほぼそのままだから反論できない」

『では、さっさと『隠蔽』スキルをお作りやがれでございます』

「あ~無理して丁寧に話そうとしなくていいから。じゃ、『隠蔽』スキル創造……これで作れたのかな?」

『はい、初歩的な『隠蔽』スキルを取得出来ました。では、この『隠蔽』スキルを使って、最初の三つのスキル意外は隠しますね』

「うん、頼むね」

『ですが、まだ『隠蔽』スキルのレベルが低いので鑑定レベルが高い人や魔道具にはバレバレですから、その辺は気を付けて下さいね』

「やっぱり、そういうレベルがあるんだ」

『ええ、ありますよ。だから、『鑑定』レベルも取って早くレベルを上げて下さい』

「まあ、そこはラノベの異世界じゃ定番か~」

『分かっているのなら、早く取りやがれでございます!』

「う、うん分かった。『鑑定』スキル創造」

 そんな風に頭の中に突如湧いた自称アシスタントと一緒に会話を楽しんでいたら、豪太が想太に話しかける。

「おい、想太。いくら淋しいからって、ずっと独り言で会話しているのは、止めた方がいいと思うぞ」

「え? 俺ずっと独り言だった?」

「そうだぞ。現にお前の周りには誰もいないだろ?」

 豪太に言われ、想太が自分の周りを見渡すと、よほど独り言が五月蠅かったのか気味悪がられたのか、自分の半径三メートル以内には誰もいなかった。

「え? 俺ってボッチみたいじゃん……」

「正気に戻ったか? なら、皆のところに行くぞ。これからのことで説明があるらしいから」

 豪太に言われ、想太も豪太の後を着いて歩き皆が集まっている場所へと向かう。

『私との会話は口に出す必要はありませんよ。あと、スキルを作る時も頭の中で念じれば作られますので』

『そうなの? なら、早く言ってよ!』

『聞かれませんでしたので』

『ヤな奴……』

『私には褒め言葉ですね……ふふふ』

『やっぱり、ヤな奴……』


 部屋のほぼ中央の位置で立っている偉そうなおじさんの前でクラスのほぼ全員が集まっている。だけど、想太は朝香を見付けることは出来なかった。

「そういや、別の部屋に連れて行かれてたな。朝香、大丈夫だよな」

『ならば、『遠見』のスキルを作られてはどうでしょう?』

『ん? 『遠見』って?』

『狙った場所の様子を見ることが出来るスキルです。ですが、『遠見』のスキルを使うには場所の細かく指定する必要があります。それと、ついでに言えば、バンバン好き勝手にスキルを作ったせいで魔力がもう少しで枯渇します』

『え? そっちの方がヤバいじゃん! どうするの!』

 少しSっ気のある脳内アシスタントの発言に想太が慌てる。それもそうだろう。想太の愛読書であるラノベでは魔力の枯渇が死を意味するのが殆どなのだから。

 しかし、脳内アシスタントは、そんな慌てる想太を無視して勝手に話を進める。

『では、まず『魔力量回復』スキルを覚えましょうか。そして、ある程度回復してから『魔力量拡大』スキルと『魔力使用量軽減』スキルも覚えましょう』

『大丈夫なんだよね?』

『おや? お疑いですか?』

『別に疑う訳じゃないけどさ……何もかが初めてなんだし……その、ほら、なんていうかさ』

『つまりは『怖い』とそういうことですね。分かりました。では、私が代行しましょう』

『え?』

 また脳内アシスタントが言った言葉が想太を慌てさせる。「代行」って何? と。でも、『隠蔽』スキルを使ってもらうと言った時に『出来ない』とは言ってないのだから、出来ても不思議じゃないかと無理矢理自分を納得させると脳内アシスタントの動向に注意することにした。見える訳でもないが。

『まずは『魔力量回復』スキルを創造……うん、いい調子ですね。これはパッシブスキルだから常時起動しておきましょう。うんうん、いい感じに魔力も回復してきましたね。では、次いってみましょう! 『魔力量拡大』スキルを創造、そして『魔力使用量軽減』スキルも創造、そして最後にこれらのスキルを隠蔽します。っと、こんな感じですが?』

『……』

『おや、どうしました? 私を無視するのですか? いいですよ、なら反応するまで私の美声でも……』

『聞いてる! 聞いてるから、じゃあ朝香の位置はこれで分かるんだよね』

『はぁ~んな訳ないでしょ。今までのもこれからのも基礎の基礎です。いいですか? まずはその『朝香』なるつがいの場所を感知しなければなりません』

つがいって……そんなんじゃないからね』

『はいはい、そう言うのは後でお願いしますね。まずは場所を調べるために朝香なるものの気配なり魔力なりを捜索する必要があります。なので、まずは『気配察知』スキルを取得します。そして、『魔力感知』スキルも取得しますね』

『お、おお……』

 想太が勢いに飲まれて、返事するが脳内アシスタントは何やら作業を進めているようだ。もちろん想太からは見えないが。

『あ~これは私としたことが失態です』

『え? 何、どうしたの?』

『……ちょっとした手違いです。なんとかしますから。ふぅ~気を取り直して、まずは『魔力制御』が必要ですね。じゃ、これを取得して……ん、これでなんとかなるでしょ』

『ねえ、何をしたの?』

『おや? 気になります?』

 想太は脳内アシスタントが気になる単語を連発していたのが気になり、聞いてみるが質問をはぐらかそうとしている気がしたので、もう少し突っ込んで聞いてみる。

『そりゃ、気になるよ。ずっと、頭の中で『失敗した』みたいな雰囲気で、慌てられて気にならない方がおかしいよね?』

『それは失礼しました。もう、ちゃんと対策しましたのでご安心を』

『だから、何を失敗したのか説明して欲しいんだけど……』

『困りましたね。では、『絶対に怒らない』と言って貰えますか?』

『え?』

 脳内アシスタントから約束を迫られて想太が困惑する。

『だから、これから私が話す内容に対して『絶対に怒らない』とだけ言って下さい』

『何を話すつもりなの?』

『いえ、大したことではないですから、ここは軽く『絶対に怒らない』とだけ言って下さい』

『分かったよ。絶対に怒らないから話して下さい』

 これ以上何を言っても『怒らない』と約束するまでは話が進まないと思った想太は、結局は『怒らない』と約束してしまう。

『では、話しますね。実は『魔力量拡大』スキルがパッシブスキル化してしまい、とんでもないことになってます。更に『魔力量回復』スキルが、これまたいい仕事してましてね。拡大し続ける魔力量がすぐ満タンに回復してしまうぐらいです。例えるなら、バケツが拡大し続けているのに対して、水がすぐに溢れるくらいに満たされている状態です』

『はぁ~?』

『それでですね、溢れる魔力が暴走しかかっていたので、『魔力制御』スキルでフタをした状態です。まあ、今の段階で既に人外レベルの魔力量ですが、なんとかなりました。ふぅ~』

 脳内アシスタントが疲れたように嘆息するが、疲れるのかと想太は不思議に思う。

『もう、分かったよ。戻せないんでしょ。なら、諦めるしかないじゃない。それより、朝香の居場所を確認出来るようにしてよ』

『では、続けますね。まずは、察知した場所がどこなのか分からないと不便なので『地図』スキルも取得しますと、はい! 朝香なる者はココにいます』

『え、これどこ?』

 想太の視界には建物の見取図らしき平面図が展開され、白く丸い光が複数点滅している。

『おほん、では説明しましょう! まず、この微妙に明るく輝いているのがソウタ本人になります。そして、この白い点が一般人でソウタに対し何も関心が無い人。そして、緑の交点が好意、黄色の交点がちょっと注意、そして赤が敵意、または悪意を持っている人物を表しています』

 脳内アシスタントの説明を受けた後にもう一度、展開されている平面図を見ると殆どが白色、緑の交点が違う部屋の中に一つ、そして赤い交点も同じ部屋に一つ、黄色の交点が想太の隣で点滅していた。

『コレって豪太だよな』

 想太は自分の光点の左側で点滅している黄色い光点の位置、即ち隣に立つ豪太を見る。

『友達だと思っていたのは俺だけだったのか』

『まあ、そんなことは置いといて、赤い光点も気になりませんか?』

 アシスタントに言われて「そう言えば」と想太も緑色の光点の横で赤く光る光点を注目する。

『誰か気になります? なりますよね? なら、サクッと鑑定しちゃいましょうか? ってことで、さっき取得した『鑑定』スキルで、この赤い光点が誰なのかを『知りたい』と強く念じて下さい』

『念じればいいんだね』

『はい。出来るだけ強く念じた方が鑑定スキルのレベルも上がりますので。って、そういうスキルを作ればいいだけじゃないですか。では参ります。『スキルレベル上昇率向上』を取得します。はい、これで使えばすぐにスキルレベルが爆上がりです』

『これって……チートなの?』

『そう言うのは後にしましょう。ほらそんなことより、『知りたい』と強く念じて下さい』

『分かったよ。知りたい~教えろ~誰なんだ~お前~』

 言われたように想太が強く念じる。すると、赤い光点の上に名前とユニークスキルが表示される。

『え~こいつなの~もう、面倒になるの絶対じゃん!』

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